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【税務コラム】役員の分掌変更に伴う退職給与について

記事作成日2017/07/27 最終更新日2021/10/13

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今回は、役員の分掌変更に伴う退職給与について、判例などを元に、退職給与として認められるケース・認められないケース、注意点などをご紹介します。

分掌変更とは?

役員の分掌変更により支給する退職金について、退職給与として取り扱うには定められた要件を満たす必要があるため、注意が必要です。また、損金算入の時期等も決められているため、これにも留意する必要があります。

 退職給与と認められるためには

法人税基本通達9-2-32によれば、「法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。」とされています。

その事実とは、通達によれば、以下のとおりです。

1.常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く)になったこと。

2.取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。

3.分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

つまり、分掌変更後も変更前と同様の職務を行っている等の、実質的に退職したと認められないような事実がある場合、退職給与として認められず、役員賞与となります。

また、分掌変更等の場合、原則として未払金として処理をした場合は損金として認められないこととなりますので、注意が必要です。

平成18年(2006年)の判例のケース

代表取締役が取締役会長や監査役に退いたとき、役員退職金を支払いが行われたが、実質的に退職していなければ否認されるケースがあります。

裁判所は退職後も業務の実態がそのままであり、主要な取引先への対応など重要な業務を行い、常勤の取締役として、新代表取締役と同額の報酬を得ていたということから退職したとは認められないとしました。

退職給与の損金算入の時期

役員に対する退職給与の損金算入の時期については、法人税法基本通達9-2-28において定められており、これによれば、「退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする。ただし、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額につき、損金経理をした場合には、これを認める。」と、されています。

つまり、その金額が確定した事業年度に退職金を実際に支払い、損金経理をした場合に退職金が損金として認められることとなります。未払い状態では認められず、分割払いの場合だと注意が必要です。

退職給与の妥当な金額とは?

退職金の金額についても、過大と判断されると否認されてしまうリスクがあるため、その金額の決定には細心の注意が必要です。

一般的には功績倍率による算定方法がよく採用されますが、この功績倍率をいくつにするかによって、金額が大きく変動してくるため、功労加算金を出すかどうか等も含めて、慎重に判断する必要があります。

功績倍率法は、一般的には、下記のような算式を使用します。

最終報酬月額×役員勤続年数×功績倍率

この支給を受けた役員側では、当然退職所得として所得税が課税されるため、包括的なプランニングを行ったうえで、退職金を支給するのが理想的です。

分掌変更による税務リスクを洗い出すには?

税務調査はしっかりとした準備を行うことが重要です。今後退職金の支給を予定されていて、税務調査などで退職金として認められなくなった場合の税務リスクについて把握しておくことは大事です。

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