法人の自己株式の取得とみなし配当
個人株主が、所有する株式をその発行法人に譲渡して金銭等の支払いを受けた場合、その支払いを受けた金額のうち発行法人の資本金等の額に対応する部分の金額を超える部分については配当とみなされます(みなし配当)。この配当とみなされた金額は、所得税法上の配当所得に該当するため、他の所得と合算され超過累進税率により課税されます。
同族会社に多くあるオーナー社長が所有する株式をその会社に対して譲渡した場合には、役員報酬等と合算されて所得税が課税されるため、所得税の負担が高額(最高税率で所得税・復興特別所得税45.945%+住民税10%)になりがちです。
譲渡対価の全額を譲渡所得の収入金額とする特例
相続等により株式を取得して相続税を課税された人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税の対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合には、その人が株式の譲渡の対価として発行会社から交付を受けた金銭等の額がその発行会社の資本金等の額を超える場合であっても、その超える部分の金額について配当所得としての課税は行なわれず、発行会社から支払いを受ける金銭等の全額が譲渡所得に係る収入金額とされます。
つまり、この適用を受けることによって、発行法人から支払いを受ける金銭等の額からその株式の取得費と譲渡費用の合計額を控除した金額に対して、一律20.315%(所得税等15.315%+住民税5%)の課税のみが行なわれます。
相続税の取得費加算
また、相続等により取得した非上場株式を相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、譲渡した場合には、その相続等に係る相続税のうち、その譲渡した非上場株式に相当する部分を取得費に加算することもできます。
必要な手続き
譲渡対価の全額を譲渡所得の収入金額とする特例
その非上場株式を発行会社に譲渡する時までに「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を発行会社を経由して、発行会社の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出すること。
相続税の取得費加算
確定申告書を提出し、かつ、確定申告書に相続税の申告書の写しや取得費に加算される相続税の計算明細書などの一定の書類を添付すること。
突然の相続が起こってしまっても
オーナーに不慮の事故等が起こり、突然相続が発生してしまった場合、その時点での株価が相続財産として相続税の対象となるため、納税資金を準備していなければ、相続税を計算してみたらとても個人の財産では払えないような金額になってしまうこともあります。
そのような場合でも、これらの制度や遺産分割の方法を変えることで、対策できることもありますので、お早めにご相談頂ければと思います。また、相続が起こってから残された家族が困らないように、早めの承継対策を進めることが重要です。