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医療法人の理事・従業員への社宅の貸与

記事作成日2018/04/09 最終更新日2022/08/12

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医療法人が社宅を貸与する場合、家賃がいくらであれば、税務上課税されないかという点で、ご質問を受けることがあります。その場合、税務上だけでなく医療法の観点からも検討する必要があります。そこで、今回は医療法人が理事・従業員へ社宅を貸与した場合の取扱いについて、解説します。

税務上の取り扱い

税務上は、基本的に受取っている家賃の額が下記の賃貸料相当額の50%以上である場合は、源泉所得税は課税されません。ただし、従業員に貸与した場合と理事へ貸与した場合とでは、賃貸料相当額の算定方法が異なります。

従業員に貸与した場合

従業員に対して貸与した住宅等に係る通常の賃貸料の額は、次に掲げる算式により計算した金額の合計額となります。

イ.その年度の建物の固定資産税の課税標準額× 0.2%
ロ.12円×(その建物の総床面積/3.3)㎡
ハ.その年度の敷地の固定資産税の課税標準額× 0.22%

例えば、賃貸料相当額が10万円の社宅を従業員に6万円で貸与した場合、6万円は賃貸料相当額10万円の50%以上ですので、10万円と6万円の差額4万円は給与として課税されません。また、従業員自ら家主と賃貸借契約を交わし、その1/2相当額を医療法人が負担した場合は、社宅ではないためこの住宅手当の全額が給与として課税されますので、注意が必要です。

役員に貸与した場合

役員に対して貸与した住宅等にかかる通常の賃貸料相当額(月額)は、次に掲げる算式により計算した金額の合計を1/12した金額となります。豪華社宅(※)に該当するものについては下記の算式ではなく、通常支払うべき金額が賃貸料相当額になります。

イ.その年度の建物の固定資産税の課税標準額× 12%
ロ.その年度の敷地の固定資産税の課税標準額× 6%

なお、他から借り受けた住宅等を役員に貸与する場合、医療法人が支払う賃借料の額の50%に相当する金額と、上記算式により計算した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が、賃貸料相当額になります。この点が、従業員への貸与の場合と異なります。
また、小規模な住宅(家屋の床面積が132㎡以下等)である場合については、従業員の場合と同じ取り扱いとなります。

※ 豪華社宅とは
床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。(国税庁HPより)

医療法上の社宅の取り扱い

次に医療法上の取り扱いです。通常、社宅貸与は福利厚生(医療法人の附随業務)として行われますが、役職員全員ではなく役員のみなど特定の人に対する社宅は福利厚生として認められません。その場合の社宅貸与は不動産業に該当し、通常支払うべき使用料に相当する額を負担する事となります。

しかし、社会医療法人以外の医療法人は不動産業を含む収益業務を行うことが認められていません。特定の人に対する社宅はこの収益業務に見なされる可能性があります。また、医療法 第54条に「剰余金の配当禁止」が定められており、社宅の貸付がその条文に抵触しないか、税務上の面だけでなく慎重に検討する必要があります。

さらに、下記の東京都のように都道府県によっては医療法人の手引等に明記されている場合もあります。
東京都福祉保健局HPより)

東京都

医療法人は、利益の配当を行うことができません。事実上、配当と見なされるような行為も厳に慎むべきです。決算後生ずる利益剰余金は、積立金とし、施設改善、従業員の待遇改善等に充てるのが適当です。剰余金があるからといって、役員等に対して金銭の貸付等を行うことはできません。

<剰余金配当とみなされる例>
・役職員及び利害関係者等に対する貸付(全役職員を対象とした福利厚生規程を設けた場合を除く。)
・役員等特定の人のみが居住する社宅の所有又は賃借
・役員等特定の人のみが使用する保養施設の所有 等

ここまで医療法人の社宅の取り扱いについて述べてきました。医療法上の取り扱いの際に触れましたが役員社宅は剰余金の配当禁止規定に触れる可能性がある為、慎重になる必要があります。
医療法上問題ないか・課税対象にならない金額になっているのかどうか等、気になる場合はTOMAにご相談ください。

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