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【就業規則のポイント③】人事必見!法定休暇・休業・休職のトラブル予防に役立つ規定を解説

記事作成日2022/09/08 最終更新日2022/09/08

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育児休業介護休業法が改正され、就業規則の見直しが必要となりましたが、皆さまの会社では規則の改定は無事不備なく終わられましたか?
今回は、このような法改正の反映に加え、増加するメンタル不調による休職への対応など、注目すべきポイントが多い就業規則の法定休暇・休業・休職に関するポイントを解説します。

就業規則に不備があると、従業員とのトラブルの原因になる他、アルバイトや試用期間中の従業員も正社員と同じ取り扱いをしなければならなくなるなど、多くのデメリットがあるので注意が必要です。必要事項が漏れていれば、罰金の対象になる危険性もあるでしょう。

そこで当記事では、基礎知識や就業規則で注意すべきトピックから、よくあるトラブルとその対策まで、紹介しています。
就業規則は「きちんと整備できた」と思っていても、意外と不備が多いのが実情ですので、この機会に確認しておきましょう。

法定休暇・休業・休職の基礎知識

法定休暇・休業・休職は、いずれも仕事が「お休み」できる日を表していますが、それぞれ性質や就業規則上の取り扱いが異なります。ここでは、それぞれの定義や違いなど、基本的なポイントを確認しておきましょう。

法定休暇・休業・休職とは

まずは、法定休暇・休業・休職の定義を確認してみましょう。

法定休暇とは、労働基準法などの法律で定められた休暇(本来労働の義務のある日にその義務を免除する)のことです。どの企業も就業規則に定める必要のある項目にあたります。
法定休暇の代表例は、有給休暇(労働基準法第39条)・子の看護休暇(育児介護休業法第16条の2)・介護休暇(育児介護休業法第16条の5)です。

休業とは、雇用契約は維持したまま、長期間業務を行わない状態のことです。法定休暇と同様に、どの企業も就業規則に定めなければなりません。
代表例には、産前産後休業(労働基準法第65条)・育児休業(育児介護休業法第5条)・介護休業(育児介護休業法第11条)があります。

休職とは、病気など従業員側の都合が理由で、雇用契約は維持したまま労働義務を免除するものです。就業規則に定めるかどうかは任意となるため、休職の内容や条件も自由に決めることができます。
代表例は、傷病休職・留学休職・出向休職です。

法定休暇・休業・休職の違い

法定休暇・休業・休職は、次のとおり、就業規則に定めることが義務付けられているかどうかなどの点で違いがあります。

休業手当と休業補償

休業と関連して覚えておきたいのが、休業手当と休業補償です。休業手当は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い従業員を休業させる企業が増えたことで、よく耳にするようになりました。このように、両者はまったく異なるものなので、覚えておきましょう。

法定休暇・休業・休職を就業規則に定めるときの注意点

トラブル予防の観点から、法定休暇・休業・休職を就業規則に定めるときに注意すべき点が4つあります。
・産前産後休業、育児・介護休業等などの規定を設ける
・法改正に対応させる
適用範囲を明確にする
・休職適用要件・休職期間の通算の定め方に留意する

なぜ注意が必要なのか、把握しておきましょう。

産前産後休業、育児・介護休業などの規定を設ける

就業規則には、必ず、産前産後休業や育児・介護休業についての規定を入れておきましょう。
労働基準法第89条で、就業規則に休暇(産前産後休業/育児・介護休業)について規定することを義務付けているからです。
このような、すべての企業に対し就業規則に入れることが義務付けられている規定(絶対的必要記載事項)は、抜けのないように確認しておくことが大切です。

法改正に対応させる

就業規則は、関係する法律が改正されるたびに見直し、改正内容を反映させるようにしましょう。
法改正に伴い、次のような影響があるからです。
・追加しなければならない規則が増える
・これまで任意だった規定が義務化される
・上限や下限などが追加され、規定の見直しが必要になる

法改正を反映していないと、せっかく就業規則があってもトラブル予防の効果が半減してしまいます。
詳しくは次章で解説しますが、法定休暇・休業・休職関係では、直近では育児介護休業法改正がありました。改正があったときにすぐ対応できるように、日ごろから就業規則に関係する法律は把握しておくとよいでしょう。

適用範囲を明確にする

法定休暇・休業・休職について就業規則に定めるときは、適用範囲を具体的に明記しておくことが大切です。
例えば、休職の規定を設ける場合には、試用期間中の者は適用除外にする旨を明記しておかないと、試用期間でも休職できてしまいます。
試用期間とは本来、心身ともに健康であり十分な労務提供ができるか否かを判断する期間であるのに、休職規定が適用されると、試用期間を設けることの意味がなくなってしまうでしょう。
本末転倒な事態を避けるためにも、就業規則は例文などをそのまま載せて終わりにせず、適用除外を設ける必要はないか確認しておく必要があります。

休職適用要件・休職期間の通算の定め方に留意する

休職適用要件・休職期間の通算を定める場合、精神的な疾患に対応できる定め方にしておく必要があります。
近年、メンタル不調で休職する従業員が増えている反面、従来からの休職規定の定め方では、精神疾患の休職にうまく対応できないからです。
休職適用要件は、欠勤日数が「連続して」〇ヶ月以上のように定めると、断続的な欠勤になりやすい精神疾患(うつ病等)の場合、いつまで経っても休職要件を満たせなくなってしまうでしょう。

また、前後の休職の通算規定がないと、いったん復職しても傷病が再発・悪化しやすい精神疾患では、休職を繰り返し取得されると、業務に支障をきたしてしまいます。さらに、いつまでたっても休職期間が満了にならずに、雇用関係を終了させることもできません。
雇用主側が不利益を被らないようにするためにも、休職規定は、精神的な疾患の休み方を踏まえたものにしておく必要があるでしょう。

【休業のポイント】育児介護休業法改正

育児介護休業法改正に伴い、就業規則の休業に関する規定の見直しが必要です。
ここでは、具体的な就業規則の規定について検討する前提となる基礎知識を解説します。就業規則の見直しをスムーズに行うためにも、育児介護休業法について再確認しておきましょう。

これまでの育児介護休業法改正のあらまし

育児介護休業法のこれまでの変遷を、簡単に確認しておきましょう。

令和4年の育児介護休業法改正のポイント

令和4年は、4月1日と10月1日の2段階に分けて、育児介護休業法改正が施行されます。今回の改正の主な目的は、男性の育児休業取得の推進です。

男性が積極的に育児に参加できるよう「産後パパ育休」を創設するとともに、男性でも育児休業取得したいと言いやすくなる職場環境づくりを目指して、「雇用環境の整備の義務化」「個別の周知と意向確認」が盛り込まれています。

上記の表で傍線のある改正内容は、就業規則の改正が必要になります。

育児介護休業法改正を就業規則に反映させよう

令和4年育児介護休業法改正に伴い、施行日までに就業規則の見直しをしておく必要があります。具体的にどのような見直しが必要なのかご紹介しますので、対応が漏れなく完了しているか、今一度確認しておきましょう。

令和4年4月1日までに就業規則の変更が必要な内容

令和4年4月1日に施行される育児介護休業法改正で就業規則に影響があるのは、「有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和」です。
この改正に伴い、就業規則に規定している「有期雇用労働者が育児・介護休業を取るための条件」を、以下のとおり一部削除する必要があります。

上記の対応は、令和4年4月1日までに完了している必要があります。就業規則を確認してみて、未対応の場合は速やかに変更しておきましょう。

令和4年10月1日までに就業規則の変更が必要な内容

令和4年10月1日施行の育児介護休業法改正で就業規則に影響があるのは、①「産後パパ育休を通常の育児休業制度とは別に取得可能に」、②「育児休業制度の変更」の2つです。
次の内容を、令和4年10月1日までに就業規則に反映しておきましょう。

【休職のポイント】メンタル不調による休職の基礎知識

休職に関連して知っておくべきなのが、メンタル不調による休職についてです。近年、メンタル不調による休職者は増加傾向にあり、対応に追われる企業も増えています。どのくらい増えているのか、どういう対応が発生するのかを、チェックしてみましょう。

メンタル不調による休職の実態

厚生労働省の令和3年の労働安全衛生調査(実態調査)によると、メンタル不調で1ヶ月以上休んだ従業員がいたと回答した企業は全体の10.1%で、前回調査の9.2%から0.8ポイント増加しています。

※参考:厚生労働省「令和3年労働安全衛生調査(実態調査)

なお、メンタル不調の休職者がいたと回答する割合は事業所規模が大きくなるほど増え、「50~99人」で25.5%、「300~499人」で69.2%、「1,000人以上」では94.0%です。

メンタル不調で休職の場合に発生する対応

従業員がメンタル不調で休職するとなった場合に、人事労務担当者が必ず行うべきことは、①医師の診断書を確認、②必要事項の説明の2つです。

メンタル不調に対応可能な就業規則を整備しよう

メンタル不調による休職は、通常の傷病とは異なる特徴があるので、現行の就業規則のままではうまく対応できない危険性があります。想定外のトラブルや不利益を避けるためにも、就業規則をメンタル不調にも対応できるようアップデートしておきましょう。

メンタル不調に関する就業規則の不備でよくあるトラブル

メンタル不調に関する就業規則の不備でよくあるトラブルと、就業規則で行うべき対策は次のとおりです。

早速、就業規則をチェックしてみて、不十分な箇所があれば修正や追加を行っておきましょう。

休職のトラブル回避におすすめの規定

休職や復職に関するトラブルを避けるためには、次のような規定も就業規則に盛り込んでおくことをおすすめします。
・休職や復職は会社が命じるものであり、従業員の判断で決定すべきではないこと
・休職中は療養に専念することを誓約させること(休職しているのに旅行や遊びに行っている)
・休職や復職に必要な診断書の費用は従業員が負担すること
・係りつけ医の診断だけではなく、会社指定医(産業医)の診断を受けさせることがあること


就業規則の法改正対応やトラブル予防効果強化で悩んだらTOMA

就業規則の法定休暇・休業・休職の分野は、法改正やメンタル不調による休職への対応など、見直し箇所が盛りだくさんです。就業規則は定期的にバージョンアップしておかないと、トラブルの抑止力が低下してしまいます。定期的な見直しを徹底させましょう。
とは言っても、「就業規則は難しい」「不備があるのかどうかがよくわからない」という方が多いのも実情です。そのような場合は、人事労務のプロフェッショナルである社労士に任せてしまうのが、一番、確実で安心です。

TOMAでは、企業の実情に完全対応したオーダーメイドの就業規則をお作りしています。トラブル防止・生産性向上につながるTOMAの就業規則は、コストパフォーマンスが高いのが特徴です。
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