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「成功する」DXの進め方!

記事作成日2021/03/02 最終更新日2022/05/30

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デジタル技術を用いて既存ビジネスモデルに変革をもたらすデジタルトランスフォーメーション(=DX)に取り組む企業が増えています。 ところが「DXに取り組んだが上手く導入できなかった」、「そもそもどういう手順を踏めばいいのかわからない」という声をよく聞きます。今回は、経済産業省が2018(平成30)年に発表した「DX推進ガイドライン」を元に、DXの導入方法や手順を解説したいと思います。

DX化を成功させるための資料

時代の急速な変化に対応できない企業に未来なし!?

現在、世界規模でビジネスが大きく変化しています。

デジタル化が急速に進む中、サービス業・製造業・小売業あらゆる業種でDX(デジタルトランスフォーメーション=Digital Transformation)が起きているのです。この変化に対して柔軟な対応ができない企業は、数年後には時代に取り残される可能性があります。

これは中小企業、小規模事業者はもちろん、大企業も例外ではありません。2018(平成30)年、ECサイトの隆盛に対応できなかった大手玩具販売「トイザらス」が経営破綻に追い込まれ、アメリカ国内の全735店舗が閉鎖に追い込まれたのは記憶に新しいと思います。

経済産業省は2018(平成30)年9月に「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜」を発表しました。このレポートによると、経営者がDXの弊害となっている既存システムからの脱却、従業員の変革に対する反発をコントロールし、DXに取り組まなければ、2025(令和7)年以降、最大12兆円の経済損失が毎年生じる可能性があると警鐘を鳴らしています。

つまり、今がDXに乗り出す最後のチャンスであり、この機会を逃せば取り返しのつかない事態が待っています。なぜなら競合他社が先にDXに乗り出して差をつけられる、あるいは画期的なアイデアを持つ新興企業が登場した場合、その差は大きく開き決して追いつけなくなってしまうからです。

企業経営者は自社と競合他社の差別化ポイントはどこなのかを「見える化」し、自社の強みを発揮できるDXに取り組まなければなりません。

DXに取り組むのは今

DXを具現化するデジタル技術

DXを実現する土台となる技術を自社に取り入れることをデジタイゼーションといいます。デジタイゼーションの技術にはソーシャル技術(Social)、モビリティ(Mobility)、アナリティクス(Analytics)/ビッグデータ、クラウド技術(Cloud)の4つがあり、その頭文字をとって「SMAC(スマック)」と呼びます。

中でも、DXを促進する技術として以下のものが挙げられています。

その1.クラウド

膨大な量のデータをインターネット上に保存し、いつどこにいても取り出すことができるクラウドは、オンプレミス型のサーバーにはないメリットがたくさんあります。外出先でもデータにアクセスできるということは、テレワークや営業先への直行、直帰などネット環境さえ整えば、仕事の幅がぐんと広がります。

また、複数の店舗を持つ小売店などでは、情報をリアルタイムで共有できるのもメリットです。クラウドを使った顧客管理や労務管理ができるサービスも充実しているほか、従量課金制のものも多いので、初期費用やランニングコストを抑えて導入することができます。

DXを具現化するデジタル技術1

その2.IoT (Internet of Things)

物とインターネットをつなぐことで、これまで実現できなかったさまざまなことが可能になります。インターネットに繋がっていれば、遠隔地でも、機械の操作や稼働状況を把握できるのがメリットです。

また、処理を自動化することも可能なため、現場に人材配置をする必要もなく、生産性が向上します。操作を自動化することで、ヒューマンエラーを回避することも可能です。

農業では家畜への餌やりや温度・湿度管理など外出先から、ボタンひとつで管理可能になります。身近な家電では、エアコンや音楽、電灯などを“声”で作動させることができます。鏡に顔を写しただけでその日の健康状態を測れるようになる日もくるでしょう。アイデア次第で新たな商品が生み出せる技術がIoTです。

DXを具現化するデジタル技術2

その3.5G

クラウドやIoTの進化を加速させる技術が5Gです。これまでの4Gと比較して圧倒的なスピードの通信を可能します。

5Gが普及すれば、何百キロと離れた場所の機械をタイムラグなしで操作できるようになり、医者のいない離島でも高度な手術が可能になるといわれています。また、自動運転が実現したり、好きな視点からスポーツ観戦を楽しめたりするでしょう。

「高速性」「低遅延」「多端末接続」という特徴を駆使して自社にしかできないDXを生み出せれば事業は大きく進化するはずです。

DXを具現化するデジタル技術3

この他にも現在注目されている技術が「AR(拡張現実)、VR(仮想現実)」、膨大なデータを読み取り意思決定まで下す「コグニティブ(認知)/AI」、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)をはじめとする「仮想知的労働者」、人間の手では再現できない小さなものや複雑な加工を可能とする「3Dプリンティング技術」などがあります。

DXを実行するための方法・手順は?

では、先進技術を駆使し、DXを実現するにはどうすれば良いのでしょうか。

経済産業省は2018(平成30)年12月に「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」を発表し、DXのために必要なガイドラインを策定しました。このガイドラインでは、DXを実現するために必要なアプローチやアクションが「DX推進のための経営のあり方、仕組み」、「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の2軸でまとめられています。

「経営者が押さえるべき事項の明確化」、「取締役会や株主がDXの取組を確認できるチェックリスト」として利用できるようになっています。

まずは「DX推進のための経営のあり方、仕組み」から解説します。

1.経営戦略・ビジョンの掲示

まず、DXに取り組むにあたり絶対に必要となるのが「何のためにDXに取り組むのか」を明確にすること。つまり経営戦略・ビジョンがあるかどうかが大切です。

例えば、「自社の商品で世界中を笑顔に」というビジョン、経営理念があったとします。これを実現するためには世界中に自社商品を届ける手段が必要です。それが実店舗の拡大で可能なのか、ECサイトを開設するのか、全く新しいアイデアでイノベーションを起こすのか。 DXは目的を達成するための手段であることをまず認識しなければなりません。

戦略もなく、闇雲に「こんな技術があるから使ってみよう」というDXは、機能しないことがほとんどです。また、経営戦略・ビジョンは経営層が部下に示すものであり、経営層に明確なビジョンがなければ、DXは実現しません。「デジタル技術を使って何かやれ」と部下に丸投げするようなことは絶対にしないでください。

DXと経営理念・ビジョン

2.経営トップのコミットメント

DXに取り組む際には、経営トップのコミットメント、かんたんに揺らぐことのない意志が必要です。

DXを行えば、これまでの仕事の仕方、組織、企業文化・風土などががらりと変わることがあります。抜本的な改革を行えば、現状の仕事で満足している社員や仕事を変えたくない社員から反発があるのは火を見るよりも明らかであり、変化に耐えられずに退職する社員もいるでしょう。

その際に、断固とした意思で改革を進めるためには経営層がリーダーシップを発揮しなければなりません。

3.DX推進のための体制整備

DXを実践する土壌が企業内に整っていることも、導入前に確認したいポイントです。それは設備的なものでもありますし、従業員の意識でもあります。各事業部が積極的にDXに取り組めるよう、仮説検証を繰り返し、DXのプロセスがインプットされていることが大切です。

体制はDXに取り組むにあたり、各事業部門のデータが活用可能なものなのかどうか、DXを専門とする推進部門が設置されているかどうかに注視します。

また、DXを専門にデジタル技術やデータ活用に精通した人材の確保が必要です。DXを推進する人材は、デジタル技術を扱えるだけでは不十分です。自社の事業を熟知し、ビジネスモデルに変革をもたらす企画を発案できる人材でなければなりません。

そのため、早急にDXに取り組みたいときには、新しい人材を採用するのではなく、自社内で興味・能力のある人材を募り育成することが望ましいです。

しっかりと仮説検証をせずにDXを導入してしまったり、反対にネガティブな仮説ばかりをしてしまい導入に二の足を踏んでしまったりしないようにしましょう。

DXを推進するための体制整備

4.投資などの意思決定のあり方

DXは「自社の未来を切り開くビジネスモデルを創出」するための“投資”です。

経営層はその気持ちで望まなければなりません。「なるべく低コストで良いものを」と考えるのは当然ですが、そこに固執するあまり中途半端なシステムを導入しDXに失敗するケースは少なくありません。また、リターンを意識しすぎてシステムの選定に時間がかかり導入が遅れることもあるので注意しましょう。デジタル化が遅れるほど時代に取り残される、競合に差をつけられる可能性があることも勘案しなければなりません。

5.DXにより実現すべきもの:スピーディな変化への対応力

DXは1度の変革で終わりではありません。変化し続けることが重要です。時代の流れ、自社の経営状況の変化などにより柔軟にブラッシュアップされ、進化しつづけなければなりません。フットワーク軽く対応できるようにすることが大切です。

以上のように、DXに取り組む際には経営層の覚悟と現場の意思統一、適正人材の育成がポイントになります。

DX推進のための経営のあり方・仕組み

では、次に「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」についてです。システムの構築は「体制・仕組み」と「実行プロセス」の2軸に別れます。

体制・仕組み①:全社的なITシステムの構築のための体制

経営層の強い意志で、デジタル技術を導入するのは悪いことではありませんが、いきなり導入しても現場は混乱するだけです。導入に耐えられる体制や人材をそろえる必要があります。

例えば、経営層、各事業部、DX推進部門、情報システム部門それぞれの人材が参加する少人数チームを立ち上げ、段階的にDXを導入するなどの工夫が必要です。

体制・仕組み②:全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス

現在、企業のDXを阻む大きな壁として存在するのがレガシーシステムといわれています。レガシーシステムとは20年以上前に構築された「老朽化したシステム」のこと。

年を重ねることに度重なる修正によりシステムが複雑化したり、管理者が不在となりシステム自体がブラックボックス化してしまっているシステムを指します。そのシステムがないと業務遂行が困難なため、新しいシステムに移行したくてもできないというジレンマを抱えている企業が多いようです。

DXに乗り出したとしても、各事業部がそれぞれにシステムを構築し、他の事業部のことを考えなければ新たなレガシーシステムを生むだけです。そうならないよう、システムが複雑化、ブラックボックス化しないような体制を確立することが大切です。

また、新しいシステムを導入する際、自社に詳しい人材がいないからとベンダー企業(システムの製造を請け負う企業)に丸投げするのも良くありません。前項でも説明しましたが、自社にDXを担う専任がいなければそもそもDXに取り組むべきではありません。ユーザー企業が自らイニシアチブをとり、システム構築に関わる必要があります。

DXとレガシーシステムの関係

体制・仕組み③:事業部門のオーナーシップと要件定義能力

DXを推進していく際には現場となる各事業部門がオーナーシップを持つ必要があります。情報システム部門が中心となってシステムを構築すると、実務に沿ったものになっておらず、うまく定着しないケースがよくあるからです。

ベンダーから技術的な提案を集めたら、実際に運用する各事業部門が取捨選択を行わなければうまく機能しないでしょう。

DXとITシステム

次に「実行プロセス」について解説します。

実行プロセス①:IT資産の分析・評価

実行プロセスではまず、現在自社で運用しているITシステムのうち、既に利用していないシステムがないか確認することから始めます。一時的な企画や取り組みでシステムを開発したが、以後全く使われなくなっていたり、ほとんど使っていないシステムなのに運用費や保守費が高騰しているケースもあります。

実行プロセス②:IT資産の仕分けとプランニング

IT資産の分析・評価が完了したら、

・切り捨てても構わないシステム
・業務に必須のシステム
・DXの実現に新たに加えるシステム

以上のようにIT資産の仕分けとプランニングを行います。

プランニングのポイントは集積したデータ、デジタル技術の活用によって迅速かつ柔軟に対応できるシステムかどうか。一定部門に特化したものではなく、全社横断で活用できるシステムになっているか。競争領域と協調領域が明確に分けられているか。不要となったシステムはコストをかけずに廃棄できるか。以上のポイントに気を配りながら導入を進めると良いでしょう。

営業部門などではよくある事例ですが、現場がノウハウを周りに共有したくないということもあります。これは人事制度によるところが大きいため、周りに有益な情報を提供した場合には評価するような制度構築も必要になります。

DX化に伴う既存IT資産の仕分けとプラン

実行プロセス③:刷新後のITシステム:変化への追従力

新しいデジタル技術によってビジネスモデルが変わることに対応できるのはもちろん、その後の状況変化に柔軟に対応できるシステムとなっているか。DX自体が目的となっていて、ビジネスがうまくいっているかどうかが二の次になっていないか。

DX基盤とするITシステムの構築

「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」において重要なことは各事業部門が先頭に立つこと、全社横断的なシステムでレガシー化を防ぐこと、不必要な既存システムとの決別をすることがポイントになります。

DX化のための導入の手引き

DX化の手順と具体例

少し概念的な話が多くなったので、最後にかんたんな具体例を挙げながらDXの手順を解説したいと思います。DXの基本的な手順は、デジタル化→効率化→情報共有→データ活用です。

その1.デジタル化

これまで紙で運用していた帳簿や顧客情報をペーパーレス化する、各個人や部門がエクセルなどで管理していたデータを共有フォーマットに統一するなど可能な限り自社で取り扱う情報をデジタル化します。

その2.効率化

デジタル化が一通り完了したら業務の効率化を図ります。営業報告は帰社後に上長直接報告、全員が出社している時間を見計らって営業会議を開くなど効率の悪い状況はデジタル化によって改善できます。営業報告はクラウドで、会議はzoomなどビデオ会議システムを利用するなど、担当者が外出中であっても会議ができれば業務効率は格段に向上します。ビジネスタイムは限られていますから、1分1秒を無駄にしない働き方が重要になります。

その3.情報共有

デジタル化した情報は関連する社員が全員で共有し、営業力の底上げや新しい企画の立案に役立てます。全国に営業所がある場合、販売状況などをリアルタイムで情報共有することで欠品を防いだり、ノウハウを共有することができます。

例)レストランで苺のスイーツキャンペーンを打っている場合、売上が好調な店舗の材料が欠品しないよう、リアルタイムで発注をかけることができます。また、売れている店舗ではどんな施策をしているのかを共有することで、売上が伸びていない店舗の営業力強化が可能です。

その4.データ活用

蓄積したデータはそのまま温存しておくのではなく、売上向上のためにどんどん活用します。

例1)苺のスイーツキャンペーンを毎年、苺が一定量入荷できる4月末まで行っていたが、売上データをみると、毎年3月中旬から売上が落ちはじめていることがわかったので、キャンペーンは3月で終わりにし、4月は新商品のキャンペーンを打つことにする。

例2)商品Aを買った消費者のうち、7割が商品Bも併せて購入していることがわかった場合、商品Aを買った人にはもれなく「商品Bもいかがですか」とすすめる。商品Aのすぐ隣に商品Bを陳列することを全社共通ルールとする。

DXの基本とは

例1)見積書をExcelで作成する場合

【デジタル化】各自のパソコンや各部署単位で管理しているExcelファイルの見積書をクラウドで作成します。

【効率化】クラウドで作成することにより、外出先で作成した見積書の承認を上長にリアルタイムでもらうことが可能になります。

【情報共有】顧客データが紙ではなくクラウド上にあることで、案件・受注情報を一元管理できます。そのため、過去の取引データなどもすぐに検索可能です。

【データ活用】過去のデータを鑑みて、自社商品に興味を示しそうな見込み客へのアプローチがしやすくなります。また、顧客データからアップセル、クロスセルの提案が可能な顧客リストのアップが可能です。

例2)訪問・電話・FAXなどのアナログ受注

【デジタル化】受注は電話やファックスではなく、Webを使った受注管理システムに切り替えます。

【効率化】紙での受注の場合、顧客情報を入力し直さなければならないが、Webを介した受注にすれば顧客が必要な情報を入力してくれるので、手間を省くことができます。

【情報共有】受注情報を全社共有することで状況をリアルタイムで把握できます。

【データ活用】受注と同時に仕入れ業者や配送業者などへ情報を流すことで、連絡の手間を省き、迅速な納品が可能になります。

例3)店舗での販売

【デジタル化】実店舗の営業と並行してECサイトを構築することで、低コストで商圏を拡大できます。

【効率化】ECサイトは従業員を配置する必要はなく、24時間営業が可能です。

【情報共有】仕入先にも受注情報をリアルタイムで共有することで、迅速な配送作業が可能です。

【データ活用】過去の購買データに基づいたリセール活動が可能になります。

DX化に関するお悩みはTOMAにご相談ください

今回はDXを導入する際に気をつけるべきポイントを中心に解説しました。業種や企業規模によっても取り組み方が変わるため、フローチャートのように説明ができないのがDXの難しいところでもあります。TOMAではDXに関するサポートをしています。初回相談は無料なので、お気軽にご相談ください。

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