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クリニックの事業承継の形態とメリット・デメリット

記事作成日2020/02/07 最終更新日2021/01/22

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個人クリニックでも医療法人でも事業承継の問題は生じます。クリニックの事業承継の形態と、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。

■クリニックの事業承継の形態

 クリニックには、個人経営のクリニックと法人経営の医療法人がありますが、事業承継の形態は同じものもあれば、異なる部分もあります。

◇個人クリニック

個人クリニックの事業承継は、親族内承継か第三者への譲渡(M&A)の2種類です。それぞれの特徴をみていきましょう。

・親族内承継

典型的な親族内承継は、院長が自分の子供にクリニックを承継させることです。しかし、親から子への承継であってもクリニックの開設者が代わることになるため、新規開設と同様に保健所や税務署などに届け出をする必要があります。また、従業員を雇っていれば、社会保険事務所や労働局などにも所定の手続きが必要となりますので、この点は注意が必要です。

・第三者への譲渡(M&A)

個人クリニックを第三者に譲渡するという方法もあります。第三者は個人の場合もあれば、法人の場合もあります。個人が譲渡先であれば、親族内承継と同じくクリニックの新規開設等の手続きが必要になります。

譲渡先が医療法人の場合は、その医療法人が分院を持つ形になるため、定款の変更や保健所への開設許可申請などが必要となります。

◇医療法人

医療法人が事業承継を行う場合も、個人クリニックと同じく親族内承継と第三者への譲渡(M&A)という方法があります。それに加えて医療法人の場合は、他の医療法人との合併という選択肢もあります。それぞれみていきましょう。

・親族内承継

現経営者が事業を子供などの親族に承継させる場合は、個人クリニックほど手続きが煩雑ではありません。現経営者である理事長から後継者に交代する手続きをとるだけでよく、クリニックの廃止や開設手続き等は不要です。

また、個人クリニックの場合は退職金という概念がそもそもないため、退職金の支給はできません。しかし、医療法人であれば現経営者に対して退職金の支給を行うことも可能です。

・第三者への譲渡(M&A)

医療法人を第三者へ譲渡するという選択肢もあります。この場合も、譲渡先は個人または法人です。個人に譲渡する場合は、医療法人を解散するとともに、譲渡先である個人がクリニックの開設手続きを行います。

法人に譲渡する場合にも基本的な手続きは同様です。譲渡側はクリニックを廃止し、譲渡先が医療法人で他にクリニックを有している場合は、分院開設の手続きをとります。一方、医療法人でなく全く新しいクリニックを開設する場合は、新規開設の手続きをとることになります。

・他の医療法人との合併

他の医療法人と合併をする形で事業承継を行うケースもあります。合併には吸収合併と新設合併の2種類があります。どちらの場合も、すべての医療法人の財産や権利義務関係を、合併後の医療法人がすべて引き継ぎます。

また、合併には医療法人のすべての社員の同意が必要とされているところも特徴です。

■親族内継承のメリット・デメリット

◇親族内承継のメリット

親族内承継のメリットとしては、よく知っている人にクリニックを承継できるため、安心して事業承継を行える点です。現経営者のペースで事業承継を進めやすいため、自分が納得するタイミングで事業承継を行いやすい点もメリットといえるでしょう。

また、相続という形で事業承継を行うことができる点もメリットのひとつです。

◇親族内承継のデメリット

一方で、親族内承継は手間がかかるというデメリットがあります。事業承継とはいえ、個人クリニックの場合は個人事業主のため、手続きとしては「現クリニックの廃業と新クリニックの新規開設」という手続きが必要です。

また、親族間でトラブルが起きる可能性がある、後継者の能力が不足している、承継する意思が薄い場合があるなどのデメリットも考えられます。

■第三者への譲渡(M&A)のメリット・デメリット

◇M&Aのメリット

M&Aの場合は基本的に事業を売却する形になるため、譲渡側にはまとまった資金が入ってくるというメリットがあります。譲渡先がすでに長年クリニックを経営している、経営が安定しているような場合には、事業承継後の患者やスタッフに対する心配も軽減されます。

◇M&Aのデメリット

一方で、第三者との契約になるため、譲渡価格の交渉や細かな取り決めなどの煩雑なやりとりが生じます。交渉がうまくいかなければ、それだけM&Aが長引いてしまうため、譲渡側のペースで事業承継を進めることが難しいというデメリットがあります。

■まとめ

クリニックの事業承継は、個人クリニックと医療法人によって若干形態が違います。親族内承継とM&A、それぞれのメリットやデメリットをおさえ、ベストな方法を選択しましょう。

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