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取締役と監査役の任期は何年か

記事作成日2018/09/06 最終更新日2023/06/26

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この記事では取締役と監査役の任期に関する規定や計算方法、補欠規定・増員規定などについて解説していますのでご確認ください。

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取締役・監査役の任期に関する規定

株式会社の取締役、監査役の任期は会社法に定められており(会332条、336条)、定款に特段の定めのない場合には以下のようになります。

取締役 監査役
選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(会社法332条1項) 選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(会社法336条1項)
公開会社ではない会社は、定款で定めることで10年まで伸長可能 公開会社ではない会社は、定款で定めることで10年まで伸長可能
定款により短縮可能 定款による短縮不可

任期満了、辞任により退任した役員は、その役員が退任することにより、役員の数が会社法または定款で定めた人数に満たなくなってしまう場合には、新たに役員が選任されるまでは役員としての権利義務を有します(会社法第346条1項)。

ここで、注意が必要なのが、役員としての権利義務を有してはいますが、任期が切れていることには変わりはなく、選任懈怠となります。

役員を選任するべきなのに選任せず放置することを「選任懈怠」といいます。また、登記を申請するべきなのに申請せず放置することを「登記懈怠(とうきけたい)」といいます。登記懈怠により、過料に処せられてしまう可能性があります。

取締役、監査役の任期の計算方法

株式会社Aの決算期が3月末で、定款に取締役の任期を2年(2以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで)と定めていたとしましょう。

株式会社Aが、平成26年8月14日の臨時株主総会で取締役甲を選任した場合、この取締役甲の任期は平成28年3月末の事業年度に関する定時株主総会の終結時まで、となります。選任から2年の平成28年8月14日までではありませんので、注意が必要です。

なお、平成28年の6月末までに定時株主総会が開催されなかった場合は、平成28年の6月末が任期満了日となります。

補欠規定・増員規定

任期満了前に退任した取締役、監査役の補欠として選任された者の任期を前任者の任期の満了すべきときまでとする定めが定款にある場合に、前任者が任期途中で退任したときは、前任者の任期を引き継ぐことができます。

同様に、増員により選任された取締役の任期は、他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする旨の定めが定款にある場合は、在任取締役の任期と合わせることが可能です。

ただし、この増員規定は監査役に対して定めることができないので、注意が必要です。

取締役、監査役の任期は何年がよいのか

取締役、監査役の任期は一律に何年がよい、ということではなく、それぞれの会社の事情により異なります。

例えば、家族経営の株式会社の場合で、株主も家族のみの場合は、取締役の任期は長くてもいいかもしれません。このような場合は、同じメンバーで変わらずに取締役として継続するケースが多いからです。

もし、取締役の任期を「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」としていたとき、メンバーは変わらないのにも関わらず、わざわざ法務局へ変更登記の申請をしなければならず、その分登記費用も手間もかかります。

反対に、外部の株主や親族以外の取締役や社外取締役がいる会社の場合は、任期は短いほうが良いでしょう。短期的に役員の実績を振り返り、役員のメンバーとその報酬の見直しをすること機会を設けることで、役員の活動が活発化することが期待されます。

また、実務的には次のような問題が発生するケースが見受けられます。

もし、取締役の任期を長く設定していて、任期途中に何かの事情で辞めさせたいが、辞任届が提出されない場合、「解任」するしか方法がなくなってしまいます。この場合、登記事項証明書に「解任」と記載されるわけですが、これを見た取引先や金融機関に内部で揉めている会社ではないのかという印象を与えてしまう可能性があります。

取締役、監査役の任期を定款で設定する場合には、会社の諸事情を考慮しまければなりません。お悩みの場合には、専門家に相談するのがよいでしょう。

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