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株式譲渡型M&Aに係る優遇税制

記事作成日2021/04/20 最終更新日2022/04/08

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この記事のPOINT

(1)株式譲渡方式で他社を買収した場合に、法人税の繰延が認められる可能性のある制度
(2)M&Aに係る初期投資負担を減らすことができます
(3)減税ではなく繰延なので、長期間で考えると節税になるわけではないので注意が必要

制度の概要(2021年度税制改正で創設)

M&Aによる規模拡大を通じた中小企業の生産性向上と、増加する廃業に伴う地域の経営資源の散逸を回避することを目的として経営資源の集約化を促進する税制が創設されます。

中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けることを前提に、株式譲渡で他社を買収した場合のリスクに備えるため買収対価の70%を限度として5年間据置期間付きの準備金の計上を損金に算入できる、というものになります。

〈計算例〉
他社を5,000万円で買収するケースを考えます
(実効税率は35%と仮定)。
×1年度(買収した年度):対価の70%(3,500万円)を損金算入することにより、約1,225万円の税額減少となります。
×2年度~×6年度:変化なし
×7年度~×11年度:各年度それぞれ約245万円の税額増加となります。

注意点

本制度は初年度に積立金を損金に算入できますが、5年経過後は5年に渡って取り崩し、益金に算入します。長い目で見ると税負担は変わらないということに注意が必要です。

M&Aを行った中小企業は生産性等が向上するものの、対象企業の簿外債務や偶発債務、減損等といった課題が顕在化することもあります。そのリスクに備えるための準備金ですので据置期間中であっても簿外債務が発覚した場合等には準備金を取り崩すことになります。

まとめ

M&Aにより他社を買収し経営統合をすることで得られるシナジー効果やスケールメリットは計り知れませんが、リスクがあることも事実です。この制度はそのリスクを軽減できます。(3/16時点では)まだ詳細は出ていませんが、検討してみてはいかがでしょうか。

監修 TOMAコンサルタンツグループ コーポレートアドバイザリー部

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