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定説を覆した「厚底シューズ」に見る独自提案力(USP)

記事作成日2020/02/11 最終更新日2021/02/01

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レース参加者着用率80%超えのシューズ

今年の箱根駅伝も学生たちによる熱戦が繰り広げられました。中でも10 区間中7区間で新記録が出る高速レースであった点は見所の一つでした。

さて、その高速レースを演出した一つの大きな要因としてメディアを騒がしているのが、NIKE の「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」です。昨年9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)でも注目されたピンクのシューズと、今回は新色「オーロラ」と呼ばれる左右でブルーとオレンジの色違いシューズを履いた選手も目立ちました。

ある調査によると参加選手210人中、177人。実に84.3%の選手が、「NIKEの厚底」を履いていたようです。ランニングシューズメーカーのシェア争いとしては、NIKEの圧勝であることは間違いないでしょう。

定説を覆す厚底シューズのイノベーション

これまで、ランニング用のシューズは底が薄く、軽量であることを求められてきました。しかし、このシューズはその概念を覆し、厚底で吸収性があり、かつソールに「カーボンシート」を入れたことにより、反発性によって走りをサポートしています。このことで、ランナーたちは楽にスピードを出せるようになり、それが今回の箱根駅伝でも見られた高速レースにつながったと言われています。

NIKEの「ランナーファースト」

NIKEの共同創業者の一人、フィル・ナイトは、彼の著書「SHOES DOGS」の中で、その半生やNIKE 創業時の様子を描いています。彼自身、陸上競技の出身であったため、シューズ開発においても常にアスリートに寄り添った「ランナーファースト」の姿勢であり、またその姿勢こそが、この定説を覆す商品の開発につながりました。

USPによるマーケティング戦略

薄底シューズの定説を見事に覆した、このNIKEの厚底シューズの提案は、まさに、USP(Unique Selling Proposition)と言われる「独自の売りの提案」になりました。

このシューズは「不公平な補助」にあたる可能性があることから、競技大会での使用禁止が世界陸連により検討されましたが、結果的に容認されることになりました。一連の騒動によりシューズへの注目はいっそう高まったでしょうし、NIKEは新たな厚底シューズの開発にも着手しているようです。今後もNIKEの戦略と厚底シューズの動向を注視していきたいと思います。


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