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事業承継での会社分割の活用方法

記事作成日2020/01/31 最終更新日2021/01/22

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「会社分割」をご存じでしょうか?会社分割を上手に活用すれば、事業承継の際にも大いに役立ちます。

ここでは、事業承継における会社分割についてご紹介いたします。事業譲渡との違いをみたうえで、実際に会社分割を行う流れまでみていきましょう。

■会社分割とは

会社分割とは、「株式会社もしくは合同会社が有する事業について、権利や義務を分割し、他の会社に承継させる」という手続きのことです。会社分割では、さらに「吸収分割」と「新設分割」に分かれます。

◇吸収分割

既存の会社に、事業の権利や義務を承継させるのが「吸収分割」です。不採算部門などを別会社に吸収させることで、スリム化および事業拡大を図れます。

◇新設分割

採算のとれている事業だけを切り出して、新たな設立会社に承継させるのが「新設分割」です。多額の債務や担保不動産を切り離すことで、企業再生につなげられます。

■会社分割と事業譲渡の違い

自社の事業を他社に譲り渡すのは、「事業譲渡」です。会社分割と似ていますが、さまざまな観点から異なります。以下では、事業譲渡と会社分割の4つの違いをみていきます。

◇【その1】金銭なのか、株式なのか

事業譲渡は、資産による事業売買です。譲渡対象事業の対価については、金銭で支払います。

一方で会社分割は、会社法に規定された組織再編手法です。資産の売買を行い、対象の事業を他の会社に承継させます。譲渡対象事業の対価は、株式となります。

◇【その2】特別決議の有無

事業譲渡を行う際には取締役会決議が必要ですが、権利や義務が承継されません。

会社分割になると、取締役会決議に加えて「株主総会の特別決議」が求められます。株主の同意なしでは会社分割を行えません。

◇【その3】消費税について

事業譲渡では、課税対象となる資産があれば「課税仕入」となります。つまり、消費税が発生します。

これに対し、会社分割では課税取引に該当しないため、消費税がかかりません。さらに会社分割には、登録免許税と不動産取得税の軽減措置があります。

◇【その4】従業員への交渉

事業譲渡の場合、これまでの事業に携わっていた従業員を雇い入れるときは、一人ひとりに交渉します。

会社分割では、契約関係がそのまま移転されるのが特徴です。労働者一人ひとりに同意を得る必要はありませんが、会社分割について書面で通知しましょう。もし異議の申出がなされたときには、承継されません。

■事業承継における会社分割のメリット

会社分割では包括的に承継を行うため、比較的スムーズに移転手続きを行えます。また、現金の準備が不要であり、資産・契約といった引き継ぎが容易であるのも魅力です。

事業承継では、後継者にあらゆるものを引き継がなければなりません。法律や税金の兼ね合いもあり、事業譲渡で移行させると経営に支障をきたしてしまいます。対価も大きくなる点も踏まえると、株式で対応できる会社分割のほうが優れているとされています。

■会社分割による事業承継の流れ

 ここでは会社分割を活用した場合の、事業承継の流れについてみていきます。

◇新設分割

1.取締役会の決議

2.分割計画書の作成

3.分割計画書の事前開示

4.株主総会の特別決議

5.反対株主の株式買取請求

6.債権者保護手続き

7.取り決めなどの事項を記載した、書面の事後開示

8.新設会社にて設立登記、分割会社にて変更登記

新設分割の場合では、新たに会社を立ち上げてから取締役会の決議に入ります。既存会社からの出資などを活用して、スムーズに新設分割を行いましょう。

◇吸収分割

  • 事業を引き継ぐ会社(承継会社)と、事業を譲渡する会社(分割会社)による基本合意

2.双方の取締役会の承認

3.分割契約の締結

4.分割契約書の事前開示

5.分割会社の株主総会の特別決議による承認

6.反対株主の株式買取請求

7.債権者保護手続

8.取り決めなどの事項を記載した、書面の事後開示

9.双方の会社にて変更登記

事業を引き継ぐ側と、譲渡する側。どちらの会社においても承認や変更登記といった手続きが必要です。会社を立ち上げなくて済みますが、新設分割よりもやり取りが増えるので注意しましょう。

■まとめ

会社分割とは、不採算部門の切り離しを行ったり、成長部門の子会社として独立したりするものです。また経営効率を高めて、企業の再編成としても利用できます。契約変更などの煩わしさも回避可能なため、事業承継の際に活用してみてください。

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