近年、精神疾患による休職者や退職者の増加は、多くの企業において、もはや避けては通れない経営課題となっています。
TOMAでも、
「メンタル休職を予防したい」
「休職者が出たとき、会社としてどう対応すればいいのか分からない」
そうお悩みの人事・総務ご担当者様の声をよくお聞きします。
対応として、とりあえず法令通りに「ストレスチェック」を実施するだけでは不十分です。「ストレスチェックによる徹底的な予防」と、「いざという時に会社を守り抜く就業規則の整備」をセットで機能させることが重要です。また、そもそもメンタル休職・退職を生まない組織作りも必要でしょう。
本記事では、これまで数多くの労務問題を解決してきた社労士の視点から、そうしたトラブルを防ぐストレスチェックの改善方法と就業規則・組織作りについて解説します。
目次
急なメンタル休職や退職…人事担当者を悩ませる労務課題とは
中小企業においては、人手不足により専門担当者の配置が難しく、対策となる制度の検討も進んでいないことが多いです。そのため事前に予兆を確認できず、メンタル休職・退職に至ってしまうケースを多くお見掛けします。
実際、弊社にご相談にいらっしゃる人事労務担当者の方からもそうしたお悩みを伺います。貴重な人材を確保し、維持していくうえでメンタルヘルス対策は各社における重要な経営課題と言えるでしょう。

これに対し、例えば、法律上実施義務のある定期健康診断や長時間労働者への医師による面接指導などを通して、課題を認識し、事前に防止策を講ずることは可能です。
休職者が発生したとしても、丁寧かつ腰を据えた対応を続けることで、無事に職場に復帰し、再び以前のように働けるようになった事例もあります。
メンタルを理由とした休職・退職を防ぐためには、未然に防ぐ仕組みの整備に加えて、有事の際の明確なルール作りと適切な事後対応を行っていくことが不可欠です。
以下、具体的な方法をご説明します。
休職を防ぐ第一歩「ストレスチェック」の正しい活用法
まず、メンタル休職を未然に防ぐための有効な手段が、ストレスチェック制度の導入です。
労働安全衛生法において、これまで従業員50名以上の事業場にのみ義務付けられていましたが、法改正により2028年4月から従業員50名未満の小規模事業場でも実施が義務化されることとなりました(第185回労働政策審議会安全衛生分科会において答申)。
この法改正を、単なる義務と捉えてしまうのではなく、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ一次予防の仕組みとして、また職場環境を改善する絶好の機会として活用することが重要です。
単に実施して終わりといった運用で終えるのではなく、従業員が抱えるストレスへの気づきを促し、会社としての適切なサポート体制を構築することで働きやすい労働環境を整備し、ひいては離職防止と人材確保に寄与すべきでしょう。
厚生労働省の指針に基づき、企業が押さえておくべきストレスチェック運用の重要項目をまとめました。
| 項目 | 具体的な内容・注意点 |
|---|---|
| 趣旨・目的 | メンタルヘルス不調を未然に防止(一次予防)し、社員のセルフケアを促進し、職場環境の改善すること。 ※不調者を探し出すことや不利益に扱うことが目的ではありません。 |
| 対象者 | 契約期間や国籍を問わず、常時使用する労働者(週の所定労働時間が通常の労働者の3/4以上など)。派遣労働者は派遣元に実施義務があります。 |
| 実施体制とプライバシー | 従業員が安心して回答できるよう、外部機関への委託が推奨されます。 個人の結果は実施機関から直接本人に通知され、本人の同意なく会社が知ることは禁止されています。 |
| 高ストレス者への対応 | 高ストレスと判定され、本人が希望した場合は「医師による面接指導」を実施します。(※50名未満の事業場の場合、「地域産業保健センター(地産保)」の無料相談を利用可能です。) |
| 集団分析と環境改善 | 個人が特定されない形で部署等の「集団分析」を行い、長時間労働や人間関係などのリスクを定量的に把握し、実際の職場環境の改善に繋げます。 |
| (出典/厚生労働省HP:小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル) | |
また、一般的にストレスチェックシステムは、従業員のメンタルヘルス状態を把握・分析し、職場環境を改善することに役立てる目的で使用されますが、実際には年に1回、形式的に実施するだけで有効に活用されていないケースも多々見受けられます。
単にシステムを導入・実施して終わるのではなく、「集団分析」の結果を詳細に分析し、具体的な対策に落とし込むことが重要です。
「集団分析」を活用した具体的な職場環境の改善
メンタルヘルスの問題は、医療的判断が必要な「疾病性」と、業務遂行上の支障となる「事例性」の二軸で整理できます。労務上の問題において、企業側は「疾病性」については産業医や主治医の意見を踏まえつつ、「事例性」の解決アプローチを持つことが休職予防のカギとなります。
例えば、長時間労働の背景に「自分のペースで仕事ができない」というストレス結果がある場合、裁量労働制やフレックスタイム制の導入といった具体的な解決策を検討できます。さらに、客観的データに労務相談でのヒアリングや各種調査(例:エンゲージメントサーベイ等)を掛け合わせることで、特定の部署にマッチした改善策にアプローチできます。
このように、自社の特性に合った最適な職場環境を整えることで、社員の心のSOSを見逃さず、休職への発展を抑えるよう努めることが大切です。

有事に備える「就業規則の改定」と「個別の労務トラブル対応」
予防策を講じていても、メンタル疾患による休職者が発生してしまうことはあります。その際、労務トラブルをあらかじめ防止し、かつ休職する社員が安心して治療に専念し円滑に復帰するための土台となるのが「就業規則」や「職場復帰支援」の整備です。
休職や復職に関するルールが曖昧なままだと、まだ治りきっていないのに復帰を急いで再発してしまうことや、会社と本人の見解の相違で労使トラブルになる事態を招きかねません。
休業から復帰までの流れをあらかじめ明確にするため、就業規則や関連規程において以下のポイントを具体的に定めておくことが重要です。
| 項目 | 具体的な整備内容・注意点 |
|---|---|
| ① 休職の基準と期間 | どのような状態になったら休職を命ずるのか(診断書の提出要件など)の基準や、勤続年数等に応じた休職期間の上限を明確にします。 |
| ② 復職・延長の判断プロセス | 休職期間の延長や復職の最終判断を「誰が・どのように」決定するかを定めます。主治医の診断書だけでなく、産業医の意見聴取など会社としての判断基準を明記することが重要です。 |
| ③ 面談と復職支援のプロセス | 休職に至る前の長時間労働者への面談対応や、休業中のケア、個別の「職場復帰支援プラン」の作成など、復職に向けた具体的なプロセスを定めます。 |
| ④ リハビリ出勤(試し出勤制度) | 復帰の不安を和らげ準備を促すため、模擬出勤や通勤訓練、短時間勤務等を行う「試し出勤制度」を設けます。その際の給与等の処遇や、通勤・業務中の災害発生時の対応ルールも併せて規定します。 |
但し、職場復帰支援や関連規程の内容は、企業の規模や実態によって異なります。休職期間としてどれだけの期間を設定するか、その判断軸や復職に向けた対応の幅はその会社ごとで運用できる範囲で検討しましょう。自社の実情にマッチした制度作りと、個別の事例に応じた柔軟な運用が必要です。
例えば、復帰に慎重な判断を要する職場である場合には、休職期間終了前の一定期間、通勤時間帯の出退勤のみを行う、あるいは簡単な作業を与えて徐々に通常の業務へと慣らしていく「リハビリ出勤」による緩和措置を盛り込むことも有効な手立てです。
社員の「メンタル退職」を防ぐ組織作りに取り組みましょう
ここまで制度や対応策についてお伝えしてきましたが、根本的な課題として、そもそも組織の風土や採用のミスマッチに原因はないか、という視点も忘れてはなりません。
TOMAの経験に基づき、メンタルヘルス不調における本質的な組織的課題について、下記の表にまとめてみました。
| 発生している現象 | 社員が抱えるストレス・不満の例 |
|---|---|
| 採用時のミスマッチ | 「面接で聞いていた話と違う…」という入社後のギャップが強いストレスを生んでいる |
| オンボーディング不足 | 配属後のフォロー体制がなく、新入社員が職場で孤立し「見捨てられ感」を抱いている |
| 理念・ビジョンの未浸透 | 会社の目指す方向性(理念)が現場に共有されておらず、社員が将来への不安や不満を慢性的に抱えている |
休職者を出さないためには、上記のような課題をクリアしモチベーション高く働ける組織作りが求められます。例えば以下のようなアプローチが有効です。
① 採用面接の改善(入社後のミスマッチとストレスの解消)
自社の社風に本当にマッチする人物像(ペルソナ)を明確にし、面接官のスキル向上や質問設計を見直します。採用活動の仕組みを再構築し、入社後のギャップを未然に防ぐことが重要です。
② オンボーディングの整備(配属後の孤立感・戦力化の遅れの解消)
入社時のオリエンテーションだけで終わらせず、会社の一員として定着し戦力化するまでの育成プロセスを仕組み化します。定期面談やメンター制度等を通じ、新入社員の不安を取り除きます。
③ MVVの策定(社員のベクトルを合わせ、心理的安全性のある組織風土の醸成)
経営陣だけでなく、社員参加型のワークショップ形式で「Mission・Vision・Value」を言語化します。誰もが共感できるMVVを作ることで、社員のベクトルが合い、心理的安全性の高い組織風土の醸成に繋がります。

より専門的なメンタル休職・退職対策をお望みの方はTOMAへご相談ください
ここまで解説したように、メンタル休職という複雑な課題に対しては、ハード面としてのルール作りと、ソフト面としての組織風土の醸成という、両輪でのアプローチが不可欠です。
TOMAでは約1,200件の顧問実績を活かし、メンタル休職の予防から実際の労務トラブルへの対応、さらには根本的な組織風土の改善まで、企業の課題に合わせてサポートいたします。以下、具体的なサービス内容です。
① ストレスチェック(集団分析と職場環境改善)
単なる実施システムの提供にとどまらず、労務・人事の専門家の視点から「集団分析」の結果を詳細に読み解きます。「どの部署に高ストレス者が多いか」「長時間労働か、人間関係か」といった背景要因を客観的データから浮き彫りにし、就業規則の改定や制度導入など具体的な職場環境の改善策(事例性の解決)をご提案します。
② 就業規則改定(ルール構築と労務トラブル対応)
「休職期間の設定」や「復職の判断基準」「リハビリ出勤制度」など、自社の実情にマッチした就業規則や職場復帰プログラムの構築・全面改定をサポートします。万が一想定外のトラブルが起きた際も、上記「労務相談・紛争解決支援サービス」にて、経験豊富な専門家が解決への道筋をアドバイスします。
③ 採用・組織作り(メンタル退職を防ぐ風土改革)
メンタル不調の根本原因である「組織風土」や「採用のミスマッチ」を解決します。
・採用面接コンサルティング:
自社にマッチする人物像を明確にし、入社後のギャップを防ぎます
・オンボーディングコンサルティング:
配属後のフォローや育成プロセスを仕組み化し、新入社員の孤立や「見捨てられ感」を解消します。
・MVV策定コンサルティング:
社員参加型ワークショップで理念を言語化し、方向性の欠如による不安を取り除き、心理的安全性の高い組織を醸成します。
・健康経営導入支援サービス:
社員の健康保持・増進のために必要な取り組みに積極的に投資することで、人材の確保や定着率の向上に繋げます。
労務トラブル対応は社会保険労務士、組織開発はコンサル会社へと別々に依頼するケースもあるかと思いますが、TOMAであれば、ハード面のルール整備からソフト面の風土改革までワンストップで対応可能です。メンタルヘルスへの取り組みを入り口として、会社を守る組織作りを一緒に始めてみませんか?
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