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社員の気持ち、大切にしていますか? 「従業員満足度」が会社のパワーに!

記事作成日2020/12/25 最終更新日2023/09/06

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生産年齢人口が年々減少する中、優秀な人材の採用が難しくなり、また離職率の高止まりにも歯止めがかからず困っている、そんな経営者は少なくないでしょう。採用した人材を育成し、帰属意識を高め、離職率を低下させるためには従業員が仕事の何に満足するのかを知ることが大切です。今回は、従業員の満足度を上げる重要性、メリット、方法について解説いたします。

「企業は人なり」従業員満足を軽視してはいけない

企業は人なりとはパナソニックの創業者で経営の神様といわれた松下幸之助氏の格言ですが、この言葉はAIに仕事が奪われると言われるようになった現在においても変わることはありません。

確かに単純作業においてはロボットの方が速さと正確性において人間の能力をはるかに凌駕しています。すでにRPAなどのロボットはホワイトカラーの現場に定着し始めていますから、時代の変化とともに、AIやロボットはなくてはならないツールとなるはずです。しかし、だからと言って人間の力が不必要になるわけではありません。

・人ならではの新しい視点、着眼点
・人と人をつなぐホスピタリティ
・伝統が紡ぐオリジナリティ
・無駄をそぎ落とす作業から無駄に価値を生む嗜好性の追求
・個人の趣味嗜好に合わせ細分化されたサービス

以上のように、人にしかできない、人だからこそできる仕事があります。そして、これからの時代は人間にしかできない仕事にこそ価値が生まれるのです。それにもかかわらず

・せっかく採用した社員がすぐに辞めてしまう
・業績に影響を及ぼすほど社員同士の人間関係が悪い
・社員から仕事へのやる気を感じない

など、人材に悩みを持つ経営者は後を絶ちません。企業において、優秀な人材の確保・育成は大きな課題です。
AIやロボットが進化しても人の手が不要になることはない

世界人口が増加する中、日本では少子高齢化が世界で最も早く進んでいます。2023年7月に総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、日本の人口は前年と比較して51万1025人減っています。また、国立社会保障・人口問題研究所による日本の将来推計人口によると、15〜64歳の生産年齢人口は2070年には全人口の52.1%にまで減少すると推測されています。

優秀な人材を採用すること、若手を一人前に育て上げることは企業の存続を左右する問題だと言っても過言ではありません。

仕事の何に満足するのか? 世代で大きく異なる働く理由

では、優秀な人材を確保・育成、離職率の高さに関する悩みを解決するためにはどうすればいいのでしょうか。答えの一つが従業員の仕事に対する満足度を上げることです。また、従業員が生き生きと仕事に臨み、高いモチベーションで働いてくれることで、顧客満足度の向上にもつながります。結果、業績も伸び企業がさらなる発展を遂げるのです。

では、従業員の満足度を上げるためにはどうすればいいのでしょうか。まずは経営層の多い50~60代と20~30代の仕事におけるモチベーションについてはズレがあるという認識を持つ必要があります。
仕事に何を望むか世代によるズレがある

アメリカの心理学者マーティン・セリグマンによるポジティブ心理学では、人の幸せの感じ方には次の5つ種類があると提唱しています。

●5種類の幸せの感じ方

【達成】Achievement
【快楽】Positive Emotion
【没頭】Engagement
【良好な人間関係】Relationship
【意義・目的の追求】Meaning and Purpose

各項目については以下の通りです。

●【達成】Achievement

設定した売上目標やこれまで存在しなかったフローの構築、新たな商品開発、価値提供などさまざまな課題を達成することで人は幸せを感じます。戦後間もない頃の日本では、この達成感情が仕事への大きなモチベーションに繋がっていました。高速道路を日本中に作りたい。下水道を整備して日本中に水洗トイレを整備したい。日本のどこに住んでいても十分な食料が行き渡るように流通ルートを整備したい。

このような目標を達成した時、自分の仕事が日本を動かしているという喜びに繋がります。

●【快楽】Positive Emotion

普段の生活では味わえない体験をすることで幸福感に浸れるという感情です。例えば、一口何千円というウイスキーやワインに舌鼓を打ったり、高級車に乗ってドライブをしたりといったことで幸せを感じます。この感情は達成との結びつきが強いのが特徴です。大きな目標を達成した自分へのご褒美として快楽を求めるという関係性が成り立つからです。

●【没頭】Engagement

趣味である釣りやスポーツ、プラモデル作りや恋人と過ごす時間など、気づいたら何時間も経っていたという経験は誰にもあると思います。時間を忘れて没頭することで人は幸せを感じると考えられています。職人気質の人が多い日本人に当てはまることが多い感情とも言われています。

●【良好な人間関係】Relationship

達成には特に興味はなく、それよりも気の許せる仲間、家族といつも笑顔で生活したいという幸せのカタチです。セリングマンによれば、良好な人間関係はすべての幸せの基礎として捉えている重要な感情です。かつては、仕事人間で会社のために身を粉にして働くことが会社との良好な関係に繋がり、一定の給料を稼いでくることが家族との良好な関係になっていました。

今はその前提は崩れ、仕事でプライベートが無くなるくらいなら、時間が自由になる仕事に就いて家族との時間や同じ趣味を持つ仲間との時間を大切にしたいという人が増えています。

●【意義・目的の追求】Meaning and Purpose

仕事や日常生活に対する意味の持たせかたによって幸せを感じられる人と、感じられない人がいます。

例えば高速道路を作る仕事をしている従業員が2人いたとします。一人は「毎日毎日、猛暑の中、汗だくになりながら単純作業を繰り返すことが辛くて仕方がない。早く帰ってビールを飲んで寝たい」と感じながらダラダラと働いている。もう一人は「この高速道路が完成すれば、多くの人が便利に暮らせる世の中になる。自分の仕事がみんなの幸せに繋がっている」と考え、生き生きと働いている。

同じ時間、同じ量の仕事をしていても、幸せと感じる人とそうでない人がいます。目先の金銭や快楽のためではなく、自分の仕事が世の中に貢献ができている、自分の人生を賭けるだけの意味があるということに幸せを感じます。

「2017年版中小企業白書」では、中小企業の経営者の高齢化について触れ、「2015年における経営者の平均年齢は66歳」とあります。この世代が10〜20代だった1960〜1970年代、現在と比較すると「不足」しているものが多い時代でした。

そのため、この世代は仕事に対する満足を何に求めるかというと、良好な人間関係意義・目的の追求といった内面的なものに幸せを感じるのではなく、達成快楽といった物理的な目に見えるものに幸せを感じる傾向が強いといわれています。

仕事面では

・離島に自社商品を届ける流通ルートがないから開拓したい
・効率的な業務フローを構築してみんなが働きやすい職場にしたい
・足を使い営業をかけて1件でも多くの契約をとりたい

プライベートでは

・カラーテレビを買い、家族に喜んでもらおう
・洗濯機を買って、家事の負担を減らしてあげたい
・マイカーを買って家族サービスをしたい

など、現状の生活に無いものを埋めることに幸せを感じていました。

一方で、今の20〜30代はどうかというと、生まれた時から街にはものが溢れ、生活に不自由を感じることがほとんどない幼少期を過ごしています。会社に入社しても前人未到の分野はほとんどなく、すでに整備されたフローにのっとって仕事をしっかりこなすことが求められるケースが多いです。

全力で働かなければ生命が危険にさらされるという逼迫した状況に生きていないため、自分の人生をどう生きるかという内面を重視した働き方を求めるようになっています。

そのため、自分の理想の働き方とは合わない、自分の可能性を試せる職場ではない、こんな人間関係を続けるくらいなら転職したほうがいい、等かつての世代では考えられなかったような理由で退職を選ぶ若者が増えているのです。

この状況を把握せずに給料を上げますとか、数年頑張れば昇進できますといったニンジンをぶら下げても若い従業員には響きませんなぜなら、もともとお金や権力に執着がなく、達成や快楽に幸せを感じないからです。

仕事で死ぬほど努力をした上で結果を出し、数万円するワインと美味しい料理で疲れた体を癒すこれが上の世代の喜びであったとしても、若い世代は仕事はしっかりこなすが定時に上がり、コンビニで数百円のワインとおつまみを買って自宅等で友人と飲む、で十分幸せなのです。

これなら1年に1度の贅沢ではなく、週に2、3回の楽しみとして継続できるため、幸せをたくさん感じて生きることができると考えるのです。

世代による仕事に対する考え方は、絶対の正解があるわけではありません。しかし、経営層が若い世代のモチベーションの低下や離職率に悩んでいるのであれば、まずは世代によって仕事に対する満足度にギャップがあることを理解することです。

そして若い世代が

・どんなことにやりがいを見出して自社で働いてくれているのか
・どんな状況になれば満足するのか
・生きる上で何を大切にしているのか

を把握した上で施策を打ち、育成をしていくことが重要なのです。

従業員満足度と顧客満足度の関係

ここまで、従業員が何に満足をするのか、世代によっても大きく差があることがご理解いただけたと思います。日本では、従業員満足度を高いレベルで維持することは、CS(Customer Satisfaction)=「顧客満足」にも大きく影響を及ぼすといわれています。従業員満足度をおろそかにしていると、企業存続にも大きく関わる問題が発生します。

では、具体的に従業員の満足度が及ぼす影響を見ていきたいと思います。

まず、労働の生産性についてです。自分の仕事に対して誇りを持ち、満足度の高い気持ちで仕事をしていればもちろん労働生産性は上がります。また、欧米のIT企業では週休3日制というのも珍しくなくなりつつあります。

日本でもある旅館がお客の少ない平日を3日休みにして売り上げを伸ばしているケースがあります。週に3日も休んで大丈夫なのか?と思うかもしれませんが、現状のビジネスにおいても決められた作業を黙々とこなすだけの仕事は減りつつあります。RPAなどのロボットやAIが発達することで今後その流れはさらに加速するでしょう。ビジネスにおいて重要なのは「新しい視点」を養うことです。

食べ物の例で説明しましょう。戦後間もない時代においては生きるために食料を欲する時代がありました。食料がある程度供給されるようになると、今度はより美味しい料理が求められるようになります。時代が進むと、調理のしやすい野菜や冷凍食品など味と利便性を両立した食べ物が人気となります。

では、現在はどうでしょうか? 美味しいのは大前提にあり、たくさん食べても太りたくない、食べることで健康になりたいと言ったプラスアルファの効果が求められようになっています。さらには料理を写真に撮り、SNSで人から「いいね」と共感される食べ物という、本来食べ物が持つ目的を大きく逸脱したところに需要が発生しています。

今、時代が何を求めているのかということにアンテナを張り、新しい経営戦略を立てるためには会社にこもって単純作業を黙々と繰り返していたり、長時間残業し週末は家で寝るだけといった生活では新しい視点は見つかりません。

休日を利用して、例えば本を読む、趣味に没頭する、旅行する、などさまざまな経験を積むことが新しいビジネスのヒントを得ることにつながるのではないでしょうか。

次に、人材の採用、育成に関する影響です。

年功序列、終身雇用という感覚が残っている世代では、仕事に対する満足度が低くなっても退職という選択をすることは稀ですが、若い世代は転職に対するハードルがそれほど高くありません。そのため、従業員満足度の低い職場環境を放置していると、離職率が上がる結果となってしまいます。

自社のノウハウを熟知し、経験を積んだ社員が辞めるというのは企業の財産を失うのと同義です。冒頭にも説明しましたが、人口減少によって新しい人材の確保も昔ほど簡単ではなくなっています。たとえ新しい社員を採用しても、辞めた社員と同じレベルまで育てるにはそれなりの期間と労力を要します。

さらに、能力の高い社員が一人抜けると、周りにも多大な影響を与えます。「あの人がいなくなってこの会社は大丈夫なのか…」そんな不安から連鎖的に退職者が続くことも珍しくありません。

最後に、顧客満足度への影響です。

やる気に満ち溢れ、常に笑顔の接客と、無愛想で不満が顔に出てしまっている接客、どちらが顧客満足度を上げるかといえば前者でしょう。ただし、顧客満足度を上げることが企業経営にとって重要というのはよく耳にしますが、従業員満足度を無視した顧客満足の向上には限界があるということは余り語られていないように思います。

顧客満足度の低下から客が離れ売上が減少。
退職者が後を絶たず、残された従業員の業務が逼迫、生産性低下。
新しい戦略も生まれず八方塞がりで経営悪化。

以上のような事象を引き起こしかねない従業員の仕事に対する満足度、モチベーションの低下は、実は会社の根幹に関わる問題です。

従業員のニーズを把握し、満足度を上げる方法

最後に、従業員の満足度を上げるためにはどうすれば良いのかを解説します。まずは従業員が何を求めて自社で働いているのかを知ることが大切です。個別面談を行う、従業員満足度アンケートを実施する、ストレングスファインダーなど個人の強みや性格を分析するテストを行う、などの方法があります。

次に人材育成に対する投資を行うことです。人材育成のために、教育や訓練の時間を定期的に設けたり、外部講師を招いてセミナーを開催したり、資格取得や語学習得など社員の能力向上を資金面でサポートするなど、学びたい社員に思い切り学べる場を提供することは従業員の満足度アップにつながります。

経営を学びたい社員には、経営会議への参加を促しても良いでしょう。経営層の考えを間近で触れることは、帰属意識を高めることにもつながります。小さなところでは月に1冊、仕事に関する書籍代を経費計上しても良いというルールを作るのも1つの手です。ただし、会社によって求められる人材や社風は異なりますから、これらの施策はあくまで一例であるとご承知おきください。

また、近年注目されている手段としてクレドの作成があります。クレドとは企業内で業務を遂行する中で、社員一人ひとりが判断を下す上での行動指針を表したもので、現在導入する企業が増えています。

経営理念が経営者の考えを明文化したものであるのに対し、クレドは経営者と社員一人ひとりが一緒に考えて作り上げていくものです。自社について深く考えることで、自社が何を目指すのか、どんな意識を持って働き社会に貢献して行くのか、理想を実現するために優先すべきものは何なのかが明確になり、共通の価値観が育っていきます。

世代間で異なる働く意識、満足度について相互に理解することを可能にし、前向きにさせる効果があります。その結果、満足度アップをもたらします。明文化したものをクレドカードにして身につけることで、更に浸透していきます。

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