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事業承継における覚書の重要性とは

記事作成日2020/01/31 最終更新日2021/07/30

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会社の経営において、契約や約束を取り交わすのはとても大切なこと。事業承継の際にも重要ですが、「覚書」という文書でやり取りしたほうがよいです。では、なぜ覚書を書くことが求められるのかご存じですか?契約書や合意書ではいけないのでしょうか?

事業承継における覚書の重要性について、ご紹介します。

■覚書・契約書・合意書などの違いとは

まず最初に、覚書・契約書・合意書という、3つの文書の違いをみていきましょう。

◇覚書

覚書とは、「ある出来事を記録し、伝達するための文書」を指します。契約書を作成する前に当事者間が合意した内容について、書面化しておきたいときに便利です。また契約書作成後でも、新たに約束ごとを追加するときに利用できます。

覚書は契約書の補助的役割ではあるものの、法的にも効力を持つ書類となります。

◇契約書

契約書は、「お互いの意思が一致したときに、権利と義務が発生する」という文書です。口約束でも契約を成立させることはできますが、記録として残っていないとトラブルや訴訟につながってしまいます。

契約書には、損害リスクを避けてビジネスを円滑にする役目があります。約束が守られないときの違約金など、取引条件を明確にできるのが魅力です。

◇合意書

合意書は、「協定書」とも表現されるものです。契約の終了が決まったとき、もしくはトラブルを解決したとき、どのような話し合いで落ち着いたのかという証拠として用います。

また合意書では、以下の場合に必要となります。

・契約時に決まらなかった取引条件を話し合う
・契約時に想定できなかった事態に対処する
・不法行為などで損害を受けて、相手に責任を認めさせる

社会の約束ごとは、契約書が基本となります。覚書は契約書作成を前提として作成し、合意書(協定書)は契約書に記載がなくても効力を発揮します。

■事業承継における覚書の重要性

解釈の違いにより契約内容が不明確になりそうなときこそ、覚書が役立ちます。トラブルになりうる事項について、共通認識を確認しておくのが覚書の目的です。

特に事業承継では、現経営者と後継者の間で取り決めることが多いでしょう。また、会社の仕組みや従業員の雇用状況に変化が起きる場合もあります。他にも、取引先や金融機関との調整についても、何かと約束ごとが出てくるはずです。

「契約書を交わすまでの間に義務をはっきりさせたい」「社内のルールなので契約書を交わすほどでもない」といったときに、覚書を活用しましょう。

■覚書にはどういう項目を記載するか

ここでは、覚書に記載しておきたい項目と例文をご紹介します。なお、甲は事業を譲渡する側、乙は事業を継承する側としています。

◇事業譲渡

乙は、首都圏に展開する○○という事業を、甲に事業譲渡する。

◇事業譲渡の時期

甲および乙は、平成○年×月△日を目処に事業譲渡する。

◇譲渡条件

1.乙は、甲に○○社の事業をすべて譲渡する。
2.甲は、当該事業における各支店の従業員を可能な限り継続雇用する。

◇資産等の譲渡

乙の事業に関する資産すべてを譲渡対象とする。

◇負債の譲渡

甲は、乙の事業に関する借入金・買掛金・リース・その他負債のすべてを引き受ける。

◇調査と資料提供

甲は事業を引き受けるにあたり、必要な調査を乙に行うことができる。

◇守秘義務

甲および乙は、本件事業譲渡に関する一切の情報を他者に漏らさない。

◇協議事項

本覚書に定めのない事項および疑義を生じた事項については、原契約の定めによるものとする。原契約に定めのない場合は、甲、乙および丙の三者が誠意をもって協議し解決にあたるものとする。

◇解除条件

合理的な理由により協議が整わない場合、甲および乙は本合意事項に関して解除を申し込むことができる。

■まとめ

契約と約束の違いは、とても曖昧なものです。契約書に記載されていない部分については、覚書や合意書を用いてください。

また、覚書に記載のない項目については、基本的には契約者同士の協議で解決して、どうしても決着がつかないときに裁判所で話し合いましょう。覚書があれば、裁判所で争うのを未然に防ぐためにも役立ちます。

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