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配当還元方式を活用した事業承継の方法とは

記事作成日2020/01/29 最終更新日2021/01/22

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事業承継を行う際、悩みの一つとなるのが節税対策です。配当還元方式とは、節税に関係してくる自社株評価額が比較的低く出る評価方式です。

配当還元方式とはどんなものか、どういう場合に使えるのか等、詳しくご紹介していきます。

■配当還元方式による株価の評価とは

 まずは、配当還元方式の定義やその計算方法、利用できる場合についてご紹介していきます。

◇定義・計算式

事業承継や株式相続の際、財産価値があるもの全ての評価額の算出が必要になります。その際、株式の評価額の算出に使える方式が3種類あり、配当還元方式はそのうちの一つです。

配当還元価格を求める計算式は以下となります。

 配当還元価格

=(1株あたりの過去2年間の平均配当金額/10%)×(1株あたりの資本金等の額/50円)

ここでいう「1株あたり」とは、株式数=「資本金額÷50円」とみなして計算しています。これは、資本金が同じ会社でも発行株式数が違うと、計算結果に影響してしまうためです。

なお、利益がない場合や配当がない場合、配当還元価格が0円以下になる場合もあります。その場合は1株2.5円として計算することとなっています。

株式の評価額の算出に使える方式には、他に「純資産価額方式」「類似業種比準方式」があり、それぞれ計算の仕方や利用できる場合に違いがあります。配当還元方式の特徴は、「比較的低い価値評価額が出るため、節税対策につながりやすい」という点です。しかし、配当還元方式は少し特殊な方式であるため、使える場合が限られています。

◇どういう場合に使えるか

配当還元方式は、「配当金をもらうためだけに使われている株式」の評価額を計算する際に使われます。つまり、経営権を行使するために使われている株式等については、配当金以外の目的があるためこの方式は使えないことになります。

具体的には、以下のような場合において、それ以外の「経営に大きな経営権を持たない株主」の所有している株式について、配当還元方式が使用できます。

・全体の半数を超える株式を持つ同族の関係者グループがいる場合

(ここでいう「同族の関係者グループ」とは、配偶者・親子などの「互いに親密とみられる集団」のことを指します)

■配当還元方式を活用した事業承継の方法とは

 事業承継の際、節税対策になる配当還元方式の活用は、非常に有効といえます。しかし、大株主の所有する株式には配当還元方式が使えないため、あまり活用できないとお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その場合でも、より多くの株式に配当還元方式を適用できるよう、工夫することが可能です。では、実際にどういう工夫をすればよいのか、以下でみていきましょう。

 ◇従業員持株会を作る

経営者がほぼ自社株を持っている場合、「従業員持株会」を設立し従業員に自社株を一部売却すれば、自社株の評価額が下がり節税につながります。

従業員側も利益に応じて配当金が得られ資産形成ができるので、win-winの関係が作れるといえるでしょう。

しかし、売却しすぎると経営権が揺らぐ・配当金が下がると従業員の士気も下がるなどデメリットもありますので、慎重な売却が必要とされます。

 ◇役員持株会を作る

同族ではない役員が後継者として事業承継する場合に、配当還元方式を使える「同族の関係者グループ」でない役員を集めた持株会を作り、自社株を一部売却する方法です。

こちらのメリットデメリットも従業員持株会とほぼ同様です。経営実権を握られないよう売却量に気をつければ、役員とのwin-winの関係が作れ、節税効果も得られるといえるでしょう。

 まとめ

事業承継を行う際、配当還元方式を活用することで効果的な節税効果が得られます。具体的には、従業員持株会や役員持株会を組織し、自社株を一部売却することで活用可能です。ただし、不当な税金逃れと判定されないためにも、専門家への事前の相談が重要です。

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