BLOG

専門家によるブログ

行政書士業務ブログ

事業承継があると株主はどうなるのか?

記事作成日2017/05/15 最終更新日2023/01/18

X
facebook
copy

事業承継は、ある程度時間をかけて計画的に行うことが重要です。その過程で検討しなければならないことの一つとして、「株主の構成」が挙げられます。

株主について

株主は、いわば会社の「オーナー」です。株主は会社のオーナーとして、役員の選任などの重要事項を決議する権限や、配当を受け取る権限などがあります。そのような権限を有する株主を親族だけで構成するのか、親族ではない役員も株主にするのか、従業員や社外の第三者も含めるのか、ということを検討しましょう。

持株会の導入

役員や従業員を株主にし、会社の重要事項の決定に参画させたり、福利厚生の一環で配当を付与する場合、「持株会」を導入するケースがあります。

「持株会」とは株式を保有する役員や従業員からなる団体です。多くの場合、「役員持株会」や「従業員持株会」を設立し、持株会の構成員を規約の規定で限定します。

種類株式や属人的株式(内容は次回以降に説明します)を活用することで、株主総会での議決権がない株式や配当を多めに支給する株式を持株会に与えることも可能です。持株会導入の目的によって、どのような株式を付与するかを設計しましょう。

持株会のしくみ

持株会のメンバーは、民法の「組合」契約で結びついています。メンバー全員で「規約」という約束事をつくり、その規約をもとに会を運営します。

株式は、持株会自体が保有し、そのメンバーが持株会の株式を共有することになります。各メンバーの出資額に応じて持分割合が決定しますので、会の構成員が増えれば一人当たりの持分割合が小さくなり、逆に構成員が減れば一人当たりの持分割合が大きくなります。また、理事等の役員を設置し、毎年会員総会を開催して運営します。

会社法の制度の活用

株主の構成を検討する際は、会社法の制度を活用することも有用です。

株主の変更

多くの中小企業では、株主を変更(株式の譲渡)する場合、会社(取締役会又は株主総会)の承認が必要です。株主が勝手に株式を譲渡することができないようになっています。

種類株式の導入

事業承継の場面で、定款を変更し、「種類株式」を導入するケースがあります。「種類株式」は全部で9 種類ありますが、その一例を紹介します。

1.剰余金配当優先(劣後)株式
2.議決権制限株式
3.拒否権付株式(定款で設定した事項(たとえば役員選任)について、株主総会決議のほかに、この株式をもった株主の決議が必要になる)

例えば、現オーナーに③拒否権付株式1 株を3 年の期限付きで保有してもらい、事業承継後も3年間は役員の選任について決定権を持っていてもらう、という設計が可能です。複数の種類を組み合わせて、会社のニーズに合わせた種類株式を設計しましょう。

属人的株式の導入

議決権、剰余金配当、残余財産分配について、「その人」が持っている株式に定款で特殊な設定をするのが「属人的株式」です。

例えば、会長の株式について、1 株あたり10 個の議決権を付与する、あるいは奥様の株式について1 割多く配当をする、などの設定が可能です。種類株式は、その株式を他の人に譲渡してしまうと、その権利も一緒に移動してしまいますが、属人的株式は、株式をもっている「人」がその権利を保有するので、株式を譲渡しても権利は移動しません。

定款でチェックすべきポイント

最後に、定款について以下のポイントも見直しましょう。

現行法や会社の実態にあっているか

商号や目的を変更したのに定款を改定していないケースや、現在の会社法に対応していない定款を見かけることがあります。定款は会社の根本原則を規定するものです。事業承継に先立って、整えておきましょう。

「相続人等に対する売り渡し請求」規程の設定

「株式」は財産です。したがって、株主に相続が発生した場合は、株式も相続人に相続されます。遺言などで、「株式を○○に相続させる」ということを決めておかない限り、相続された株式は法定相続人の共有になります。これを放置しておくと、相続のたびに株式が分散してしまいます。

このような事態を避けるための対策の一つとして、定款に「相続人等に対する売り渡し請求」規程を設定することが挙げられます。この規程を設定しておくと、株主に相続が発生した場合に、会社側から相続人に対して、「相続した株式を会社に売り渡してください」という請求をすることができます。

「株式の譲渡制限」規程の設定

多くの中小企業では、「株式を譲渡する場合は取締役会(又は株主総会、代表取締役)の承認を要する」旨の規程(株式の譲渡制限規程)を置いています。この規程があると、株主が株式を他の人に譲渡するには、会社の承認を得なければなりません。つまり、会社が把握していないところで、勝手に株式を譲渡されないための規程です。

貴社の定款にこの規程があるかどうか、確認してみましょう。一方、上場企業では、株式の売買が自由に行われ、不特定多数の株主が参加することを想定していますので、この規程は置かれていません。

なお、定款については以下の記事も参考にしてみてください。

・定款とは何か?記載する内容や注意点など分かりやすく解説します
・一般社団法人が定款変更する場合、どのような手続きが必要か
・種類株式を設定した場合、どのように定款に記載するか

TOMAグループでは、事業承継を控えたお客様、後継者の育成を考えるお客様に向けて様々なサービスを展開しています。ご興味のある方は是非お問い合わせください。また、サービス詳細はこちらよりご覧いただけます。

初めての方 閉じる