BLOG

専門家によるブログ

病院・医院経営ブログ

決算賞与でつなげるクリニックの将来

記事作成日2026/06/24

X
facebook
copy

2026年度診療報酬改定では、物価・賃金水準の高騰への対応が図られました。中でもベースアップ評価料の算定による収益は人件費のベースアップへの充当が必要とされているため、職員の給与をどのようにしていくか、先生方にとっては悩ましい点だと思います。

そこで今回は、今後の医院経営にもつながる対策として「決算賞与」について解説します。決算賞与は、職員のモチベーション向上と節税の両面で活用でき、今後の医院経営にもつながる有効な対策です。ぜひ検討されてはいかがでしょうか。

決算賞与とは何か

決算賞与とはその年度の業績を見てクリニックの裁量で支給する臨時的な賞与をいいます。支給金額の制約は特になく、自由に決定することが可能です。

決算賞与を支給することによる効果

クリニックの好業績を職員に還元する決算賞与は、職員のモチベーション向上と節税の両面で効果が期待できます。職員の労働意欲が高まり、離職を防止して定着率が向上すれば、余分な採用コスト・教育コスト・引継ぎ業務などが不要となり、人材不足対策にもつながります。

・職員へ利益を還元し、持続的なモチベーションの向上を図る

賃上げや一時的な賞与支給は、支給直後の労働意欲を高める効果はありますが、中長期的にモチベーションを持続させるには、さらに一歩踏み込んだ対策が必要です。
その点、患者数が増えたこと等による増収を職員に還元する決算賞与なら、日々の頑張りがクリニックの成長と自身の利益につながることを実感でき、クリニックに対する愛着心、貢献意欲を高め、クリニック全体の一体感を生み出す動機付けとなり得ます。

・一定の場合には決算賞与をベースアップによる賃金増加分に充てられる

ベースアップ評価料制度の難しい点は「職員への賃上げは毎月固定であるのに対し、月々変動する算定収入を確実に職員に還元できるかどうか」という部分ではないでしょうか。

ベースアップ評価料制度の趣旨は毎月の定期的な給与引上げにあるため、賞与でまとめて還元する使い方は原則認められていません。しかし、当初の想定を上回る算定収入があった場合など、一定の条件に該当するときは、余剰分の原資を臨時的に還元することが可能です。詳細は下記「ベースアップ評価料との関係」にて解説します。

・決算賞与を今年度の経費にすることで、利益が圧縮され税金が少なくなる

業績が好調で利益が大きく計上される場合には儲けに対してかかる税金はどうしても大きくなります。決算賞与は利益を税金として納める代わりに職員に還元することで利益が圧縮され税金を軽減できます。

・職員の賃金を増やした場合に受けられる節税制度を利用できる可能性が高まる

政府は「成長と分配の好循環」の実現に向けて事業で得た収益を職員に還元するよう賃上げの促進を目的とした節税制度を設けています。
この制度は、前年度に比べて給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を税金から控除できる節税制度です。なお、給与等増加の判定対象となる賃金には、職員への決算賞与も含まれます。

ベースアップ評価料との関係

ベースアップ評価料の算定で得られる収入は、職員のベースアップ(基本給など賃金水準の引上げ)に充てる必要があり、その収入額を充てることのできる賃金の範囲は基本給等の引上げ、その引上げに付随して増加する賃金等とされています。

(ベースアップ評価料で得た算定額を充てることのできる賃金の範囲)

・毎月きまって支払われる基本給等の引上げ
・上記の基本給等を引上げたことで増加する賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分を含む。)
・恒常的に夜間を含む交代勤務をとっている職場の夜勤手当

一時的に支払われる臨時手当や業績に連動して引き上がる賞与などは算定額を充てられる賃金には該当せず原則対象外とされています。しかし、患者数等の変動等によりベースアップ評価料で得た収入が当初想定していた職員への支給額を上回り、追加のベースアップが困難な場合に支給する賞与などは、この限りではないとされ例外的に認められています。

※例外的に認められる賞与などを支給することで、もともとベースアップを行う予定の支給水準を低下させてはなりません。

制度の趣旨に沿い基本給などのベースアップを行うことが前提ですが、条件に該当する場合には、決算賞与として支給する賃金を、ベースアップ評価料で算定した収入の還元に充てることが可能です。

クリニックの経費となるタイミング

決算賞与が税金の軽減にはたらくとお伝えしましたが、決算賞与を経費に計上できるタイミングにはルールがあります。決算賞与をその年度の経費とするためには、以下の原則・例外に注意して支給を検討する必要があります。

原則

決算賞与を経費にできるタイミングは、実際に支給した年度です。翌年度に支給した場合は翌年度の経費になり、今年度の経費にしたい場合は、決算日まで(個人開業医の先生は12月31日まで)に支給が必要です。

例外

ただし、次の要件の全てを満たすことで翌年度に支払う決算賞与を今年度の経費にできます。

要件

翌年度に支払う決算賞与を今年度の経費に計上するためには次の3要件を満たす必要があります。

・決算日までに対象者全員へ支給額を個別に通知する
・通知した金額を、通知した全員に決算日の翌日から1か月以内に支払う
・今年度の会計処理で決算賞与を処理している

また、就業規則・賃金規定などクリニックの規定で「賞与の支給対象者を支給日の在職者のみ」としていないことが必要です。決算日から賞与支給日までの間に結果として退職者が出なかったとしても、決算日時点で支給対象者が変わる可能性がある規定では要件を満たさないことになります。

賃上げ促進税制

賃上げ促進税制は、前年度より職員の賃金を増加させた場合に税金の控除を受けられる制度です。職員に支給する決算賞与はこの制度の対象となる賃金に該当するため、支給することで制度の適用に期待ができます。

決算賞与を活用することで、次のような好循環を生み出すことが可能です。

① 決算賞与を支給する

② 税負担が軽減される+賃上げ促進税制も活用できる

③ 職員の勤労意欲が高まる

④ クリニックの業績がさらに向上する

⑤ 翌年も決算賞与を支給できる(①に戻る)

このサイクルを繰り返すことで、クリニックの成長と職員の満足度向上を同時に実現できます。

おわりに

決算賞与の支給は、これからの医院経営につながる効果に期待が持てます。報酬改定で大きく取り上げられるベースアップ評価料、賃金を増やした場合などに受けられる節税制度と組み合わせ、クリニックの経営基盤を強化しつつ、職員がクリニックへの思い入れを深め、長く共に歩んでいける関係性を築いていきましょう。