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相続時精算課税を利用した事業承継

記事作成日2020/02/05 最終更新日2021/01/22

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お金をかけずに財産を引き継がせる方法をご存じでしょうか?財産の受け取りには、「死亡時の相続」と「生きているうちの贈与」の2パターンがあります。一般的にはどちらのケースも税金(相続税、贈与税)が発生しますが、相続時精算課税を活用すれば余計な税金を支払わずに済みます。

こちらでは事業承継にも役立つ、相続時精算課税の活用方法をみていきましょう。

■相続時精算課税とは

相続時精算課税とは、「2,500万円までの贈与した財産については贈与税がかからず、将来の相続時に当時の贈与額を加算してから、相続税の計算を行う」という税法の一つです。父母または祖父母(60歳以上)から、子どもまたは孫(20歳以上)へ財産を贈与した場合に選択できる制度であり、税務署への届出書の提出が必要です。贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに、申告書を提出しましょう。

もし申告を行わない場合は、通常の生前贈与である「暦年贈与課税」により贈与額を計算します。そして暦年贈与課税では、110万円までの財産が非課税対象です。

ちなみに、相続時精算課税と暦年贈与課税の算式は以下のとおりです。

・相続時精算課税の算式

(課税価格-特別控除額2,500万円)×税率=納める税金

・暦年贈与課税の算式

(取得した財産-基礎控除額110万円)×税率=納める税金

もし2,500万円の財産を親から子に贈与した場合、相続時精算課税では贈与税がかからず、暦年贈与課税では45%の税率(特例税率)がかかります。なお、相続時精算課税の場合、2500万円を超える部分については20%の贈与税がかかります。

■相続時精算課税を利用した事業承継

相続時精算課税は、「親から子の世代への贈与をスムーズに行えること」を目的としています。事業承継においても、相続時精算課税の制度を利用することで、早いうちに財産を移行できます。

さらに、将来の相続税対策につながるのも魅力です。例えば、値上がりする可能性が高い財産の場合をみていきましょう。もし2,500万円の財産を贈与した後に、相続金が1億円になったとしても、相続時に持ち戻す贈与額は2,500万円で問題ありません。値上がりが確実な財産があれば、相続時精算課税の制度を活用してみてください。

また、平成27年から対象者の範囲が広がった点でも事業承継に向いています。法改正により、贈与者の年齢が65歳から60歳に引き下げられました。また、財産をもらう側では、子どものほかに孫も対象となっています。さらに、贈与してくれる人ごとに相続時精算課税制度を選択できる点も強みといえます。現経営者である親の財産には相続時精算課税を利用して、親戚の財産には選択せずに暦年贈与課税を適用させるといったことが可能です。

■相続時精算課税のメリット・デメリット

ここでは、相続時精算課税の4つのメリット、3つのデメリットをまとめてあります。

◇4つのメリット

・2,500万円までは非課税の贈与ができる

・早期に多額の財産を贈与できる

・値上がりしそうな財産を贈与すれば、相続税対策になる

・相続争いを防げる

2,500万円を超えた贈与は一律で20%の贈与税が発生します。相続時に相続税が発生しないのであれば、大いにメリットがあります。また値上がりする財産を保有し続けると、相続税が増加してしまいます。早めに贈与しておき、値上がり分の相続税を節税しましょう。

ほかにも、相続させたい財産を将来の相続人に生前贈与しておけば、候補者との財産の取り合いになることを防ぐ効果があります。

◇3つのデメリット

・一度選択したら撤回できない

・申告の手間が増える

・暦年贈与課税を併用できない

相続時精算課税制度選択届出書を一度提出すると、撤回できません。また相続時精算課税では、いったん選択すると贈与者が亡くなる時まで継続して適用されます。さらに、基礎控除額の110万円を差し引く暦年贈与課税の計算に、途中で変更することもできません。そのため、相続時精算課税を適用する際には、事前に十分検討してください。もし不安であれば、専門家に相談することも大切です。

■まとめ

2,500万円までの贈与であれば税金がかからない、相続時精算課税。相続税の計算の際には、当時の贈与額を踏まえたうえで行われます。事業承継のように事前準備が必要な手続きの場合、前もって相続しやすくなるのは魅力といえます。値上がりする可能性が高い財産の場合にも効果があるため、ぜひ活用してみてください。

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