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オープンイノベーション促進税制について

記事作成日2020/08/24 最終更新日2020/08/24

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令和2年度の税制改正にて、オープンイノベーション促進税制が創設されました。

今回は、オープンイノベーション促進税制の概要と、この制度を活用するための要件についてご説明します。

 

オープンイノベーション促進税制を理解するために、まずは、「オープンイノベーション」の意味をご説明します。

オープンイノベーションとは、自社以外の組織などが持つ知識や技術を取り込んで、製品開発や組織改革など、新しい価値を創造するイノベーションを促進する方法です。

主な事例として、新しい技術や企画を求める企業と、支援・資本力を求めるベンチャー企業(スタートアップ企業等)が共同研究などで協業することがあげられます。

新たに創設されたオープンイノベーション促進税制は、スタートアップ企業への出資を促すことで、オープンイノベーションを拡大させることが目的です。単なる出資では節税できず、実際にオープンイノベーションを創出することが求められます。

 

では、オープンイノベーション促進税制の内容はどのようなものでしょうか。以下でまず概要を説明します。

 

1.概要

オープンイノベーション促進税制とは、青色申告書を提出する法人である一定の事業会社が、令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に、国内外のベンチャー企業の株式を出資の払込によって取得した場合(取得した日を含む事業年度末まで保有していること)、その取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理したときは、その事業年度の所得の金額を上限に、経理した金額に相当する金額を損金の額に算入することができるというものです。

本税制を受けるための要件として、対象法人、投資先であるベンチャー企業、出資のそれぞれが定められています。とても複雑ですが理解しやすいように、次に要件を5つの項目(A対象法人の要件、B投資先の要件、C出資の要件、Dオープンイノベーション性の要件、E経理に関する要件)に分けて具体的に説明します。

2.要件

A.対象法人の要件

本税制の適用対象法人は、青色申告書を提出する法人である一定の事業会社です。この一定の事業会社とは、以下の要件を満たす国内事業会社を指します。

① 新事業開発事業者と共同して特定事業活動を行うこと

②  株式会社、相互会社、中小企業等協同組合、農林中央金庫、信用金庫及び信用金庫連合会であること

①に関しては、簡単に言うと、スタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指している事業会社ということです。

また、以上の①、②を満たす青色申告法人が、一定の要件を満たすCVC(投資事業有限責任組合又は民法上の組合でかつ、上記①、②を満たす青色申告法人の出資比率が過半数を占めているCVC)を経由して出資をした場合も、本税制の対象となります。

以上が、本税制の適用対象法人となります。

 

B.投資先の要件

本税制が適用を受けるためには、以下の要件を満たす国内外のベンチャー企業に出資する必要があります。

① 株式会社

② 設立10年未満

③ 未上場・店頭売買有価証券登録原簿に登録されている株式の発行者である会社以外の会社

④ 既に事業を開始している

⑤ 対象法人とのオープンイノベーションを行っている又は行う予定

⑥ 1 つの法人グループが株式の過半数を有していない

⑦ 法人以外の者が3分の1超の株式を有している

⑧ 風俗営業又は性風俗関連特殊営業を営む会社ではない

⑨ 暴力団員等が役員又は事業活動を支配する会社ではない

 

C.出資の要件

以下の要件を満たす出資が、本税制の適用対象となります。

① 資本金の増加を伴う現金による出資であること

② 1件当たり1億円以上の出資であること(対象法人が中小企業の場合1000万円以上、スタートアップ企業が外国法人の場合一律5億円以上)

③ オープンイノベーションに向けた取り組みの一環で行われる出資であること

④ 取得株式の5年以上の継続保有を予定していること

⑤純出資等(※)を目的とする出資ではないこと

(※)純出資等とは、以下を目的とした出資を指します。

・スタートアップ企業の株式を将来売却することにより利益を受けること

・スタートアップ企業から将来配当を受けること

・ 投資契約を結んだ後、スタートアップ企業への継続的関与を伴わずにスタートアップ企業から利益(物品リース料、不動産賃貸料、金融商品等の取引による運用益など)を受けること

 

D.オープンイノベーション性の要件

先述しましたが、本税制の目的は、オープンイノベーションを促進することにあります。そのため、本税制を適用するためには、経済産業省より、オープンイノベーション性があるかどうかの証明が必要となります。以下の3つがオープンイノベーション性の判断基準となります。

① 対象法人が、高い生産性が見込まれる事業または新たな事業の開拓を目指した事業活動を行うこと

② ①の事業活動において活用するスタートアップ企業の経営資源が、対象法人にとって不足するもの、かつ革新的であること

③ ①の事業活動の実施にあたり、対象法人からスタートアップ企業にも必要な協力を行い、その協力がスタートアップ企業の成長に貢献するものであること

このオープンイノベーション性はとても大切な内容ですので、慎重に検討しましょう。

 

E.経理について

最後に、経理についてご説明します。

本税制では、取得株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定として経理する必要があります。また、対象法人は、その株式の取得の日から5年間は特別勘定を維持する必要があります。そのため、5年以内に対象法人が任意に特別勘定を取り崩した場合、その取り崩した金額を、取り崩した事業年度の税務申告において益金算入する必要があります。この特別勘定を取り崩した場合とは、

・取得株式につき配当を受けた場合

・取得株式の帳簿価額を減額した場合

などがあたります。

 

まとめ

今回は、オープンイノベーション促進税制についてご説明しました。とても要件が多く、複雑なものですが、最も重要なのは、オープンイノベーション性があるかです。先述した要件に当てはまれば、最大で取得株式の25%の金額の所得控除を受けられます。実際にオープンイノベーションを目的としたスタートアップ企業への出資を検討されている方は、令和4年3月31日までに実行されてみてはいかがでしょうか。

 

TOMA税理士法人では、税制改正や新型コロナに関する補助金等、様々な相談を承っております。また、オープンイノベーション性に関するご相談も承っております。

 

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