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個人事業を承継した場合の減価償却について

記事作成日2020/01/29 最終更新日2021/07/30

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相続や贈与により個人の事業用資産を承継したとき、どのように減価償却をすればよいのかご存じですか?事業承継時の減価償却では、中古品として取得する手続きよりも、事業用資産として現経営者から引き継いたものとして検討しましょう。

以下では、個人事業を承継した場合の減価償却についてご説明します。

■取得価額

相続などによって事業用資産を減価償却すると、取得価額は被相続人の取得時期によって定められます。例えば定率法を採用した場合では、「その資産の取得価額から相続開始時までの償却費累計額を控除した金額」で計算します。

しかし、亡くなった方が生前減価償却資産を事業用として使っていたのに、経費として計上されていなかったケースもあり得ます。このときは、承継者が被相続人の取得費・取得時期・耐用年数などを加味したうえで、資産計上します。被相続人の所得税については、申告期限から5年以内 であれば是正請求を行えるのもポイントです。

■耐用年数

結論からいうと、相続により取得した減価償却資産には、中古資産の耐用年数は使用できずに、法人税法で定められた年数が適用されます。

相続で取得した資産は中古の資産であるため、以後の使用可能期間を加味した中古資産の耐用年数が使用できると考えてしまいがちです。しかし、相続による減価償却資産の取得は、被相続人から引き継いだ資産であり、中古資産とは異なるので注意が必要です。

なお、耐用年数は資産の用途や構造などによって細かく分類されるものです。事業用の資産・不動産を入手した場合には、国税庁のホームページを参考にするか、専門家と相談しながら減価償却を行いましょう。

■償却方法

相続で個人事業を承継したとしても、被相続人の償却方法をそのまま引き継げません。特に、後継者が個人事業主となる場合には、定額法により減価償却を行うことになります。ほかの償却方法を適用したいのであれば、償却方法の届出書を提出しましょう。償却方法の選択について、贈与による事業承継の事例も一つ紹介いたします。

例えば長男が、父から廃業後の店舗を無償で借り受けたとします。父が店舗を経営していたときには、旧定率法で減価償却を行っていました。このとき、長男が計上すべき店舗の減価償却費を考えていきましょう。

上記のケースでは、相続による減価償却資産ではありません。父の廃業後、長男が店舗を無償で承継したものです。このときの減価償却費の額は、父が選択していた「旧定率法」により計算した金額となります。贈与による個人事業の引き継ぎでは、相続とは取り扱いが違うため注意してください。

ちなみに長男が年の途中で個人事業を承継しても、償却方法で「旧定率法」を選択していれば、減価償却資産は旧定率法のままになります。親族が有する資産を無償で承継する場合、長男は自身の事業所得を考慮したうえで、必要経費として減価償却費を算出します。また、親族の所得金額も「必要経費に算入すべき減価償却費である」と判断されるケースもあるでしょう。

もし父が店舗使用の対価を受け取ったならば、不動産所得の金額を考慮した減価償却費が発生します。

■まとめ

個人の事業用資産を引き継いだとき、取得価額は被相続人の取得時期によって定められるものです。また、耐用年数では「前所有者による資産の利用期間と取得者による資産の利用期間」を考慮したうえで、法人税法で定められた年数が適用されます。

また、相続により減価償却資産を取得した場合、取得価額や耐用年数が引き継がれ、被相続人が選択した償却方法は引き継ぎの対象になりません。もし、相続人が償却方法を選ぶ場合には、新たに届出を申請する必要があります。

ただし、贈与による事業承継では、相続時の手続きとは異なります。取得価額、耐用年数、減価償却の方法など、個人事業を承継した場合の減価償却には特に注意しましょう。

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