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減損 日本と国際財務報告基準(IFRS)との違い その5 Impairment (Differences between Japanese GAAP and IFRS) Part 5 【TOMAシンガポール支店 公認会計士駐在の会計・税務事務所】

記事作成日2016/07/07 最終更新日2017/01/27

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【はじめに】

今回も減損会計について日本と国際財務報告基準の違いを見ていきます。

 

【減損の兆候がある場合、資産から生み出される将来の利益額の見積もり方の違い】

日本では

1 減損損失の認識(認識とは減損損失を会計帳簿や決算書に記入するかしないかを決める

2 減損損失の測定(測定とは具体的に損失の金額を算定すること)

を別々に考えています。

もし、1の結果、減損損失を計上する必要がないと判断された場合、次の2のステップには進みません。

 

これに対し、日本と国際財務報告基準(IFRS)では、1はなく、いきなり2からスタートします。

 

これについて、日本の固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書では、以下のように述べています。

「減損損失の測定は、将来キャッシュ・フローの見積りに大きく依存する。将来キャッシュ・フローが約定されている場合の金融資産と異なり、成果の不確定な事業用資産の減損は、測定が主観的にならざるを得ない。その点を考慮すると、減損の存在が相当程度に確実な場合に限って減損損失を認識することが適当である。」

 

減損損失を計上する際には、日本の会計基準でも国際財務報告基準でも、将来の資産から生み出される将来の利益額の見積をしなければなりませんが、精緻に見積もりは難しいでしょう。

 

企業の方も監査人も神様のように将来の収益予測を見積ることはできないでしょうし、企業は減損を回避するために、都合のいい収益予測を作る可能性もあります。

このため、日本では、もう仕方がないと納得できる場合にのみ減損損失を計上しましょうという考えを採用し、“減損の存在が相当程度に確実な場合に限って”減損損失を計上することとなりました。このため、あえて1のプロセスを日本では設けたのです。

 

この一方で、国際財務報告基準では、“相当程度に確実な場合”という考え方はありません。このため1のステップを設けずに、いきなり2という考え方をとっています。そうなると、いきなり2からスタートするため、将来の儲かり見合い(将来キャッシュ・フロー)の割引計算をしたりするなど、面倒な作業が多くなります。

 

【減損損失の測定の仕方】

減損損失の測定の仕方は、日本と国際財務報告基準(IFRS)で同じ考えをとっています。

 

減損損失の測定(具体的に損失額をいくらにするのかを決めること)は、対象となる資産(あるいは資産の集まり)の利用期間から得られる将来の儲かり具合を見積もって決定します。

もし固定資産金額が1億円、その固定資産を使って設けられる収益が8,000万(固定資産を利用する期間は通常長いので、各年度の収益を現在価値に割引計算します)だとすると、差額の2,000万が減損損失となります。

 

なお、この8,000万のことを回収可能価額(recoverable amount)と会計基準では呼んでいます。

 

この回収可能価額の算定の仕方には2種類あり、上記と同様に、その資産を使い続けることによって得られる収益を計算する方法(この方法で算定された金額を使用価値、asset’s value in useと呼びます)と、固定資産を使うのをやめて売却する場合に得られる資金(これを正味売却価額、asset’s fair value less costs to sellと呼びます)があります。

 

たとえば、大昔に購入した土地については、日本の場合その後値上がりしているケースがおおいため、当初工場用地として購入し使い続けてきたが、不動産業者に売却したほうが先細りで営業するより儲かるという考えも出てきます。その場合は、その時の売買予想金額から売却のための付随コストを差し引いた金額が、その土地が生む収益とも考えられるため、使用価値のほかに、正味売却価額という概念も回収可能価額に含めているのです。

 

【次回】

次回も減損会計について日本と国際財務報告基準の違いを少し細かく見ていきます。

 

 

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