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経営理念とは一体何か? その意味・目的・メリットを解説

記事作成日2020/09/04 最終更新日2023/10/27

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経営理念は会社の軸ともいうべき大切なもの。きれいな言葉で飾り、格好だけ整えれば良いというものではありません。また、経営理念の書かれたポスターなどをオフィスに掲げているだけでも不十分。経営理念の持つ真の効果を発揮することはできません。

では、経営理念とは一体何なのか? 今回は、経営理念が持つ意味や目的、有効に使うことで得られるメリットなどを解説したいと思います。

経営理念とは一体何か

経営理念とは何か。改めて考える

経営理念とは簡単に言うと、経営者の哲学や信念に基づき、企業の根本となる活動方針を明文化したものです。また、経営理念は企業が最終的に目指す理想像を明文化したものでもあります。企業によっては社是・社訓・行動指針・ミッション・バリュー・ファイロソフィーなどと呼ばれたりします。

経営者として、または一人の人間として、持っている想い、その企業経営の根っこの部分を言葉にしたものが経営理念です。経営理念は最初から完璧に見えなかったとしても経営を続けていくうちに、形作られ、新しく見えてくるものもあるでしょう。

・会社が目指す理想の姿が徐々に見えてきた。
・自社が社会に貢献できる形は何か。
・全社員同じ方向を向いて働いてほしい。
・お客様に満足してもらう感動を社員全員で共有・体感するためにはどんな商品・サービスが必要か。
・売上だけに縛られるのでなく、社員と笑顔で仕事ができる環境を整えたい
・毎日が「面白い」と思って働いてもらいたい…etc

自社目標、顧客満足、社員の幸せ。さまざまな側面から自分の会社が一体何を大切にしているのかを考え、その根本にある想いを言語化したものが経営理念となります。そのため、ビジネス書や他の企業が掲げた経営理念を真似ても意味がありません。心地よい言葉を並べただけで、現実とマッチしていなければ、社員は誰一人共感してくれません。

経営者の心の奥底にある想いを形にしなければならないのです。かといって、誰も見たことのない画期的なワードを選ぶ必要はありません。同業他社と似通っていても、それがあなたの本当の想いであれば構いません。「理念は足元にあり」。自身と、自社と向き合えばおのずと腹に落ちる理念が見つかります。

経営理念は創業からの想いが形になったものですから、たとえ経営者が変わっても不変の理念として受け継がれます。従業員が業務を進める上での絶対的な行動指針となるものです。

経営理念の説明イメージ

なぜ経営理念が必要なのか? 存在意義は?

「経営理念を掲げていても、いまいち社員に浸透していないように感じる。」
「本当に経営理念を作る意味はあるのだろうか。」

そんな考えがふと頭をよぎったことのある経営者も多いのではないでしょうか。しかし、企業を運営していく上で、経営理念は絶対に欠かせないものです。では、なぜ経営理念は必要なのでしょうか?

経営理念を作る意味

経営理念を作ることは、経営者の考えをまとめ、明文化することを意味します。これはとても重要なことです。なぜなら、経営理念がないと、従業員は普段の経営者の言葉=経営理念(業務における正しい考え)と感じてしまったり、社長の想いがわからなくなってしまうからです。

例えば、ほんの冗談のつもりで言った一言(あんなわがままな顧客は失っても構わないetc)や、余り深く考えずに発した一言(顧客満足は二の次。売上のためなら何をしても良いetc)を会社の正しい見解、つまり経営理念と勘違いしてしまいます。

その考えが根付いてしまうと、新入社員が入っても上司が部下に対して「我が社は売上のためなら何をしても構わないから」と教育してしまうような事にも繋がり、企業風土の悪循環が加速するのです。

発言はその状況によって、時には本心からブレてしまうこともありますが、経営理念として明文化されていれば、ブレることはありません。

経営理念が無いことによる弊害また、経営理念を作ることは経営者にとっても大変重要な意味があります。己を省み、会社のことを真剣に考えるきっかけになるほか、社員に対してウソはつけない、経営理念と反する言動・行動はできないという意志を固めることができるからです。

松下電器(現パナソニック)の創業者である松下幸之助は「企業経営の成否の50%は経営理念の浸透度で決まる。残りの30%は社員のやる気を引き出す環境、残りの20%は戦略・戦術である」という言葉を残しています。それほど経営理念は大切なものなのです。

経営理念を掲げることは経営者の成長に繋がる

従業員の意識、ベクトルを揃えるために、
自信と信頼にあふれた正しい企業風土を構築するために重要なのです。

働きがいやモチベーション向上も経営理念の目的・役割

「社員のモチベーションを上げて、売り上げを伸ばしたい。」
「社員には、毎日生き生きと目を輝かせて働いてもらいたい。」

そんな想いを持っている経営者の方も多いと思いますが、軸のしっかりした経営理念を掲げることは社員の気持ちを前向きにすることができます。では、経営理念がなぜモチベーションアップにつながるのか。それを理解するために、2人の心理学者の理論を紹介したいと思います。

●ハーズバーグの2要因論

アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグ(Frederick Herzberg)は、社員が自分の現状や仕事に満足をする要因には「不満足要因」と「満足要因」があるとしています。

・不満足要因
経営方針・職場環境・対人関係・労働条件・給与待遇・福利厚生…これらの要因が満たされないと、従業員は不満足と感じます。

・満足要因
達成感・承認・責任・昇進・成長…これらの要因が満たされると社員のモチベーションがアップします。

ハーズバーグの2要因論の説明図「給与アップをしても社員の不満が減らない」と感じる経営者は多いと思います。
それはある意味、当たり前。給与をアップしても、不満足を解消するだけで、社員のモチベーションがアップすることはないのです。

昇給アップが社員のモチベーションに繋がらない時の状況

●マズローの5段階欲求

アメリカの心理学者アブラハム・マズロー(Abraham Harold Maslow)は、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定しています。その段階は「生命・生理的欲求」「安全・安定の欲求」「社会的欲求」「自我の欲求」「自己実現の欲求」の5つの階層に分かれるというのです。給与待遇や労働条件といった要因はマズローの5段階欲求では最下層に近い「生命・生理的欲求」「安全・安定の欲求」にあたります。

「人の役に立ちたい。」
「自分の理想の姿を実現させたい。」

社員がこんな想いを実現させるには、共感できる経営理念や目標が大変重要になってくるのです。しかし、土台がしっかりしていなければピラミッドは崩れてしまいます。どれだけ優れた経営理念を掲げたとしても、生活が保障されるレベルの給与が支払われない、長時間労働が常態化しているなど、最低限の条件が整っていなければ社員は経営理念に目を向けることはないでしょう。

マズローの5段階欲求と経営理念の図このように、優れた経営理念には社員が心の奥底に持つ自己実現の心理に働きかける効果があるのです。

経営理念が持つ効果・メリットは

ここまでの解説で経営理念が持つ重要性はご理解いただけたと思いますが、では経営理念を掲げたことで得られる効果、メリットはどんなものがあるのかをまとめたいと思います。

(1)自社の存在意義を全社員で共有できる

自社が企業活動をする中で何を目指すのか、そのミッション(使命)を共有することで社内に一体感が生まれます。また、自社の存在意義を明確に打ち出すことにより、取引先や金融機関など社外に対しては信頼感を与えることもできるでしょう。

(2)社員のモチベーションを向上させる

経営理念を社員に定着させることにより、社員のモチベーションを上げる効果が期待できます。会社の目指す理想像や具体的な目標が明確になれば、社員のなすべきことが可視化され、業績アップにつながるでしょう。また、行動指針を示すことにより、社員が行動・判断に迷わず自信を持って業務に臨めるようになります。

(3)人材採用に活用できる

どんな価値観を持った会社なのか、将来どんな理想像を描いているのかを採用の段階で求職者に掲示することができれば、同じ意志を持つ仲間を募ることが可能になります。また、入社後の経営理念の浸透もしやすくなります。

(4)経営者が変わっても経営者の想いを引き継ぐことが出来る

勢いのある企業や、急激の売り上げを伸ばす企業には、圧倒的なカリスマを持つ経営者が存在していることは少なくありません。この場合、経営者が在籍している間は問題ありませんが、後継者が育ちにくいというデメリットがあります。

経営者が変わった途端に会社を離れる社員が続出することも考えられます。経営者の持つ思想をまとめた経営理念を掲げておくことで、社員に想いは引き継がれ、安定した事業継続が可能になります。

経営理念を掲げるメリット以上が経営理念の主なメリットです。
経営理念を作らない方針を貫くのであれば、上記のメリットとは反対のことがデメリットとして発生する可能性があります。

・明確な目標がないために、社員の仕事に対するモチベーションが上がらない
・一人ひとりの仕事に対する考え方や価値観がバラバラになり、会社としての統一感がなくなる
・バラバラな行動によりモンスター社員が発生しやすくなり、会社に対する不満・不信感が募りやすくなる
・自社の企業風土に合わない人材を採用してしまう可能性が高くなる
・カリスマ経営者が退陣した途端に業績が悪くなる
・効率的な社内コミュニケーションが生まれにくくなる

社員が共通の意識を持っていないため業績が上がらない→業績がアップしなければ、給与面などの待遇も改善されない→待遇が悪ければ社員は幸せになれない→幸せになれない会社では、退職を考える社員が増える。こういった負のスパイラルが加速する可能性があります。

経営理念が無い企業に訪れるリスク

経営理念は掲げた後が大事。効果的に社員に浸透させるためには

どれだけ崇高な経営理念や、社会貢献への想いが経営者の頭にあったとしても、社長室の額に飾ってあるだけであったり、就業規則の片隅に書いてあるだけであったり…。社員に経営理念を聞いても答えられないような状態では意味がありません。そのため、経営理念を掲げた後には、社員へどうすれば浸透できるのかに尽力する必要があります。では、効果的に浸透させるにはどのような方法があるのでしょうか。

その1.社長自ら経営理念を話す場を作る

最も簡単かつ効果的な方法です。社員全員が集まる会議の場や、イントラネットを使ったブログの配信、社内報の社長インタビューなど、社員と接するあらゆる場において、経営者自らが経営理念の話をすることが大切です。社員が「もう耳にタコができる」と思うくらい繰り返し情熱的に伝えましょう。

その2.クレドカードを作り、全社員に携帯させる

経営理念をまとめたクレドカードを社員全員に携帯させるという方法もあります。普段から携帯するのはもちろん、会議の場では机上に置くといったルール付けをしてもいいかもしれません。
※クレドについて詳しく知りたい方は<こちら

その3.経営理念の報告会を開催する

経営理念に基づいて行動したことで、どんな成果を上げたか、顧客満足度の向上につながった事例などの報告会を開催するのも効果的です。部署別に発表をさせたり、朝礼で毎朝一人ずつ発表したり、社内報に経営理念に関する企画ページを作ったり。仲間である社員が経営理念を大切にしている、行動している様子を共有することも、有効です。「自分も頑張ろう」と意識を変える効果が期待できます。

その4.人事評価に取り入れる

数値では測れない定性的な評価に経営理念を取り入れるのも一つの手段です。評価になることがわかっていれば、行動する社員も増えるはずです。

この他にも、日報に経営理念に関する記入欄を作る、研修機会を設けるなどさまざまな方法があります。企業規模や業態に合わせて可能な方法を選択すると良いでしょう。

経営理念を浸透させるためのポイント

経営理念に対する理解を深め業績アップを目指す

この記事では経営理念とは何か、どんなメリットがあるかをご説明してきましたが、ご理解頂けましたでしょうか。最後に一点付け加えると、経営理念の理解度は「知っている」、「分かっている」、「理解・実践している」と3段階に分けることができます。自社の企業風土に合わせた方法を選択し、社員全員が理解・実践できるレベルを目指しましょう。

経営理念の理解度3段階TOMAコンサルタンツグループでは、経営理念を作りたい、効果的に浸透させたいなど、さまざまな相談に応じています。サービス詳細についてはこちらをご覧ください。お客様の会社の社風調査から社内講師の育成まで、一社一社に合わせたコンサルティングを行います。初回相談は無料なので、お気軽にお問い合わせください。

また、従業員を巻き込んで全社一丸となって作成する「クレド」もおススメです。詳細はこちらの記事をご覧ください。

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