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ストック・オプション 日本基準における仕訳例 【TOMAシンガポール支店 日本公認会計士駐在の税務会計事務所】 

記事作成日2017/05/25 最終更新日2017/06/13

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[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]

【はじめに】

今回は、ストック・オプションの会計処理について、日本の会計基準に従った処理を記載します。

 

【仕訳例】

今回は、企業会計基準適用指針第11 号ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針に記載されている設例をベースにご説明します。なお、仕訳例は人件費と新株予約権の計上に絞って説明をします。

 

設例

 

A 社は、X3 年6 月の株主総会において、従業員のうちマネージャー以上の者75 名に対して以下の条件のストック・オプション(新株予約権)を付与することを決議し、同年7 月1日に付与した。

① ストック・オプションの数:従業員1 名当たり160 個(合計12,000 個)であり、ストック・オプションの一部行使はできないものとする。

② ストック・オプションの行使により与えられる株式の数:合計12,000 株

③ ストック・オプションの行使時の払込金額:1 株当たり75,000 円

④ ストック・オプションの権利確定日:X5 年6 月末日

⑤ ストック・オプションの行使期間:X5 年7 月1 日からX7 年6 月末日

⑥ 付与されたストック・オプションは、他者に譲渡できない。

⑦ 付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価は、8,000 円/個である。

⑧ X3 年6 月のストック・オプション付与時点において、X5 年6 月末までに7 名の退職による失効を見込んでいる。

⑨ X5 年6 月末までに実際に退職したのは、5 名であった。

⑩ 年度ごとのストック・オプション数の実績は以下のとおりである。

 未行使数  失効分  行使分  摘要
 付与時  12,000
 ×4/3期 11,840 160 退職者1名
 ×5/3期  11,520 480  退職者2名
 ×6/3期 8,000 800 3,200  ×5/4~6月の退職者2名、行使20名
 ×7/3期 4,000 800 7,200  行使25名
 ×8/3期 1,120 10,880  行使23名、失効2名

⑪ 新株予約権が行使された際、新株を発行する場合には、権利行使に伴う払込金額及び行使された新株予約権の金額の合計額を資本金に計上する。

 

×4/3期末

(借)株式報酬費用 32,640,000     (貸)新株予約権 32,640,000

→(75名-7名)分の人件費を対象勤務期間である×3年7月から×5年6月の24ヶ月間にわたり費用計上します。今回は9か月分計上します。人件費の測定は、ストック・オプションの公正な評価額を基礎として測定するとしていますので、付与日におけるストック・オプションの公正な単価である、8,000円/個×160個/1名を基に計算します。

8,000 円/個×160 個/名×(75 名-7 名)×9 月/24 月=32,640,000 円

 

×5/3期末

(借)株式報酬費用 44,640,000     (貸)新株予約権 44,640,000

→現時点での退職者見込みは昨年の7名から実際に退職した1名を除いた6名と見込まれるので、(75名-6名)の人件費を12か月分計上します。なお、退職者見込みの修正が入っているので、対象勤務期間の累積人件費を算定して、昨年の人件費計上額を差引いた金額を仕訳の金額とします。

8,000 円/個×160 個/名×(75 名-6 名)×21 月/24 月-32,640,000 円=44,640,000 円

 

×6/3期末

(借)株式報酬費用 12,320,000     (貸)新株予約権 12,320,000

→現時点の退職者は5名ですので、(75名-5名)の人件費を9か月分計上します。仕訳金額の算定は×5/3期末と同様、累積人件費から過年度の人件費計上額を差引きします。

8,000 円/個×160 個/名×(75 名-5 名)×24 月/24 月-(32,640,000 円+44,640,000 円)=12,320,000 円

 

×8/3期末

(借)新株予約権 12,320,000     (貸)新株予約権戻入益 12,320,000

→ストック・オプションの権利行使期間が経過し、2名が権利未行使により権利が失効しました。日本の会計基準によると、権利未行使による失効部分は利益に計上することとしています。なお、国際財務報告基準では、利益へ振り返ることを禁止しています。私見ですが、国際財務報告基準では、貸借対照表の純資産の部の表示の組み換えで対応するのではないでしょうか。

 

上記の仕訳の結果、株式報酬費用の総額は、89,600,000円であり、70名分の報酬費用が計上されることとなります。

 

【最新情報】

企業会計基準委員会より、平成29年5月10日付けで、「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」等の公表をしています。これは、近年、企業がその従業員等に対して新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引が見られるが、この点に関する会計基準の取り扱いを明確にするための公表とされています。

実際に会計基準として確定するまではもう少し時間がかかりますが、おそらく2017年の秋ごろまでには公表されるのではないでしょうか。

 

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