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事業承継における株式贈与での課税方式や納税猶予について

記事作成日2020/02/07 最終更新日2021/01/22

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中小企業や小規模事業者が事業承継する際に行う株式贈与。その株式贈与を行う際には課税方式が2つあり、場合によっては納税を猶予できることもあります。

今回は、株式贈与を行う際の課税方式の種類や納税猶予についてご紹介していきます。

■株式の生前贈与とは、事業承継における株式贈与

 事業承継の際には、経営に関する決定権を後継者に譲るため、株式の2/3以上を後継者に譲渡する必要があります。

譲渡の方法には「売買」「贈与」「相続」の3つの方法がありますが、なかでも前経営者が存命のうちに贈与を行うのが「生前贈与」です。

■株式を生前贈与するメリット

 株式を生前贈与するメリットは、後継者が株式を取得するための資金を準備する必要がないことです。

また、現経営者が存命のうちに贈与の計画を立てることができるため、贈与にかかる税金対策を視野に入れて事業承継を行うことができます。

◇贈与税の納税猶予は事業承継税制を利用

納税猶予とは、中小企業から株式の生前贈与を受けた際、後継者がその後も事業を継続することなどを条件に、その贈与を受けた株式に対する贈与税の納税を全額猶予するという制度です。

これは事業承継税制と呼ばれており、「中小企業であること」「贈与後5年間雇用の8割以上を維持していること」など、所定の条件を満たした場合に猶予が行われます。

この税制をうまく利用することにより納税が猶予され、贈与税の負担が軽減された状態で事業を承継することができます。

◇非上場株式についての非課税特例は一部

また、「上場していない同族会社の株式等が贈与の対象である場合」に限り、一定の要件のもと、贈与税が3,000万円までが非課税となる特例が定められています。

しかし、この特例が適用されるのは平成20年12月31日までの贈与とされていますので、ご注意ください。

■贈与税の課税方式は2つから選べる

 株式の生前贈与は、現経営者が存命のうちに行うため、先代の意思を後継者に引き継げるという意味でも有用です。ただし、贈与の場合は贈与税の対象となるため、定められた基礎控除額を超える額の贈与には、贈与税を支払う義務が発生する点には注意が必要です。

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方式があり、それぞれに基礎控除額や贈与対象の違いがあります。課税方式は選択後の変更ができないため、贈与の状況を踏まえたうえで慎重に選ぶことが重要です。

 ◇暦年課税制度

対象:親族または第三者からの贈与

方法:1年間に受け取った贈与について、まとめて計算して贈与税を課税

税率:10%~55%の8段階

控除額:年間110万円まで。同じ人物からの贈与でも、違う年に贈与すれば再度110万円の控除が可能

メリット:計画的に株式を贈与することが可能

デメリット:年間110万円を超える場合、税務署に贈与税の申告をし、贈与税を支払う必要がある。

一度に高額の控除はされない分、同じ人物からの贈与も年が変わればまた110万円分の控除が可能です。「毎年確実に定額の贈与が可能な場合」「後継者が株式を取得し終わるまでに時間的な余裕がある場合」におすすめの制度です。

◇相続時精算課税制度

対象:60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の推定相続人及び孫への贈与

方法:相続時、贈与財産を贈与時の時価で相続財産に合算

税率:一律20%

控除額:生涯で2,500万円まで。年が変わっても残りの控除額は変わらない。2,500万円までなら、同一人物で複数回の贈与が可能

メリット:一度に高額の贈与が可能

デメリット:「相続時精算課税制度選択届出書」を提出する必要がある

こちらは一度に高額の控除ができますが、贈与が総計2,500万円以上になった場合は一律20%の課税がなされます。控除額の上限が高いため、「一度に高額の贈与を行いたい場合」「後継者に早急に株式を相続したい場合」におすすめです。

■まとめ

 事業承継における株式贈与での課税方式は2つあり、それぞれ条件が違うため、選択の際は専門家に相談して慎重に決めましょう。また、納税猶予についても、猶予を受けられる条件は事業承継税制に定められていますので、よく確認したうえで利用しましょう。

贈与税はその贈与分が大きいほど大きくなりますので、慎重に検討し、専門家に相談して雑徭方法を選ぶことが何より大切です。

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