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減損 日本と国際財務報告基準(IFRS)との違い その2 Impairment (Differences between Japanese GAAP and IFRS) Part 2 【TOMAシンガポール支店 公認会計士駐在の会計・税務事務所】

記事作成日2016/06/13 最終更新日2017/01/27

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【はじめに】

今回は減損のプロセスについてお話をします。

 

【減損のプロセス】

一般的に固定資産の減損の手続きは以下の通りです(あらゆる資産について記載すると複雑になるため、固定資産の減損に限っています)。

 

1 各資産について減損の兆候の有無を把握する

2 もし減損の兆候があれば、その資産から生み出される将来の利益額を見積もる

3 各資産の帳簿価額よりも、2で見積もった将来の利益額のほうが小さい場合、資産の帳簿価額が過大に評価されているとみなされ、過大な評価額部分を損益計算書で費用もしくは損失(日本では減損損失といいます)として計上する

4 3で減損損失を計上したが、翌年以降、資産の収益性が回復し、過去に計上した減損損失が大きすぎたと判断された場合は、減損損失の戻し入れ(取り消し)を行う

 

1の“減損の兆候”とは、各資産の収益性が低下しているだろう兆しの有無を把握することです。例えば、工場が有する有形固定資産一式でたとえますと、工場で生産する製品の価格下落が著しく、予算に対して実際の営業利益が大きく未達である場合があげられます(国際財務報告基準36号 14項(b))。

 

2は、工場が有する有形固定資産一式でたとえますと、1億の投資をしたが、生産品が思いのほか売れないので、将来の出荷品の売上や工場の従業員の人件費などもろもろを含めると向こう20年でも8000万円しか利益が得られないと見積もることが例としてあげられます。

 

3は、2の例を使うと、設備投資額1億から、8000万を控除した2000万円を減損損失として計上することを言います。

 

4は、2で生産していた製品が健康食品だったが、その健康食品が海外で大ブレークし、破竹の勢いで売上が伸び始めた場合、2で見積もった8000万を見直し、その結果、将来向こう20年で1億6000万利益が出ると見積もった場合に、3の減損損失から仮に減損損失がなかった場合に計上される減価償却費を控除した金額を損益計算書の収益として計上し、あたかも過去の減損損失が取り消しされたように処理を行います。(場合によっては包括利益計算書に計上されます)。

 

 

【日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)の違い】

日本の会計基準は上記プロセスの4がありません。4の行為が禁止されています

このため、1の作業が保守的に行われる傾向があります。保守的にとは、減損損失を計上せざるを得ない状況が相当程度に確実にある場合にはじめて2以降のステップに進むということです。相当程度確実という言葉は日本の減損会計の基準ならではの言葉なのです。

 

【シンガポールの監査人の様子を見ていると】

シンガポールの監査人は、減損の検討をはやめに行う傾向があります。

理由は日本の会計では減損損失を計上せざるを得ない状況が相当程度に確実にある場合に限って減損損失を計上しようとしますが、シンガポールでは、減損損失の戻し入れがみとめられているので、日本よりも早い段階で減損損失を計上するとの理解をしているためです。

日本の経理マンや会計士から見ると、ちょっとびっくりするかも知れません。しかし、これは会計基準の差から生じていますので、仕方がないと思います。

 

 

【次回】

次回は減損会計について日本と国際財務報告基準の違いを少し細かく見ていきます。

 

 

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