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事業承継で必要となる契約書とは

記事作成日2020/02/07 最終更新日2021/01/22

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事業承継には、大きく分けて以下の3つのパターンがあります。

・親族内の事業承継

・役員や従業員への事業承継

・社外の第三者への事業承継[M&A(事業譲渡)]

今回は、「M&A(事業譲渡)」で事業承継を行う際に必要となる契約書についてご紹介します。

■秘密保持契約書

 M&Aを行うにあたって、まず締結するのが秘密保持契約書(NDA)です。M&Aでは最も重要な契約書とすらいわれています。秘密保持契約書が必要な理由は大きく2つです。ひとつめは、M&Aを進めるにあたって知り得た情報を第三者に漏らされることを防ぐため。もうひとつは、M&Aを進めているという事実を漏らされることを防ぐためです。

◇知り得た情報を漏えいされないため

事業譲渡をする際には、買い手となる会社が「この会社の事業を買ってもいいのか」という判断を下せるよう、譲渡側は多くの情報を買い手となる会社に渡すことになります。

そのため、自社の重要な秘密情報を第三者に漏えいされる・不正に使用されるといった事態を防ぐために、秘密保持契約書の締結が必要となります。

◇M&Aの事実を漏えいされないため

M&Aを進めている段階でこの事実が社内や社外に漏れてしまったら、業績が悪化しているのでは、などとあらぬ憶測を生むことがあります。どのタイミングでM&Aについて従業員や社外に公開するのかについては、慎重にタイミングを計る必要があります。

そのため、不用意にM&Aを進めているという事実を漏らされないようにするためにも、秘密保持契約書を作成し、契約を締結しておくことは重要です。

■事業譲渡契約書

 M&Aを進めていく中では複数回にわたる話し合いが持たれ、適宜合意書を締結するのが一般的です。そして最終的に合意に至った段階で、最終契約書(事業譲渡契約書)を締結します。

ここでは事業譲渡契約書について解説します。

◇事業譲渡契約書に必要な項目

 事業譲渡契約書に入れ込んでおくべき項目には、以下のようなものがあります。

・事業譲渡の対象、事業譲渡の価格、支払い条件

事業譲渡は会社分割とは異なり、包括承継ではないため、何を譲渡するのかという事業譲渡の対象を明確にしておく必要があります。それに合わせて、事業譲渡の価格や支払い条件も明記しておきます。また、M&Aを進める中で合意した事項があれば、それについても記載しておきます。

・競業避止義務

クロージング後に譲渡側が競業避止義務を負う場合は、競業避止義務についても事業譲渡契約書の中で記載しておきます。

・表明保証条項

M&Aを進めるにあたっては、譲渡側も買主側も、相手方の多くの情報を必要とします。また、適宜合意書等を交わすことにもなりますが、これらの情報や合意書に書かれた内容が正確なものであることを示し、それを保証するための条項が表明保証条項です。

・補償条項

何らかの事由が生じたときに、一方に金銭などの補償を求めることができると定める条項が補償条項です。補償条項は損害賠償条項と呼ばれることもあります。実際にトラブルが起きてしまったときのリスク回避のために、できるだけ多くのケースを想定しておくことが重要です。

◇作成の際の注意点

事業譲渡契約書を作成する際には、できるだけ具体的に記載することが必要です。契約書の項目を細かく明記することで、相手方との認識のズレを減らすことができます。紛争を予防するという意味でも、内容については細かく記載しておきましょう。

また、事業譲渡契約書の内容と他の契約書でズレや矛盾がないかをチェックすることも必要です。

■まとめ

事業承継の方法のひとつであるM&Aでは、複数の契約書を締結することになります。中でも秘密保持契約書と、最終的に締結する事業譲渡契約書は特に重要です。作成する目的やポイントを明確にしておきましょう。

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