「息子が会社を継いでくれるか分からない。」
「幹部の中に候補はいるが、本当に社長を任せられるだろうか。」
「候補者は複数いるが、誰を選ぶべきか決められない。」
事業承継を考え始めた経営者の方から、このようなご相談をいただくことは少なくありません。一方で、経営者の多くは「早く後継者を決めなければ」と焦りを感じています。しかし、本当にそうでしょうか。
私たちは、多くの企業の事業承継をご支援する中で、ある共通点に気づきました。事業承継がうまく進む会社ほど、「誰を後継者にするか」を最初に決めようとはしていないのです。この記事では、後継者選びで悩む経営者が、まず考えるべきことについてお伝えします。

目次
後継者を決められないのは、決断力がないからではない
「なかなか決められない自分は優柔不断なのではないか。」
そう考えてしまう経営者もいらっしゃいます。しかし、それは違います。会社の未来を真剣に考えているからこそ、簡単には決断できないのです。
例えば、親族承継であれば「息子・娘は候補だが、まだ会社に戻るか分からない」「戻ってきても、本当に経営を任せられるだろうか」と悩まれることがあります。
また、社内承継では「優秀な幹部はいるものの、経営者としての適性までは見えない」「社員は納得してくれるだろうか」「自分が引退した後、本当に会社は回るのだろうか」と、一歩を踏み出せずに時間だけが過ぎてしまうケースも少なくありません。
このような不安がある状態で、一人を後継者として決めることは簡単ではありません。むしろ、慎重になるのは当然のことです。
本当に難しいのは「後継者選び」ではない
では、事業承継で最も難しいことは何でしょうか。
それは、「誰を後継者にするか」ではありません。「安心して会社を任せられる状態をどうつくるか」です。
たとえ優秀な後継者が決まっていても、幹部が思うように協力せず、重要な意思決定が社長に集中したままでは、組織は変わりません。部門間の連携もうまくいかず、結果として後継者が孤立してしまうこともあります。このような状態では、事業承継後に組織がうまく機能しない可能性があります。
つまり、問題は後継者個人ではなく、「組織」にあることが少なくありません。

「後継者を決める」より先に考えるべきこと
私たちは、後継者を決める前に、まず次のような視点で会社を見つめ直すことが重要だと考えています。
- 誰が会社の未来を担っていくのか。
- 幹部は経営者視点で会社全体を見られているか。
- 後継者を支える体制は整っているか。
- 社長がいなくても意思決定できる組織になっているか。
こうした視点で組織を見直すことで、「誰が後継者としてふさわしいか」も自然と見えやすくなります。
後継者は「育てながら見極める」という考え方
後継者は、最初から一人に決めなければならないわけではありません。実際の支援現場でも、複数の後継者候補や幹部が経営課題に取り組む中で、それぞれの強みや役割、経営者としての適性が見えてくるケースは多くあります。
私たちは、このように後継者候補・幹部・次世代リーダーがチームとして会社の未来を考え、育成と見極めを同時に進める考え方を「チーム承継」と呼んでいます。後継者を一人で育てるのではなく、会社全体で未来をつくる体制を整えることが、結果として事業承継の成功につながるのです。

まとめ
事業承継の第一歩は、「後継者を決めること」ではありません。まずは、安心して会社を任せられる組織や経営体制をつくること。その過程で、後継者候補は育ち、本当に会社を任せられる人材も見えてきます。だからこそ、
「誰を後継者にするか」ではなく、「誰と会社を未来につないでいくか」
この視点を持つことが、事業承継成功への第一歩なのです。
次回予告
次回は、「事業承継が成功する会社は『後継者』ではなく『組織』を育てている」をテーマに、事業承継がうまくいく会社とそうでない会社の違いを、組織づくりの観点から解説します。
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