人事労務のご担当者様は、日々、様々な業務に奮闘されていることと思います。 しかし、現場で当たり前のように繰り返されているその「いつもの処理」のなかに、実は多額の未払い請求や訴訟トラブルに発展しかねない「法令違反」が潜んでいるケースがあります。
「前任者から引き継いだやり方を、なんとなくそのまま続けている」
「ネットで調べた無料のひな形をもとに、見よう見まねで手続きをしている」
「法改正があったが、就業規則等を改訂せずにこれまでと同じ手続きをしている」
こんな方は要注意かもしれません。今回は、TOMAへのご相談のなかで耳にする「人事労務でついやってしまいがちな法令違反10選」をご紹介します。
ご自身の普段の業務と照らし合わせながら、日々の業務の中に潜む“地雷”を避けられるよう、ぜひセルフチェックにご活用ください。
【社会保険編】
地雷1:「すぐ辞めるかもしれないから」と試用期間中の社会保険加入を後回しにする
人の入れ替わりが激しい職場で中途採用を行う際、「すぐ辞めてしまうとお互い手続きが面倒だ。最初の3ヶ月はアルバイトや業務委託にしておこう。社会保険料が引かれない分、手取りも増えるし本人も喜んでいるから問題ない」と、本採用のタイミングで初めて社会保険に加入させているケース。

【社労士による解説】
「本人も納得している」「お互いの見極めのため」というのは会社側の都合に過ぎず、実態として指揮命令下で働いており加入要件を満たしていれば「入社初日」からの加入義務があります。
もし年金事務所の調査が入れば入社日に遡って保険料が強制徴収されるうえ、すでに退職してしまった元社員の「本人負担分」まで会社側が被らなければならない事態に発展するリスクがあります。
すぐ辞めるかもしれないから、という独自のルールは法律上通用しません。
地雷2:「基本給は同じだから」引越し等による交通費アップ時の手続きを放置する
テレワークの普及などで社員が郊外へ引っ越すケースが増える中、定期代が月1万5千円上がった。労務担当者は給与計算ソフトの交通費データだけ更新して支払っているが、「基本給自体は変わっていないから」と社会保険の月額変更届(随時改定)は出さずにそのまま放置しているケース。
【社労士による解説】
通勤手当も社会保険上の「報酬」に含まれます。そのため、基本給が変わっていなくても通勤手当が大幅に上がった(要件を満たした)場合は随時改定の手続きが必須です。これを放置して調査が入ると、過去2年分に遡及して保険料を徴収される可能性があります。たかが交通費という認識は非常に危険です。
【給与・手当編】
地雷3:「うちの給料は残業代込みだから」と明細に基本給しか書かないドンブリ勘定
外回り中心で日々の労働時間の把握が難しい営業職などを募集する際、求人票には「月給30万円(みなし残業代含む)」と記載しているが、実際の給与明細や雇用契約書には「基本給30万円」としか書いていない。「うちの給与には最初から40時間分の残業代が含まれている」と社内では共通認識になっているから大丈夫だと思い込んでいるケース。
【社労士による解説】
給与明細や就業規則で「基本給〇万円、固定残業代〇万円」と明確に区分していないと、労働基準監督署の調査で固定残業代自体が無効と判断されやすくなります。
結果として、払っていたつもりの残業代も基本給とみなされ、過去3年分に遡って高額な未払い残業代を請求される恐れがあります。
地雷4:「ペナルティとして当然」と、社員のミスによる損害を一方的に給与から天引きする
社員が営業車をこすってしまったり、店舗のレジで違算金を出してしまったりした際、「本人の不注意なんだから、反省させる意味でも今月の給料から天引きしておくぞ」と、とくに書面なども交わさず、ペナルティとして一方的に給与から差し引いて支給しているケース。

【社労士による解説】
会社側の一方的な天引きは、労働基準法の「賃金全額払いの原則」に抵触します。社員への損害賠償請求自体は可能ですが、正当な権利だと思ってやってしまうと逆に会社側が法律違反に問われます。
給与は一度全額支払い、別途合意書を交わして返済してもらうという正しい手順を踏む必要があります。
【労働時間・休日編】
地雷5:「1日出て1日休んだからチャラ」と、休日出勤の代休に対して割増賃金を払わない
繁忙期のトラブル対応などで突発的な日曜日出勤を命じた際、「代わりに今週の水曜日を休みにしていいよ」と事後に休みを与えている。「1日働いて1日休んだのだからプラスマイナスゼロ」として、休日労働の割増賃金(差額)を一切計算せずに処理しているケース。
【社労士による解説】
事前の「休日の振替」手続きを行わず、事後に休みを与えるのは「代休」の扱いとなります。この場合、休日労働の割増賃金(1.35倍など)の差額分を支払う義務が残ります。現場の感覚でゼロ処理していると、未払い賃金として蓄積されてしまいます。
地雷6:「残業は命じていないから」と、タイムカード打刻後の自主的なPC作業を黙認する
働き方改革の一環で会社として「18時には退社するように」と厳しく指導し、タイムカードもその時間に切らせている。しかし、業務量が減っていないため真面目な社員がその後も自主的に残ってPCで作業をしており、管理職も「会社が残業を命じたわけではないから」と黙認して残業代を払っていないケース。
【社労士による解説】
会社が残業を命じていなくても、PCが動いているのを放置(黙認)していた場合、客観的記録であるPCログが労働時間とみなされます。万が一労働審判になった際、「本人の自主性だった」という言い訳は通用せず、会社側が極めて不利な立場に立たされます。
地雷7:お昼休み中、「ほとんど鳴らないから」とお弁当を食べながらの電話番
お昼休み中、事務担当者に自分のデスクでお弁当を食べさせながら「ごめん、誰もいなくなっちゃうので、もし電話が鳴ったら取ってね」とお願いしている。実際には鳴らなかったが、通常通り「1時間休憩」として給与から控除した。

【社労士による解説】
電話が鳴ったら対応しなければならない状態は、法律上は休憩ではなく手待ち時間(労働時間)とみなされます。完全に業務から離れて休ませる環境を作っていなければ、違法な労働時間の控除にあたります。
地雷8:「本人がいらないと言っているから」と、有給休暇の年5日取得義務を放置する
慢性的な人手不足に悩む製造工場などで、職人に有給休暇の取得を促しても「今はラインを止められないし、有休はいらないです」と断られる。本人が自ら納得して休まないと言っているのだから無理に休ませる必要はないと判断し、年5日の有給取得義務を満たさないまま放置しているケース。

【社労士による解説】
本人の同意があっても、年5日取得させるのは会社の義務です。これに違反すると、労働者1人につき30万円以下の罰金の対象になり得ます。本人が指定しない場合は、会社が時期を指定して強制的に休ませる必要があります。
【雇用契約・安全衛生編】
地雷9:「パートに賞与はないよ」と口頭で伝えるだけ。正社員用の就業規則をそのまま使い回す
パートや契約社員が正社員と肩を並べて同じ現場作業をしている職場において、会社には正社員用の就業規則しかなく、面接の場で「うちはパートさんには賞与や退職金は出ないからね」と口頭で伝えるだけで済ませている。仕事内容は正社員とほぼ同じだが、非正規専用のルールは特に明文化していないケース。
【社労士による解説】
同一労働同一賃金の観点から非常に危険な状態です。業務内容が同じなのに合理的な理由なく待遇差を設けるのはNGとされており、退職した非正規社員から労働審判を起こされるトラブルが急増しています。非正規専用の規則作成と、待遇差の理由の明文化が急務です。
地雷10:健康診断の「要再検査」が出た社員をそのまま放置
健康診断で「要再検査」の判定が出た社員に受診を促したが、「仕事が忙しいし、どこも痛くないから大丈夫です。病院は嫌いなんで」となかなか病院に行こうとしない。本人がそこまで言うなら自己責任だと考え、それ以上は特に指導せず放置しているケース。

【社労士による解説】
会社には従業員の健康を確保する安全配慮義務があるため、本人の自己責任では済まされません。放置した結果、万が一その社員が倒れてしまった場合、会社の責任として高額な損害賠償請求を受ける甚大なリスクがあります。業務命令としてでも再検査を受診させることが必要です。
知らなかったでは済まされない!労務リスクの恐ろしい結末
上記のような“地雷”を放置しておくと、ここまで解説してきたように
・労働基準監督署や年金事務所の調査により、多額の未払い残業代や社会保険料を遡及請求される
・従業員からの信頼低下による離職率の悪化 ・退職者からの労働審判や、高額な損害賠償請求(訴訟トラブル)への発展
など、企業は思わぬダメージを受けます。
「知らなかった」「悪気はなかった」では済まされないのが、労務リスクの最も恐ろしいところです。
コンプライアンス違反を未然に防ぐ・解決するための3ステップ
複雑化し、毎年のように改正される労働法に対し、知らず知らずのうちにコンプライアンス違反に陥らないためには、社内での定期的な見直しと体制づくりが不可欠です。まずは以下の3つのステップで、自社の労務管理を点検してみましょう。
【STEP1】最新の法改正情報にキャッチアップする体制を作る
厚生労働省のメールマガジンに登録する、行政のポータルサイトを定期的に確認するなど、法律のアップデート情報を担当者がいち早くキャッチできる仕組みを整えましょう。
【STEP2】現場の実態と就業規則・契約書にズレがないか定期点検する
「昔作った就業規則」が、現在の働き方や最新の法律と矛盾していないか、少なくとも年に1回はセルフチェックを行うルールを設けましょう。
【STEP3】トラブル時のエスカレーションフローを構築する
社員のメンタル不調やハラスメント問題、複雑な育休手続きなど、ネット検索の一般論だけでは解決できないイレギュラーが発生した際、人事担当者が一人で抱え込まずに相談できる社内・社外のルートを明確にしておくことが重要です。
自社での解決が難しい場合は「プロを頼る」のも選択肢
とはいえ、日々の膨大な実務をこなしながら、頻繁な法改正をすべて正確にキャッチアップし、未経験の労務トラブルに社内だけで立ち向かうのは、担当者様の心理的負担も大きく限界があります。そんな企業様には、TOMAの「給与・社会保険・労務相談アドバイザリー顧問サービス」がおすすめです。
・業務の丸ごとアウトソーシング(外注)までは不要だけど、困った時だけスポットでプロに質問したい
・残業代の計算やイレギュラーな手続きについて、最新の法律に合っているか手軽に確認したい
というご担当者様に向け、フルサポートの顧問契約よりもリーズナブルな価格で顧問サービスを提供いたします。
【TOMAのアドバイザリー顧問 3つのメリット】
1.圧倒的なコストパフォーマンス:
手続きや計算の実務代行(BPO)を含まない「相談特化型」のプランで、月額3万円~という低コストを実現。
2.チャット・電話・メールでスピーディーな疑問解消:
「ちょっと確認したい」時に気軽に質問でき、人事担当者様の調べ物に費やす膨大な時間を削減します。
3.自社に正しい労務ノウハウが蓄積される:
実務自体は自社で手を動かして進めるため、担当者のスキルアップに直結。属人化を防ぎ、強い労務管理体制が社内に構築されます。
下記で詳しくご説明していますので、是非ご覧ください。
まとめ
給与計算や社会保険手続きの現場には、今回ご紹介したような「見えない地雷」が多数潜んでいます。現場の良かれと思った対応や、前任者からの慣習が、実は企業の首を絞める法律違反になっているかもしれません。
「うちのやり方、プロの目から見て本当に大丈夫なのかな…?」
「今の体制で、今後の法改正に対応できるか正直自信がない」
もし少しでもそう感じられたなら、手遅れになる前にTOMAの初回無料相談(60分)を「自社の労務の健康診断」としてぜひご活用ください。
無料相談にあたって、事前の面倒な資料準備などは一切不要です。現状の不安や疑問をお話しいただくだけで、労務の専門家が「御社に今どんな法的リスクが潜んでいるか」「まず何から手をつけるべきか(優先順位)」を明確に整理してお伝えします。
「まずはプロの見解を手軽に聞いてみたい」
「今の顧問社労士とは別の意見(セカンドオピニオン)を聞いてみたい」
といった気軽なご活用もお待ちしております。
知らず知らずのうちに多額の未払いリスクを抱え込んでしまう前に「まずは自社の現状をプロに確認してもらおう」というお気持ちで、ぜひお気軽にお問い合わせください。
