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事業承継をせずに廃業する場合の注意点

記事作成日2020/02/06 最終更新日2021/01/22

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事業承継をせずに、自分の代で事業を廃業する人も増えています。事業承継ではなく廃業をするにあたってはデメリットも多いため、注意が必要です。

■事業承継できず廃業が増えている背景

 廃業が増えていることには、いろいろな背景があります。

◇中小企業の経営者の高齢化

1980年代には30代、40代が多くを占めた自営業ですが、日本全体の高齢化に伴って経営者の高齢化も避けられない事態となっています。総務省の調査によると、2012年には70歳以上の割合がもっとも増えており、経営者が高齢化している現状が見てとれます。

◇事業承継する人材不足

中小企業庁の調査によれば、事業承継が円滑に進まなかったと考えている人の約22%が、適当な後継者が見つけられなかったと回答しています。従業員として働いている人や親族であっても、適切な人材が見つかりにくいということが、廃業の背景にあります。

◇経営状況の悪化

事業承継を希望し、適切な人材を見つけられることもあります。しかし、経営状況が悪化しており、将来的にも回復する見込みが厳しいと判断されるために、後継者候補がなかなか現れず事業承継ができないケースもあります。

◇承継には時間もコストもかかる

事業承継を円滑に進めるためには、後継者に対してさまざまな教育を行う必要があります。また、会社の理念や習慣、従業員との信頼関係の構築などを考えると、事業承継には少なくとも数年から10年はかかるのが一般的です。

人材などの事業承継の条件が整っていたとしても、実際に後継者に承継するまでには時間もコストもかかるため、そのコストを考えると自分の代で廃業したほうがよいと考える経営者も少なくありません。

■廃業時の注意点

 事業承継を進めるにはいろいろなハードルがあるため、廃業を検討している経営者もいます。しかし、廃業することにもリスクやデメリットがつきまといます。

◇従業員を解雇しなければならない

従業員を雇ってある程度の規模で会社を経営していたのなら、廃業に伴って従業員を解雇しなければなりませんが、その際には退職金の支払いが生じます。

◇事業の中止

廃業に際しては、事業を中止しなければなりません。プロジェクト形式の事業であればプロジェクトの終了を待って廃業するという方法もありますが、小売店や継続的な取引のある事業であれば、廃業にあたって取引先との調整なども生じます。

◇資産の目減り

廃業するとなれば、会社の設備や商品在庫などを処分することになります。これらが効率よく現金化できればよいですが、大抵の場合、資産価値はかなり目減りします。また、建物の取り壊しなどの処分に際して費用がかかるものもあり、廃業に伴って出ていく資金は少なくありません。

■廃業後の経営者の就業状況

中には再起業や再就職する経営者もいますが、中小企業庁の調査によれば、事業承継をせずに廃業した経営者の63.6%以上が、その後就業する予定はないと回答しています。経営者が高齢化していることも、この結果に影響しているものとみられます。

同調査によると、廃業後には時間のゆとりができた上に不安やストレスが減少したと感じている経営者も多くいますが、反面生活が苦しくなったと感じる経営者も一定数はいます。その原因は一概には特定できませんが、廃業に伴う資産の減少が影響している可能性は否定できません。

■まとめ

事業の承継にもコストや時間がかかるといった点はありますが、廃業をするにしてもデメリットがあるのは変わりません。もしも廃業しようか事業承継をしようかと悩んでいるのであれば、事業承継が可能な状況のうちに、専門家に相談して第三者の判断を聞いてみてはいかがでしょうか。

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