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一般社団法人を活用した事業承継対策のデメリットと注意点

記事作成日2020/02/05 最終更新日2021/01/22

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一般社団法人では、株式会社のように株主が存在しません。その特性を活かして、事業承継対策として一般社団法人を設立すると、節税効果が期待できました。しかし、「平成30年度税制改正大綱」により、その節税方法に規制がかかっております。

一般社団法人を活用した事業承継について、今後考えられるデメリットをお伝えします。

■一般社団法人を活用した事業承継対策に規制をかける動き

平成29年12月14日に公表された、平成30年度与党税制改正大網。

これまでは一般社団法人に財産を移しても、相続税が課税されませんでした。それゆえに相続税対策としての一般社団法人が注目され、いつしか相続税逃れの法人設立が増えてしまったのが背景にあります。具体的には、一般社団法人には持分が存在しないことから、個人から一般社団法人に資産を移転すると相続税の課税を半永久的に逃れられるといった内容です。

なぜ、このようなことが起きてしまったのでしょうか?

それは、資産贈与時の要項規定が不明確であり、理事交代について特に制限を設けていなかったからです。そして平成30年4月1日以後から、課税の見直しが適用されています。

以下は、相続税の変更についての概要を引用したものです。

A)個人から一般社団法人等へ財産の贈与等があった場合の贈与税等の規定の明確化

個人から一般社団法人又は一般財団法人(公益社団法人等、非営利型法人その他一定の法人を除く(以下、「一般社団法人等」))に対して財産の贈与等があった場合において、現行の要件(定款に役員に占める親族の割合を3分の1以下とする旨が規定されていること等)のうちいずれかを満たさない場合には、贈与税又は相続税が課税されることとし、規定の明確化がされます。

B)特定一般社団法人等に対する相続税課税の新設

次の要件のいずれかを満たす一般社団法人等(以下、「特定一般社団法人等」)の理事である者が死亡した場合には、当該法人の純資産額を同族役員数で按分した金額を対象に、その特定一般社団法人等に相続税が課税されます。

①相続開始の直前において同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1であること

②相続開始前5年以内において同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1である期間の合計が3年以上であること

(EY税理士法人 「平成30年度税制改正大綱 資産課税概要」より引用 https://www.eytax.jp/tax-library/newsletters/pdf/japan_tax_newsletter_11_Jan_2018_j.pdf)

■そもそもいわれていた注意点・デメリット

平成30年度税制改正大綱が施行される前から、既に挙げられていた注意点やデメリットもあります。これから一般社団法人を事業承継時に活用する場合は、ぜひ一緒に把握しておきましょう。

◇個人に対し、贈与税や相続税が課税されるリスク

「個人で所有している財産を、一般社団法人に移転させれば相続税が一切かからない」というわけではありません。個人の資産を一般社団法人に提供しても、相続税や贈与税の負担が不当に減少すれば「一般社団法人を個人」とみなし、贈与税や相続税が課されます。

また、仮に不動産を無償で移転しようとすれば、個人に対し譲渡所得税、一般社団法人には受贈益課税が生じます。節税を考えることも大切ですが、余計に課税がなされるリスクまできちんと考慮しましょう。

◇税制改正のリスク

税制改正を行わないと、「相続税がかからない」という目的で一般社団法人を設立するのが当たり前になってしまいます。これは、一般社団法人の課税に不透明な部分があり、その点を活用して節税できていたものです。法の目をかいくぐった方法には、税制改正のリスクが付き物だということを認識しておいたほうがよいでしょう。

今後の税制改正でも、一般社団法人の課税がより厳格になるかもしれません。

■まとめ

税制の解釈や、法改正の可能性を想定することで、事業承継時のリスク回避につながります。とはいえ、一般社団法人が相続税対策に不向きというわけでもありません。一般社団法人を設立するにあたり、どのように後継者へ会社を引き継いでいくのかを検討してみてください。

例えば「財産の一部を承継する」といった対応を考えれば、相続税対策に一般社団法人を活用できます。慎重に検討をしてみて、自社に合う事業承継の手段を選択しましょう。

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