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マイナス金利と金利スワップの特例処理 その1【TOMAシンガポール支店 公認会計士駐在の会計・税務事務所】

記事作成日2016/05/18 最終更新日2017/01/27

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【はじめに】

今回より、金利スワップの特例処理と、マイナス金利との影響を記載します。

 

【金利スワップとは?】

金利スワップというのは、変動金利と固定金利との交換取引をいいます。

例えば、金銭消費貸借契約に記載されている利息が変動金利の場合で、借入する企業が今後変動金利の上昇を予測しているとしましょう。

そうしますと、変動金利上昇による金利負担のリスクを回避するため、別途、変動金利と交換に固定金利による利息を払うという契約を締結します。この変動金利と固定金利を交換することを金利スワップと呼んでいます。

 

【金利スワップの特例処理とは?】

金利スワップは、デリバティブ取引に該当します。このため、デリバティブ取引と同様に期末に時価評価し、時価評価差額を当期の損益として処理することになります。また、ヘッジ会計の要件を満たす場合は、評価差額を次期以降の事業年度へ繰延する処理をします。

 

日本において、金利スワップ取引は一般の事業会社でもよく使われていることから、実務の簡便性を考慮して、一定の要件を満たした場合に、時価評価をせず金利スワップの受払の純額を借入金の利息に加減するだけの処理である特例処理を認めています。

 

【金利スワップの特例処理の仕訳】

設例を使って仕訳を見てみましょう(金融商品会計に関する実務指針 設例23より)。

結論としては、借入金の利息の支払いを金銭消費貸借契約で定めている変動金利で記帳せず、スワップ契約で締結した固定金利の金額で記帳することとなります。非常に簡便な処理となります。

 

○取引条件

X1年7月1日に期間5年、6か月LIBORプラス0.5%で100,000の変動借入れを行った。変動金利を固定金利に変換するため、LIBORプラス0.5%の変動金利を受け取り、2%の固定金利を支払う、期間5年、想定元本100,000のスワップ契約を締結した。

 

現在の市場レートを反映した変動金利は1.75%であり、会社は手数料として0.25%を上乗せした固定金利を支払うことになる。借入金及び金利スワップの利息は、いずれも後払いで6月30日と12月31日に支払われる。決算日は、3月31日である。また、6か月LIBORは次のとおりであり、支払金利は支払日から6か月前の水準が適用される。

日 付                                 LIBOR

X1年7月1日                  1.25%

X1年12月31日              1.62%

 

○会計処理(単位:円)

特例処理により、金利スワップの受払の純額が借入金の利息に加減される。

① X1年7月1日(借入れ及びスワップ契約締結日)

(借方)現金 100,000 (貸方)借入金 100,000

 

② X1年12月31日(利払日)

(借方)支払利息 875   (貸方)現金 875

(借方)支払利息 125   (貸方)現金 125

・ 借入金利息:100,000×1.75%×6/12=875

・ スワップ契約純支払額:100,000×(2.00%-1.75%)×6/12=125

 

③ X2年3月31日(決算日)

(借方)支払利息 530   (貸方)未払利息 530

(借方)未収利息  30   (貸方)支払利息  30

・ 借入金未払利息:100,000×2.12%×3/12=530

・ スワップ契約純受取額:100,000×(2.12%-2.00%)×3/12=30

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④ X2年6月30日(利払日)

(借方)支払利息 530   (貸方)現金 530

(借方)未払利息 530   (貸方)現金 530

(借方)現金 30   (貸方)支払利息 30

(借方)現金 30   (貸方)未収利息 30

 

上記は、借入実行及びスワップ契約の締結から1年間の取引の仕訳であるが、残存期

間の4年間についても同様な仕訳が行われる。X2年3月31日(決算日)までの支払利

息の合計(スワップ契約の純受払額をネット後)は1,500となり、これはスワップ契約

により借入金利息を2%の固定金利(1,500=100,000×2.00%×9/12)で確定し、キャッシュ・フローを固定したことになる。

 

【次回】

マイナス金利になると、金利スワップの特例処理が適用できないかもというお話をします。

 

 

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