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相続専門税理士が解説! アメリカ在住の日本人が知っておきたい「親御さんからの国際相続の手続き」総まとめ

記事作成日2021/10/27 最終更新日2022/10/23

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日本で暮らす親御さんからの相続問題、いざというときのご準備はできていますか?

転勤等でアメリカに移住して働いている方、あるいは国際結婚などで長くアメリカに居住している方にとって、日本に残しているご高齢の親御さんからの相続の問題は、いつ発生してもおかしくない切実な問題だと思います。
相続のことが気になる一方、時差や物理的距離などの制約で親や兄弟とのコミュニケーションが充分に取れず、また、情報が乏しい海外で「相続の準備をしなければならないけど、どうしたら良いのか分からない…」と不安を抱える方も多いのではないでしょうか。

このブログでは、近年、増加傾向にある国際相続(2国間をまたぐ財産相続)に関する不安を取り除くために、相続にかかる税金の問題やその対策、さらにはアメリカと日本の相続における違い、そして円満な相続に欠かせない遺言書の準備の仕方などについて、数多くのアメリカ在住日本人の国際相続の相談に乗ってきた専門税理士がまとめて解説します。

国際相続とは何か?

国際相続とは、2国以上をまたいで財産を相続することです。
例えば、相続人(財産を受け取る人)や被相続人(財産を渡す人)が海外移住者又は外国籍の場合や、相続する財産が海外にある場合は国際相続にあたります。

相続手続の内容や適用される法律は、どの国の、どの種類の財産を引き継ぐかで異なります。遺産を相続する際、知識が乏しいばかりに余計な税金を払ったり、複雑な手続きで疲弊したり、さらには兄弟間で争いがおこる(争族)ケースは非常に多いです。

そうなる前に、正しい情報を把握しておきましょう。

国際相続をスムーズに進めるために必要なこと

国際相続をスムーズに進めるために必要なことは大きくわけて3つあります。

(1)課税される国を把握する

(2)課税される国の相続税に関する情報を把握する

(3)相続で揉めないための生前対策

国際相続は「国籍が日本なのか、外国なのか」、「財産があるのは日本か、外国か」などによって適用される法律が変わります。また、課税する国が外国なのか日本なのかによって、課税の仕組みや手続きが異なります。

(1)課税される国を把握する

まず、「どこの国の法律が適用されるのか」を把握することが重要です。日本では、被相続人(財産を渡す人)の国籍の法律に従います。たとえば被相続人が日本籍のまま亡くなった場合、日本の法律に従います。相続人(財産を受け取る人)の国籍は関係ありません。

(2)課税される国の相続税に関する情報を把握する

相続税事情は国によって異なります。日本における相続税は8段階で分かれており最低税率は10%、最高税率は55%です。一方、イギリスであれば一律で40%、アメリカであれば12段階で最低税率18%・最高税率40%です。
動産は被相続人の国籍で定められた法律、不動産は遺産の所在地が外国にあると所在地の法律に準拠します。(相続分割主義)

(3)相続で揉めないための生前対策

相続において最も危惧すべきことは、相続人同士の争い、すなわち争族です。
特に海外在住の方が絡むと、連絡や相続協議がスムーズに進まないことが想定されます。前もって親族内で協議をし、遺言書を作成することをおすすめします。

納税義務者と相続税について

相続税に関する情報として、納税義務者と相続税の計算方法について知っておく必要があります。

納税義務者とは

納税義務者とは、相続や遺贈で財産を取得した方です。財産を取得していれば、配偶者や子などの法定相続人ではなくても、納税義務者に該当されます。
また「相続時精算課税制度を使い贈与税申告をしていた方」や、死亡保険金や退職手当金などの「みなし相続財産」を受け取った場合にも、納税義務者となります。

相続税とは

相続税とは、亡くなった方の財産を受け継いだ方が取得した遺産額に応じて負担する税金です。相続財産の取得方法には、3種類あります。

●遺産分割協議による相続

●遺言書による相続

●贈与者と受贈者が「贈与者が死亡した後に、事前に指定した財産を受贈者に贈与する」贈与契約

財産を相続する方が、配偶者、父母、子(代襲相続人である孫を含む)ではない場合、相続税は2割増しで計算されます。

 

相続税の基礎控除額と計算方法

相続税の基礎控除額と計算方法をご紹介します。税率について多くの方が勘違いしがちなポイントもあります。ご参考にしてください。

相続税と基礎控除額

土地・建物や預貯金などのプラスの財産から、借入金や未払金などのマイナスの財産を差引いたものが正味の遺産額になります。正味の遺産額から基礎控除額を引いたものが、課税遺産総額になります。
基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。
仮に4人の法定相続人である場合の基礎控除額は「3000万円+600万円×4人」=「5400万円」です。
例えば、相続する財産の合計が1億円で、法定相続人が4人いた場合、「1億円−5400万円」=「4600万円」が課税対象です。

相続する財産から、基礎控除額を差し引いた値がマイナスかゼロになれば、課税対象はありません。よって、申告をしなければ受けられない特例等の適用を受けない場合は、税務署への申告も不要です。

相続税の計算方法

課税遺産総額を、一旦、法定相続分で分割したものと仮定して、相続税の総額を計算します。
各相続人の実際の相続割合により、各人の相続税額を計算します。

相続する財産が1億円で、配偶者と子どもが2人、配偶者が50%、子ども2人が30%・20%ずつ相続する場合。

・「1億円(総額)−4800万円(基礎控除)」

・「5200万円(課税遺産総額)」

・配偶者 1/2(2600万円):納める相続税「340万円」

・子ども 1/4ずつ(1300万円ずつ):納める相続税「145万円ずつ」

・合計納税額:630万円

・各人の相続税額:妻 630万円×50%=315万円、子 630万円×30%=189万円、630万円×20%=126万円

さらに配偶者の場合、取得した正味の遺産額が法定相続分もしくは1億6000万円のいずれか多い金額まで、税額控除があります。
ただし、配偶者控除を適用するには相続税の申告が必要です。

非課税の対象

生命保険金や死亡退職手当金などには、基礎控除とは別に非課税限度額が設けられています。これは、生命保険金や死亡退職手当金には、残された遺族の生活を保障する役割があるためです。計算式は、生命保険金・死亡退職金それぞれ「500万円×法定相続人の数」です。
手元のキャッシュに余裕があれば、キャッシュを保険に変えておくことで、相続税を節税することが可能です。

アメリカと日本の相続税について

ここではアメリカを例にとって、アメリカと日本の相続税の違いについて説明します。
アメリカの相続税は「米国遺産税」と呼ばれ、米国遺産税以外にも各州の法律に基づく税が存在します。米国遺産税と日本の相続税の大きな違いは3つです。

●課税される財産の対象

●納税義務者

●基礎控除額

以下、日本とアメリカで相続税にどのような違いがあるのかを具体的に解説します。

アメリカとの違いその1:課税対象

アメリカと日本では、相続税の課税対象に違いがあります。日本では、相続税の課税対象は亡くなった時点の財産であるのに対して、アメリカでは、亡くなった方の財産から、遺産管理等にかかる費用を差し引いた金額に対して課税されます。

アメリカとの違いその2:納税義務者

日本での納税義務者は、財産を受け継ぐ相続人です。一方、アメリカでの納税義務者は亡くなった本人(実際には代理人である遺産管理人等)です。

アメリカとの違いその3:基礎控除額

日本での基礎控除額は3000万円+法定相続人の数×600万円で、最高税率は55%です。一方、アメリカの遺産税の基礎控除額は1,158万ドル(約12億円)で、最高税率は40%です。(2021年1月現在)

日本では、亡くなった方のうち約12人に1人の割合で相続税の課税対象になる(2019年)のに対し、アメリカの遺産税は、ごく一部の富裕層にしか関係がない、という違いは、基礎控除額の差によるところが大きいです。

知らないと損する相続税対策

相続税の節税対策をしているか否かで、納める税金が大きく異なります。
そして、対策を始めてから相続までの時間が長いほど節税には効果があるため、早くから対策しておくことをオススメします。

相続税対策①:相続財産の評価を下げる特例

相続する財産が土地の場合、小規模宅地等の特例の条件をクリアできれば税金をグンと抑えられます。下記のいずれかに該当していれば、小規模宅地等の特例の対象となる可能性があります。

●被相続人が自分で住んでいた

●被相続人が他人に貸していた

●被相続人が事業などで使用していた

相続税対策②:相続財産を賢く減らす方法

相続税対策として、最もポピュラーなのが生前贈与ですが、きちんと制度を理解しておかないと、逆に税負担が大きくなってしまうケースもあります。
生前贈与には、暦年課税贈与と相続時精算課税制度の2種類がありますので、贈与する財産の特性や財産額をきちんと把握し、どちらの制度を用いる方にメリットがあるかを検討してから行いましょう。

また、一代飛ばして遺贈または贈与をする方法も相続税対策として有効です。
孫など、配偶者・子以外への相続は20%多く相続税がかかってしまう一方で、相続税課税自体を1回飛ばせるため、トータルで高い節税効果を得られる可能性があります。

遺産争族を防ぐための遺言書

生前に被相続人が遺言書を残していた場合、原則的には遺言書の内容に則って遺産は分けられるため、相続争いを避けることができます。

国際相続の場合、手続きが2国間にまたがるので、遺言書は必須です。ただでさえ国際相続は煩雑になるのに、遺言書がないとさらに大変になることは言うまでもありません。

遺言書を残しておいた方がいい方

家族で仲が良くても、遺産をめぐる争いは起こりえます。
下記の項目に該当する方は特に、遺言書を残しておいた方がいいかもしれません。

●相続人がいない

●不動産を持っている

●子どもがいない

●相続人の仲が良くない

●法定相続人以外に財産を譲りたい

●会社を経営している

●離婚した相手との子どもがいる

●相続人が多い

●財産を寄付しようと考えている など

遺言書の種類

遺言書には大きく3種類あります。

●自筆証書遺言

●公正証書遺言

●秘密証書遺言

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、自筆で作成する遺言書です。
好きなタイミングで書けて、誰にも内容を知られずに保管できることがメリットです。デメリットは、裁判所で検認しなければ開封できないこと、そして紛失するリスクがあることです。これらのデメリットへの対応策として、2020年7月、法務局による遺言書の保管制度が創設されました。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場の公証人によって、法律的に不備がないかをチェックしながら作成される遺言書です。
公証役場に原本が保管されるので、紛失するリスクもなく、内容や形式の不備により遺言書が無効となる可能性がほとんどない点がメリットです。
ただし、手数料がかかるのと、証人2名を用意する必要があります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言をあわせた遺言書です。被相続人が内容を作成し、公証役場に提出するため、自筆ではなくても構いません。ただし、署名は自筆で書く必要があります。メリットは、内容を知られることなく遺言書を残せることです。デメリットは、紛失するリスクがあることと、裁判所で検認してもらわなければ開封できないことです。

遺言書作成時の注意点

遺言書を作成する際、気をつけなければいけないのが、遺留分に対する配慮です。遺留分とは、遺された家族の生活を保障するために、一定の遺族にのみ認められる最低限の相続分です。ただし、遺留分が認められるのは、配偶者・子ども(代襲相続人である孫を含む)・直系尊属だけです。
遺言書を作成する際には、各相続人の遺留分を考慮して、分け方を検討しましょう。

また、遺言作成時には、「遺言執行者」を忘れずに指定するようにしましょう。特に相続人の中に海外在住の方がいらっしゃる場合は、遺言執行者を指定しておくことで、相続手続きを簡便化することができます。

遺産分割協議の具体例

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合うことです。遺産分割協議の具体的な手順は以下です。

(1)遺言書の有無を確認する(遺言書があれば、原則は遺言書に従う)

(2)相続人の特定(相続人全員でなければ無効)

(3)遺産の調査・洗い出し

(4)財産目録の作成

(5)遺産の分割方法の検討

(6)正式に遺産分割協議書を作成する

高齢者の財産を守るための認知症対策

認知症を抱えている日本の高齢者は年々増え続けています。もし、対策をせずに親御さんが認知症になってしまった場合、子どもは親の財産を管理できなくなります。海外にいて情報が少ないと、事態はさらに困難を極めます。

ですから、早いうちから認知症対策をして、財産の管理などに困るリスクを減らしましょう。国が離れていても事前に対策を施せば、大きな問題にはつながりません。

家族信託の活用について

認知症対策として、家族信託を活用する方法があります。家族信託とは、自分の財産を管理できなくなる場合に備えて、家族に自分の財産の管理などの権限を与えることです。認知症になる前に信託契約を結ぶことで、委託者の財産の活用、処分が可能になります。

アメリカで一般的である「リビングトラスト」と似ていますが、家族信託とリビングトラストでは目的が違います。リビングトラストとは、亡くなった場合にスムーズに相続手続きを進められるように作られた制度です。

国際相続にお困りの際はプロにご相談を

相続に関する問題は法律や税金だけでなく、人間関係にまで及びます。その上、国際相続となると国の規定を把握したり、用意しなければならない書類などがより複雑になり個人での対応はかなり難しいかと思われます。

TOMAコンサルタンツグループ/TOMA税理士法人では、帰国準備から相続対策、遺言書作成、不動産売買など、それぞれの専門家が、ワンストップで対応します。国際相続を専門としている税理士をはじめ、行政書士、不動産鑑定士などの専門家が在籍しており、200名以上の専門家がジャンル・業種など多岐にわたる豊富な経験をもって依頼者をサポートします。
女性の相続専門コンサルタントも多数在籍しているため、ご主人様を亡くされた、あるいはご主人と離れておひとりで暮らしているご婦人の方なども、同性として気兼ねなくご相談いただくことが可能です。
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