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養子縁組についての最高裁判決

記事作成日2017/03/10 最終更新日2017/03/10

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事業承継における養子縁組の活用

事業承継を検討する際、オーナーに子供や親族内で後継者がいない場合には、親族外からの後継者を養子縁組することで実子と同じように相続人として取り扱うこととなり、事業承継を行うことができます。その養子縁組の民法上の取り扱いについて最高裁判決が出ました。

民法上の養子の取扱い

養子縁組をすると養子は、養親の相続人となります。ただし「当事者間に縁組をする意思がないとき」等は無効とするとされています。

相続税法上の養子の取扱い

一方、相続税を計算する上では、相続人の数(法定相続人の数)は以下の部分で影響があります。

(1)遺産に係る基礎控除額
(2)法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額
(3)生命保険金等及び退職手当金等の非課税金額

これらの規定を適用して計算すると、法定相続人の数が増えれば増えるほど相続税額が少なくなるため、相続税法上は法定相続人の数に算入する「養子の数に制限」を設けており、また「相続人の数に算入される養子の数の否認」の規定も設けられています。

最高裁判決の内容

(1)判決:最高裁判所は平成29年1月31日に、民法の養子縁組の有効性を巡る事件について、相続税節税目的で行われた養子縁組を認める判断を下しました。
(2)最高裁の判断内容:おおむね次の通り節税目的での養子縁組を認めました。
養子縁組をすると養子は養親の相続人となる。相続税法の規定によって、養子縁組をすることで相続税の節税効果が発生し得る。相続税の節税のために養子縁組をすることは、こうした節税効果を発生することを動機として養子縁組をするもので、相続税の節税の動機と縁組をする意思は併存し得るものである。
そのため、専ら相続税の節税のために養子縁組する場合であっても、直ちに民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。

今後の運用

今回の最高裁判決はあくまでも「民法上の養子縁組を判断」したもので、「相続税法上」はこれまで通り養子縁組に至った事情等個々の実態に応じて「相続人の数に算入される養子の数の否認」の規定が運用されていくと思われます。

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