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4月からこう変わります! 診療報酬の特例措置とオンライン資格確認

記事作成日2023/02/22 最終更新日2023/02/23

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いよいよ今年の4月からオンライン資格確認が原則義務化されます。ですが、変わるのはこれだけではありません。厚生労働省の中央社会保険医療協議会にて診療報酬の特例措置が取られることが公表されています。

一体この措置で診療報酬はどう変わるのでしょうか。今回のブログでは、この特例措置の概要や関連するオンライン資格確認についての現状、オンライン資格確認導入後に懸念される問題点についても触れていきます。

特例措置について

4月からの診療報酬の特例措置ですが、2つの措置から構成されており、それぞれ目的別に分けると、

①オンライン資格確認の導入・普及に伴うもの
②医薬品の安定供給を図るもの

となります。またこの2つはそれぞれ対象としている診療報酬が異なり、実施期間は令和5年4~12月までとなります。

医療DXの推進のためのオンライン資格確認の導入・普及に関する加算の特例措置

初診料・再診料・調剤管理料において、患者がマイナンバーカードではなく通常の保険証を提示した場合、この特例措置によって診療報酬が加算されることになります。下記の表に詳細をまとめていますので、こちらも併せてご参照ください。

※1 対象は「医療情報・システム基盤整備体制充実加算1」
※2 施設基準を満たした保険医療機関を受診した患者に対して、再診を行った場合における評価を行う「医療情報・システム基盤整備体制充実加算3」を新設。1月に1回2点の加算を行う

施設基準について

以下、①~③の事項を当該医療機関・薬局の見やすい場所及びホームページ等に掲示している事が基準となります。

①オンライン請求を行っていること
②オンライン資格確認を行う体制を有していること
③②の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行う事について、当該保険医療機関の見やすい場所及びホームページ等に掲示していること

※①は令和5年12月31日までにオンライン請求を開始することを地方厚生局長等に届け出た場合は要件を満たしたものとする

算定要件について

上記①~③の体制を有していることについて掲示するとともに、必要に応じて患者に説明を行うことが必要です。厚生労働省では特例措置の適用にあたって、具体例として記載する内容を以下のように公表しています。自院・自局で追加すべき内容はどれか、事前に確認しておきましょう。

<具体例>


(参照:厚生労働省 令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置等について)

医薬品の安定供給問題を踏まえた診療報酬上の特例措置

特例措置として以下の診療報酬に加算が行われます。下記の表に詳細をまとめていますので、併せてご覧ください。

<対象報酬>

※特別調剤基本料を算定している場合は80/100に相当する金額

追加の施設基準について

①一般名処方加算

薬剤の一般的名称を記載する処方箋を交付する場合は、医薬品の供給状況等を踏まえつつ、一般名処方の趣旨を患者に十分説明することについて、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること

後発医薬品使用体制加算

a) 後発医薬品使用体制加算に係る届出を行っている保険医療機関であること
b) 医薬品の供給が不足等した場合に当該保険医療機関における治療計画等の見直しを行う等適切に対応する体制を有していること
c) a及びbの体制に関する事項及び医薬品の供給状況によって投与する薬剤を変更する可能性があること及び変更する場合には入院患者に十分説明することについて、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること

③外来後発医薬品使用体制加算

a)外来後発医薬品使用体制加算に係る届出を行っている保険医療機関であること
b)医薬品の供給が不足した場合に、医薬品の処方等の変更等に関して十分な対応ができる体制が整備されていること
c)a及びbの体制に関する事項並びに医薬品の供給状況によって投与する薬剤を変更する可能性があること及び変更する場合には患者に十分に説明することについて、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること

④地域支援体制加算

a)地域支援体制加算に係る届出を行っている保険薬局であること
b)後発医薬品調剤体制加算に係る届出を行っている保険薬局であること
c)地域の保険医療機関・同一グループではない保険薬局に対する在庫状況の共有、医薬品融通などを行っていること
d)③に係る取り組み※を実施していることについて当該薬局の見やすい場所に掲示していること

※取り組み例
・地域の薬局間での医薬品備蓄状況の共有と医薬品の融通
・医療機関への情報提供(医薬品供給の状況、自局の在庫状況)、処方内容の調整
・医薬品の供給情報等に関する行政機関(都道府県、保健所等)との連携

(参照:厚生労働省 令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置等について


オンライン資格確認の現状

いよいよ4月から原則義務化されるオンライン資格確認ですが、現在どのくらいの医療機関が導入を進めているのか気になるかと思います。厚生労働省より1月29日時点の導入率が公表されていますのでご紹介します。

<医科診療所>
<歯科診療所>

<薬局>
(参照:厚生労働省 オンライン資格確認の都道府県別導入状況について

薬局での導入率はおよそ70%前後ですが、医科・歯科診療所の導入率は30~40%程度にとどまっています。厚生労働省はやむを得ない場合に限り、以下の経過措置を講じることを公表しています。システムの導入開始期限が間近に迫っていますので、慌てることなく早めの準備を進めていきましょう。

<やむを得ない事情>

①令和5年2月末までにベンダーと契約締結したが、導入に必要なシステム整備が未完了の保険医療機関、薬局(システム整備中)
期限:システム整備が完了する日まで(遅くとも令和5年9月末まで)
※医療情報化支援基金による補助の拡充措置は、令和5年9月末事業完了まで継続

②オンライン資格確認に接続可能な光回線のネットワーク環境が整備されていない保険医療機関、薬局(ネットワーク環境事情)
期限:オンライン資格確認に接続可能な光回線のネットワークが整備されてから6か月後まで
※医療情報化支援基金による補助の拡充措置は、令和6年3月末事業完了まで継続

③訪問診療のみを提供する保険医療機関
期限:訪問診療のオンライン資格確認(居宅同意取得型)の運用開始(令和6年4月)まで
※訪問診療等におけるオンライン資格確認の導入に係る財政支援は、令和6年3月末補助交付まで実施

④改築工事中、臨時施設の保険医療機関、薬局
期限:改築工事が完了するまで、臨時施説が終了するまで
※令和5年2月末までに契約し、令和5年9月末までに事業完了の場合には、医療情報化支援基金による補助の拡充措置の対象

⑤廃止・休止に関する計画を定めている保険医療機関、薬局
期限:廃止・休止まで(遅くとも令和6年秋まで)
※令和5年2月末までに契約し、令和5年9月末までに事業完了の場合には、医療情報化支援基金による補助の拡充措置の対象

⑥その他特に困難な事情がある保険医療機関、薬局(例外措置又は①~⑤の類型と同視できるか判断)
期限:特に困難な事情が解消されるまで
※令和5年2月末までに契約し、令和5年9月末までに事業完了の場合には、医療情報化支援基金による補助の拡充措置の対象

(参照:厚生労働省 令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置等について
※上記のほか、患者から電子資格確認を求められた場合に応じる義務として、訪問診療棟・オンライン診療の場合の経過措置(居宅同意取得型の運用開始(令和6年4月まで)を設ける

調剤薬局での保険証提示について

オンライン資格確認の導入により、保険証を提示することで患者の保険資格情報をその場で確認できるようになります。これにより、患者の中には「病院や診療所で資格情報を確認したのに、何で薬局でも同じことをしなければいけないのか」と提示を拒む方も出てくるかもしれません。オンライン資格確認を導入した後、保険証はどう取り扱うべきかご紹介します。

まず、患者はなぜ薬局で保険証を提示しなければならないのでしょうか。「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」の第三条にはこのような記載があります。

(処方箋の確認)

第三条 保険薬局は、被保険者及び被保険者であつた者並びにこれらの者の被扶養者である患者(以下単に「患者」という。)から療養の給付を受けることを求められた場合には、その者の提出する処方箋が健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「法」という。)第六十三条第三項各号に掲げる病院又は診療所において健康保険の診療に従事している医師又は歯科医師(以下「保険医等」という。)が交付した処方箋であること及びその処方箋法第三条第十三項に規定する電子資格確認又は患者の提出する被保険者証によつて療養の給付を受ける資格があることを確認しなければならない。

薬剤師の立場から見ると、患者に対して保険証又は処方箋の提示を求め、内容を確認する義務があります。一方、患者の立場はどうでしょうか。「健康保険法施行規則」の第五十三条にはこのような記載があります。

(法第六十三条第三項の厚生労働省令で定める方法)

第五十三条 法第六十三条第三項の厚生労働省令で定める方法は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるもの(被保険者が法第七十四条第一項第二号又は第三号の規定の適用を受ける場合(当該適用を受けることについて、保険医療機関等(法第六十三条第三項各号に掲げる病院又は診療所をいう。第九十八条の二第七項、第百三条の二第五項及び第六項、第百五条第四項及び第五項並びに第百六条第一項を除き、以下同じ。)、保険薬局等(法第六十三条第三項各号に掲げる薬局をいう。以下同じ。)又は指定訪問看護事業者(法第八十八条第一項に規定する指定訪問看護事業者をいう。以下同じ。)において、電子的確認(保険者に対し、被保険者の資格に係る情報(保険給付に係る費用の請求に必要な情報を含む。)の照会を行い、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により、保険者から回答を受けた当該情報により確認することをいう。以下同じ。)を受けることができる場合を除く。)にあっては、当該各号に定めるもの及び高齢受給者証)を提出する方法とする。

一 保険医療機関等から療養を受けようとする場合又は指定訪問看護事業者から指定訪問看護(法第八十八条第一項に規定する指定訪問看護をいう。以下同じ。)を受けようとする場合 被保険者証

二 保険薬局等から療養を受けようとする場合 被保険者証又は処方せん

2つの条文をまとめると、薬局側に保険資格の確認義務はあるが、それが必ずしも保険証でなくてもよいということになります。そのため、患者側の保険証の提示拒否は決して違法なものではないのです。

しかし薬局側の立場で考えると、保険証の提示拒否には大きな危険が潜んでいます。それは、薬局からの保険請求が行えない可能性があるという事です。薬局は患者の来院後に、保険番号をもとに保険請求を行います。もしこの保険番号が誤っていたら、薬局側は保険請求を行えません。またこの他にも、

②処方箋の記載の誤り
③保険証の期限切れ
④助成金などの適用判定

などの懸念もあります。

特に②についてはオンライン資格確認を導入していない医療機関の場合、資格情報を人の手で確認しています。そのため処方箋の記載事項に誤りがないか十分な確認が必要です。

オンライン資格確認で手続きの簡略化が進みますが、自身の薬局を守るためにも、健康保険証の確認は怠らないことをおすすめします。

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