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【いまさら聞けない】人事・労務のトラブルを解決する就業規則とは? 定義や作成方法、注意点などを社労士がわかりやすく解説!

記事作成日2023/05/23 最終更新日2023/05/23

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「就業規則」は人事・労務トラブルを回避するために必要不可欠な会社のルールブックです。

体調不良による休職や、セクハラ・パワハラといったハラスメント問題など、近年の労務トラブルは一昔前に比べ多様化しています。社会情勢の変化に伴い、法令も頻繁に改正されるため、その都度「就業規則」の改定が必要です。

改定を怠ると企業名を公表されたり、罰則が与えられるリスクがあります。また、現場の状況に合わせた記載が欠けていると、労務トラブルに発展する恐れがあります。

今回は、法令遵守はもちろん労務トラブルも回避できる『法令・法改正に対応し、労務トラブルから会社を守る就業規則』を備えるための方法について解説します。
就業規則に関する最新の情報を知りたい方向けにセミナーも開催しています。

就業規則の定義とは

そもそも、「就業規則」とは事業場における労働時間、賃金、服務規律など労働条件が統一的、具体的に定めてある規則集のことをいいます。企業内だけで通用する法律と言い換えてもいいでしょう。

なぜ就業規則が必要なのか

企業が就業規則を作成しなければならない理由は、大きく2つあります。

理由1 法律で作成することが義務付けられているからです。
労働基準法(第89条)により、常時10人以上の労働者を使用する場合は作成、届出が義務付けられています。
作成した就業規則は職場の見やすい場所に掲示する、所定の場所に備え付ける、書面を社員に交付するなど従業員に周知しなければなりません。
周知義務を怠ると罰金を科される恐れもあります。

理由2 会社と従業員の間で起こるトラブルを解決するための拠り所とするためです。
問題のある社員に対して懲戒などを行う際には、就業規則に根拠となる事由や懲戒の種類、程度が記載されていなければなりません。
また、会社のルールを就業規則に明記しておくことで、労務トラブルを事前に防ぐことができます。

就業規則に何を明記するのか

就業規則に記載する内容は大きく3つに分かれます。

絶対的必要記載事項

こちらはその名の通り、就業規則に必ず記載しなければならない事項です。
・始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
・賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
・退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

相対的必要記載事項

相対的必要記載事項とは、当該事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項です。
・退職手当に関する事項
・臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
・食費、作業用品などの負担に関する事項
・安全衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰、制裁に関する事項
・その他全労働者に適用される事項

任意的記載事項

社訓的事項や採用に関する内容、前文などのことです。記載の有無は会社の方針に一任されています。

就業規則を作成する上での注意点

就業規則を作成、改定する際には以下の点に注意をしましょう。

①法令・法改正に対応した就業規則を作成する

就業規則は法令を遵守しているものでなければなりません。法令は頻繁に改正されるので、その都度就業規則の改定が必要になります。改正内容を正確に理解した上で、就業規則をどのように改定するのか検討しなければなりません。

また、「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率引き上げ」に関する法改正(2010年4月)は、これまで中小企業は適用を猶予されていましたが、2023年3月31日をもって適用猶予期間が終了となりました。どちらのケースも就業規則の改定が必要です。

あなたの会社が過去1年、就業規則を改定していないのであれば要注意といえるでしょう。

②労務リスクに対応できる就業規則を作成する

労務リスクとは、セクハラやパワハラに代表されるハラスメント問題、不当解雇や残業代の未払い問題などが発生するリスクのことをいいます。メンタル疾患社員・休職トラブル、退職・解雇トラブル、過重労働・長時間労働の削減対応、モンスター社員対策など近年、労務トラブルは多様化しています。

厚生労働省の発表したデータによると、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談件数(令和3年度)は124万件を超えており、高止まりを続けています。これら労務リスクに対応できる就業規則を作成することが大切です。労務リスクを回避する際には同業他社の規則をまねても意味がありません。

社風や歴史、従業員数、男女比など状況に合わせて、一社一社に合わせたものでなければ機能しないものと心得ましょう。

例えば、メンタル不調により休職する社員が発生した場合、就業規則上の定めが不明確であると、

・試用期間中なのに休職を認めなければならない
・勤続年数に対して休職期間が長すぎる

などの労務トラブルが発生することがあります。

自社ではどんなトラブルが発生するか想定した上で、就業規則を定めておく必要があります。

就業規則作成・見直し4つのポイント

就業規則の内容は、前述したように会社によって異なるため、正解があるわけではありませんが、以下の点には特に注意しましょう。

①適用範囲・試用期間

適用範囲とは正社員・契約社員・パート・アルバイトといった従業員区分のことです。

就業規則で適用範囲を明確に定めないと、パート・アルバイトにも正社員と同等の賞与を支払わなければならなくなったり、定年の時期に訴訟トラブルが発生する恐れがあります。このような事態を防ぐためにも、自社に存在する従業員区分をすべて確認したうえで、どの区分を対象にした規定なのかを明確に定めることが大切です。

試用期間とは、本採用の前に実際に勤務させることで従業員の能力を測ったり、勤務態度を評価する期間です。

そもそも試用期間を定めていない場合、試用期間であれば14日以内の解雇のケースで不要になる解雇予告や解雇手当が必要となり、従業員の適性を見極めて本採用を検討する期間を確保できなくなってしまいます。

その他、「適用範囲・試用期間」のよくある不備については、たとえば
「労働契約法第18条(無期転換ルール)に関する規定がない」
「試用期間は明示してあるけれど延長規定は定めていない」
というものがあげられます。

「適用範囲・試用期間」のよくある不備及び対応方法についてはこちらのブログ『【就業規則のポイント①】適用範囲・試用期間のよくある不備と影響をわかりやすく解説!』でも詳しく解説しています。

②労働時間・休日・休暇

労働時間・休日・休暇は、賃金算定の根拠となることもあり、労務トラブルに発展しやすい項目です。

労働時間は企業により定めるべき内容が異なったり、法律の定めも複雑なため、うっかり労働基準法に合わない就業規則を作ってしまうと、労働基準監督署の指導勧告などの対象となる危険性もあります。

しっかりと作ったつもりでも、記載すべき内容が不足していたために従業員とのトラブルに発展することもあります。

「労働時間・休日・休暇」のよくある不備について、具体的によく見受けられるのが、
「実質的に変形労働時間制をとっているのに、就業規則に変形労働時間制の規定が無い」
「所定労働時間は定められているけれど、始業・終業時刻や休憩時間が就業規則に明記されていない」
というケースです。

「労働時間・休日・休暇」のよくある不備及び対応方法についてはこちらのブログ『【就業規則のポイント②】労働時間と休日・休暇のよくある不備や対策をわかりやすく解説!』でも詳しく解説しています。

③法定休暇・休業・休職

3つ目の注意点は仕事の『休み』に関する項目です。

一概に休みと言っても、法定休暇・休業・休職ではそれぞれ性質や就業規則上の取り扱いが異なります。法定休暇とは労働基準法などで定められた休暇で、有給休暇(労働基準法第39条)や介護休暇(育児介護休業法第16条の5)などがあります。

休業とは雇用契約は結んだ状態でありながら、長期間業務を行わない状態のことです。産前産後休業(労働基準法第65条)や、育児休業(育児介護休業法第5条)があります。

休職とは病気など従業員側の都合が理由で、雇用契約は維持したまま労働義務を免除することです。傷病休職・留学休職などがよくありますが、就業規則に定めるかどうかは任意となっています。

「法定休暇・休業・休職」のよくある不備については、たとえば、
「育児介護休業法改正に対応していない」
「休職規定がメンタル不調社員に対応していない」
というものがあげられますが、こちらのブログ『【就業規則のポイント③】人事必見!法定休暇・休業・休職のトラブル予防に役立つ規定を解説』でも詳しく解説しています。

④服務・懲戒と退職・定年

服務・懲戒は社会的背景に影響を受けやすい項目です。
近年ではセクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどの防止措置を講ずることが義務付けられています。
また、プライベートやビジネスでSNSを利用する機会も増えているため、SNSの取り扱いについても就業規則で触れておくことがリスク回避につながります。

退職・定年は2021年4月に改正された高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業確保が努力義務化されているため、社内で見直しの検討が必要な項目といえるでしょう。

その他、「服務・懲戒と退職・定年」のよくある不備については、たとえば
「マイナンバーに関する規定がない」
「雇用契約終了事由と雇用契約終了日の記載がない」
というものがあげられます。

「服務・懲戒と退職・定年」のよくある不備及び対応方法についてはこちらのブログ『【就業規則のポイント④】服務・懲戒と退職・定年のポイントについて法改正を踏まえて解説でも詳しく解説しています。

失敗しない就業規則を作成する5箇条

では、失敗しない就業規則を作成するためには、どのような点に注意をすれば良いのでしょうか。モデル規程等を基に自社で作成する場合、法令に則った作成ができる人材が社内にいることが必須です。

弁護士・税理士・社労士等に作成を依頼する場合、法令面は問題ありませんが、自社の業態に合わせた労務リスクを予見し、未然に防止できるかどうかに主眼が置かれているかが重要です。

しっかりと機能する就業規則にするためには以下の点に気をつけましょう。

1 コンプライアンスの遵守

法令・省令・通達にあわせ法改正の都度、就業規則を見直しなければなりません。

2 労務リスクの回避

想定される労務リスクに対応できるよう、就業ルールや基準を明確にするリスクマネジメントに注意が必要です。

3 現場の実態に合わせる

従業員が安心して働ける職場にするために、事務所の実態にあわせた規定にすることが大切です。

4 労働生産性の向上

労働時間制や労働時間管理方法を見直し、労働生産性の向上に留意しましょう。

5 人材の確保・定着

限定正社員制度といった多様な雇用形態の導入や柔軟な勤務体制の導入、ハラスメント対策等を規定し、人材の確保・定着につなげることも大切です。

就業規則の届出

就業規則を作成したら速やかに事業場を管轄する労働基準監督署に提出することが義務付けられています。
提出方法は下記の3つがあります。

・窓口に直接提出する
・郵送で届け出る
・電子申請

届出の際には、民主的な方法で構成に選出された労働者代表に意見を聞き、意見書を作成・添付しなければなりません。
なお、窓口に直接提出する、あるいは郵送で届け出る場合は『就業規則(変更)届』『意見書』『作成・改定した就業規則』をそれぞれ2部ずつ提出します。

就業規則の作成・改定はTOMAにお任せください

就業規則の作成・改定は一定規模の企業であれば絶対に作成しなければなりませんが、法令改正による改定が都度必要であったり、労務リスクを的確に予見したりと一筋縄ではいきません。そのため、就業規則の作成・改定は専門家に任せるのも一つの方法です。TOMAでは「就業規則作成・見直しサービス」を展開しています。

・問題社員との解雇トラブル
・ハラスメント問題
・メンタル疾患社員の休職トラブル
・同一労働同一賃金
・労働生産性を向上に関する独自のノウハウ(規定)…etc

TOMAでは、長年中小企業を支え続けてきた経験、ノウハウを踏まえて、あらゆる課題に対応した就業規則の作成が可能です。就業規則の些細な悩みから、専門性の高い内容の解決方法までどんな内容でも構いませんのでお気軽にご相談ください。

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※本記事は2023年5月に執筆したものです。