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【就業規則のポイント④】服務・懲戒と退職・定年のポイントについて法改正を踏まえて解説

記事作成日2022/12/07 最終更新日2022/12/08

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服務・懲戒や退職・定年に関する就業規則の規定は、法改正や制度の改廃・社会情勢の変化などに伴う影響を受けやすく、随時見直す必要があります。特に懲戒は、就業規則に定めがないと処分できないため、トラブルを避けるうえでも、現状に合わせた改定が重要です。

一例を挙げると、近年の法改正に伴い、就業規則にパワーハラスメント防止措置に関する規定を盛り込んでおく必要があるでしょう。また、SNSでの情報漏洩が増えている社会背景を踏まえ、これらを懲戒できる規定を整備しておくことも必要です。御社は、このような就業規則の改正・追加に漏れはありませんか?

今回は、就業規則の服務・懲戒と退職・定年に関する項目について、注意すべきポイントをまとめてご紹介しますので、この機会に遺漏はないかチェックしてみましょう。

当記事では、上記のとおり、よくある就業規則の不備を中心にご紹介しています。「就業規則の見直しに問題がないか確認したい」「抜けがないか心配」という方は、ぜひ最後までお読みいただき、法改正や社会背景にマッチした、トラブル抑止力の高い就業規則にバージョンアップしていきましょう。

就業規則の服務・懲戒に関する規定のポイント

服務・懲戒に関する就業規則の規定を整備する際に押さえておきたい基礎知識として、「服務規程と就業規則の違い」「就業規則に基づき懲戒するときのポイント」があります。
また、服務・懲戒について就業規則でよくある不備は、「ハラスメントに関する規定」「懲戒事由の不足」などです。
以下で順番に説明していきますので、現在の就業規則に問題はないか、照らし合わせてみてください。

【服務・懲戒の基本(1)】服務規程と就業規則の違い

服務・懲戒に関する就業規則の規定と似ているものに、服務規程があります。両者は、法的な位置づけや規定を定めるときの手続きなどに違いがあります。

上記のとおり、基本的に、服務規程は各組織の独自なルールを中心に定めていくものです。これに対し、就業規則は、労働基準法で必要とされているルールを中心に整備していくものという位置づけにあります。

ただし、就業規則内で、「服務については別途定める」などとして、服務規程を就業規則の一部として取り扱う企業も多くあります。また、服務規程には罰則も定められることから、強制力もあります。位置づけの異なる服務規程と就業規則ですが、どちらも組織をスムーズに運営するうえで重要な規定であるという点で、同じと言えるでしょう。

【服務・懲戒の基本(2)】就業規則に基づき懲戒するときのポイント

就業規則に懲戒事由が規定されていれば、それを根拠に従業員を懲戒することができます。ただし、懲戒を行う際は、他にも満たすべきポイントがあることに注意が必要です。

以上のように、就業規則に懲戒規定がある場合でも、手続きを遵守し合理的に処分をしないと、懲戒権の濫用とみなされてしまいます。

【服務・懲戒のポイント(1)】ハラスメントに関する規定がない

就業規則の服務・懲戒についての規定に関連して押さえるべきポイントがわかったところで、よくある規定の不備について見ていきましょう。

よくある不備の1つ目が、「ハラスメントに関する規定がない」というものです。
ハラスメント防止対策が強化されたことに伴い、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどの防止措置を講じることが、義務付けられています。
具体的には、ハラスメントの行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することや相談窓口の設置等が必要です。現在、対策を講じていない企業は、速やかに整備したうえで、就業規則を見直すようにしましょう。以下の特設サイトも是非ご覧ください。

特に、中小企業以外は2020年6月から、中小企業は2022年4月から、それぞれパワーハラスメント防止措置を講じることが義務付けられました。漏れなく対応ができているか、必ず就業規則を確認しておきましょう。

【服務・懲戒のポイント(2)】マタニティハラスメントに関する法改正の対応ができていない

ハラスメント関係の規定で不備が多いのが、マタニティハラスメントに関する法改正への対応です。
2017年の法改正により、マタニティハラスメントの防止措置を講じることが義務付けられました。具体的には、ハラスメントの行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することや相談窓口の設置等が必要です。

ハラスメントと一言で言っても、さまざまな種類があり、年々対応すべきハラスメントの種類が増えています。そのため、「ハラスメント関係の規定はあったような気がする」と何となくスルーせず、該当するハラスメントの種類に応じた規定や仕組みがあるか、改正の都度チェックすることが大切です。
チェックの結果、対策を講じていないことがわかった場合は、速やかに整備したうえで、就業規則を見直しましょう。

【服務・懲戒のポイント(3)】懲戒事由が少ない

先ほどもお伝えしたとおり、懲戒処分については、就業規則に定めた理由以外では処分することができません。さまざまな労使トラブルに対応できるように、懲戒規定を充実させることが重要です。

よくある懲戒事由の不足としては、「マイナンバーに関する規定がない」「SNSの取扱い(法人の機密情報の書き込み禁止など)に関する規定がない」の2つが挙げられます。
どういうことか、順番に見ていきましょう。

【懲戒事由が少ないことの例(1)】マイナンバーに関する規定がない

マイナンバー制度が整備されたことへの対応として、特定個人情報の取扱いについて、就業規則に規定しておく必要があります。

具体的には、「従業員からマイナンバーをスムーズに取得するため」と「取得したマイナンバーを適切に管理し情報漏洩を防ぐため」の2つの観点から、就業規則を整備しておくことが大切です。
マイナンバーは、給与所得・退職所得の源泉徴収事務や雇用保険届出・申請事務、健康保険・年金関係事務など、多くのシーンで必要となるので提出が欠かせません。しかし、提出が必要な旨を明示しておかないと、「個人情報だから提出したくない」などと拒否されるリスクがあります。

また、マイナンバーは、従業員だけでなく取引先や顧客のものを取り扱う可能性があるでしょう。適切な管理について就業規則に明示しておかないと、重大なトラブルに発展しかねません。営業機密保持の観点からも必要です。

【懲戒事由が少ないことの例(2)】SNSの取扱い(法人の機密情報の書き込み禁止など)に関する規定がない

SNS(いわゆるソーシャルメディア)については、法人の著作権保護や機密情報漏洩防止などの観点から、その使用に関するルールも明確にしておきましょう。
万一、従業員が重要な情報などを書き込みして炎上などという事態になれば、重要な情報が拡散されてしまうばかりか、企業の信用も失ってしまうからです。さらに、情報の漏洩によって、第三者に損害を与えたとなれば、損害賠償も発生し大きな損失となるでしょう。

SNSへの投稿について、罰則とともに規定を整備し、必ず全従業員に周知させることで、軽はずみな投稿を予防することにつながります。

就業規則の退職・定年等に関する規定のポイント

就業規則の退職・定年等に関する規定において、よく見られる不備としては、「努力義務化された70歳までの再雇用」や「改正高年齢者雇用安定法」への対応ができていないものが挙げられます。
それ以外にも、「引継ぎ義務に関する規定」「誓約書(入社時)の提出義務の規定」「雇用契約終了事由と雇用契約終了日の記載」がないことなども、よくある不備です。
各不備について、もう少し詳しく見ていきましょう。

【退職・定年等のポイント(1)】今年4月から努力義務化された70歳までの再雇用に注意が必要

高年齢者雇用安定法が改正されたことで、2022年4月から、70歳までの就業確保が努力義務化されています。これに伴い、就業規則の規定についても、見直しの検討が必要です。

具体的には、今回の改正高年齢者雇用安定法の施行に伴い、企業は、定年年齢や再雇用上限年齢の引き上げなどを検討する必要があります。そして、変更を行う場合は、就業規則においても現状の規定を変更したり、継続雇用に関する規定を追加したりという見直しが発生します。

ただし定年年齢引き上げは、安易に行うと、能力や体力に問題のある社員も引き続き同条件で雇用しなければならないなどのリスクがあるため、注意が必要です。リスク回避するには、規定を改定する際は慎重に検討し、専門家である社労士に相談するようにしましょう。

【退職・定年等のポイント(2)】改正高年齢者雇用安定法に対応できていない

2022年4月からの改正内容以外にも、就業規則において、「高年齢者雇用安定法」を踏まえた対応が必要になります。
ちなみに、「高年齢者雇用安定法」とは、少子高齢化に伴う労働人口減少への対策として整備された法律です。これまでは定年で現役から退いていた貴重な人材を長く活用することで、人手不足を補う狙いがあります。

2013年4月に高年齢者雇用安定法が改正された際に、原則として定年後65歳までは、希望者全員を再雇用することが義務付けられました。企業の対応としては、現行の定年が65歳よりも低い場合は、定年を65歳まで伸ばすほかに、65歳までの継続雇用制度を導入する方法などが挙げられます。

自社にとって最適な対応を検討したうえで、現行法に適合するように、速やかに就業規則の規定を見直しましょう。

【退職・定年等のポイント(3)】退職・解雇による引継ぎ義務に関する規定がない

退職・定年等に関する就業規則の不備で、よくあるのが、退職・解雇による引継ぎ義務に関する規定がないという事例です。

また、退職・解雇による引継ぎ義務に関する規定は整備しているけれど、引継ぎをしない場合の懲戒規定や損害賠償に関する規定がないケースも、見直しをする必要があるでしょう。

例えば自己都合退職の場合に、退職の申出を行うべき時期を数日前程度に規定しているなら、3ヶ月前にするなど、もう少し余裕をもって申請させるよう申請期限の見直しをおすすめします。余裕をもたせることで、業務引継ぎ期間を十分に確保できるようになるからです。

あわせて、退職までの業務引継ぎに支障が出た場合は懲戒処分を科すことや、実害が生じた場合は損害賠償請求を行う旨を規定しましょう。罰則を設けることで、確実に引継ぎ義務を履行させやすくなるからです。

【退職・定年等のポイント(4)】誓約書の提出義務の規定がない

誓約書の提出義務の規定に不備があるケースも多くあり、注意が必要です。
トラブル回避のために従業員に提出させるべき誓約書には、「退職時の秘密保持・競業避止に関する誓約書」のほか「入社誓約書」や「秘密保持に関する誓約書」、「パソコンの使用に関する誓約書」など多岐にわたります。

気を付けたいのが、提出を義務付けていても、従業員が提出に応じない可能性がある点です。特に、「退職時の秘密保持・競業避止に関する誓約書」の提出に応じない場合は、大きな損失につながるリスクがあります。
そこで、入社時にも誓約書を提出させるように就業規則に定めておくことで、リスク回避をすることがおすすめです。

【退職・定年等のポイント(5)】雇用契約終了事由と雇用契約終了日の記載がない

雇用契約の終了事由と対応する雇用契約終了日の記載がないと、解雇など定年退職以外の雇用契約終了時に、トラブルに発展しやすくなります。
普通解雇や整理解雇・懲戒解雇など、さまざまな理由で従業員を解雇すべきケースがあるでしょう。しかし、雇用主側から一方的に労働契約を終わらせる解雇は、就業規則に定めておかなければ、できません。

さらに、就業規則で解雇事由や雇用契約終了日を明示し、従業員に周知させることで、従業員側も解雇を受け入れやすくなります。もしもの場合にトラブルに発展するリスクを最小限にとどめるために、解雇に関する規定は重要なのです。
さまざまなケースに対応できるよう、解雇日等も含めて規定を拡充し、雇用契約の終了事由と対応する雇用契約終了日を明記しておきましょう。

就業規則の見直しで少しでも悩んだらTOMAまで

就業規則の服務・懲戒と退職・定年に関する規定については、法改正などにより、随時見直しの必要性が発生します。その都度、適切なタイミングで規定を整備することで、トラブルや損失を防ぐことができるでしょう。

そうは言っても、すべての法改正に自力で対応するのは、なかなか難しいものです。
「不備があるかどうかがわからない」「現在の就業規則で大丈夫なのか、専門家のチェックを受けたい」といった場合は、お気軽にTOMAまでご相談ください。

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