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相続税の税務調査で知っておきたいポイント

記事作成日2018/08/31 最終更新日2018/09/04

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「税務調査」という言葉がありますが、相続税にも税務調査が入るものなのでしょうか?

こちらでは、相続税を申告した後に税務調査が入るのかどうか、もし入るとしたら調査対象者はどんな人なのかをご説明します。

相続税と税務調査で知っておきたいポイントをみていきましょう。

■相続税でも税務調査が入ることはあるのか

 相続税とは、相続が発生してから10か月以内に申告をして納める税金です。

そして申告後の翌年もしくは翌々年の秋ごろに、税務署のほうから相続税の金額が正しいかかどうかのチェックが入ります。

いわゆる「相続税の税務調査」が行われ、相続税申告者の約4人に1人が調査対象に選ばれているのが現状です。

また、税務調査対象者の8割以上に「追徴税(ついちょうぜい)」が発生しています。

平成28年度においては、平均追徴額は約900万円であり、相続税は税務調査が入りやすい分野とさえいわれています。

なぜここまで申告に不備が出やすいのかというと、相続税は複雑であり、専門知識が必要であるからです。

さらに相続税で厄介なのは、相続財産の正確な把握が出来ておらず、申告漏れがあった場合でも過少申告と判断されて、追徴課税や延滞税がかかる点です。

一方で、税金を払い過ぎても税務署は教えてくれず、過払い金の還付には再申告しなければなりません。

相続人は、きちんとした知識を身につけて相続税を納めることが求められます。

■相続税の税務調査の対象となりやすい人とは?

 相続税の税務調査の三大対象は、富裕層、無申告者、海外資産のある方です。

◇富裕層

相続財産2億円以上の富裕層は狙われやすいといわれています。

また、国税局には富裕層対策チームが存在しており、富裕層の申告内容や財産の移動を重点的にチェックしているのも現状です。

◇無申告者

財産を相続したのにもかかわらず、申告がなければ当然税務調査が入ります。

課税の公平を維持するために、国税局は無申告事案把握に向けての活動を積極的に行っているのです。

◇海外資産のある方

海外への送金が100万円を超える場合には、金融機関から税務署に「国外送金の調書」が提出されます。

海外資産の申告漏れが発生し、追徴税が課されるケースも多いので気をつけてください。

ほかにも、以下のケースは相続税の税務調査の対象となりやすいでしょう。

●遺産が高額である

●「申告書に記載した相続財産の額」と「税務署が把握している相続財産の額」に差が生じている

●死亡前に所有していた土地や株式などの売却代金が、申告財産に含まれていない、もしくは少ない

●生前5年以内に多額の預貯金が引き出されている

●生前にあった多額の退職金が申告書に含まれていない

●多額の借入金があるのに、それに見合った財産がない

●オーナー社長などで、会社に多額の借入金や貸付金がある

本来申告されるべきお金や株式、不動産などの情報が税務署に届いていない場合に、税務調査が行われる可能性が高まります。

■どのようなことを調査されるのか

 相続税の税務調査で確認されるのは、過去5年分のお金の使い道や、株式といった金融資産の実態などです。

「資産額が不自然に少なくないか?」といった観点から、調査が進められるでしょう。

また調査官は、税務調査時点の情報からさかのぼったり、相続財産の評価方法を計算し直したりして、正しい相続税の金額を定めます。

◇銀行預金情報

税務調査の時点における銀行預金残高から、お金の動きをたどっていきます。

「何を購入するために出金したのか?」「なぜ別の口座に移したのか?」などを質問しながら、相続開始時の残高を推測するのが一般的なやり方です。

◇生命保険情報

受け取った保険金の内容や、契約途中の名義変更情報をもとに、相続前までに交わしていた生命保険を判断します。

契約者が相続人であっても、保険料を負担していたのが亡くなった方であると、保険金は相続財産扱いになります。

こういった場合では受け取った保険金に追徴税が課されてしまうので、十分注意しましょう。

◇不動産情報

相続税が発生するかどうかは、一定額以上の固定資産からも推測できます。

また調査官は、不動産に対して小規模宅地等の特例などの特例措置が適用されていた場合に、その計算方法が適切かなどをチェックします。

特例措置の計算は、税務調査で修正を指摘されるケースが目立つところです。

税務調査が始まる前に、土地の権利証や不動産の契約書の準備をしておくようにしましょう。

■どのような相続財産まで見られるのか

銀行預金や生命保険、不動産以外にも、趣味の部分での相続財産の申告漏れがないかまで調査されます。

●ゴルフ会員権

●リゾート会員権

●骨董品

●美術品など

もし亡くなった方の趣味がゴルフだった場合、相続人はゴルフ会員権も相続財産として申告する必要があります。

なぜならば、ゴルフ会員権には「預託金(よたくきん)」という、会員登録時にゴルフ場に預けたお金が存在するからです。

また、預託金は会員権を相続した人に返ってくるお金になります。

調査官から「亡くなられた方は、何か趣味をされていましたか?」と聞かれて、「ゴルフが大好きな方でした」と答えれば、まず預託金の相続について質問されるでしょう。

会員権には預託金が付いていることが多く、申告漏れが目立つものなのです。

骨董品や美術品も価値のある品なので、相続財産の基礎控除額 を超えるようであれば相続税の申告を忘れずに行いましょう。

まとめ

税務調査の連絡が入っても、調査官が高圧的な態度をとるわけではありません。

財産の確認やお金の使い道を聞かれて、修正箇所があれば指摘される程度です。

しかし、相続税申告者の約4人に1人が調査対象であり、8割以上が平均約900万円もの追徴税を支払っているのも現状です。

相続税は専門知識を有する複雑な分野であるため、申告時には税理士に相談したほうがよいです。

もし相続税の申告済みであれば、税務調査が終わるまではむやみに相続のお金を動かさないか、税務調査が始まるまでに専門家とよく話し合っておきましょう。

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