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税務調査の対象になりやすい会社とその理由

記事作成日2018/08/31 最終更新日2018/09/04

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自社は税務調査の対象になりやすい会社なのか、考えたことはありませんか?

国税庁は、無計画に調査する会社を決めているわけではありません。

予算や人員を効果的かつ効率的に進めるようにしています。

つまり、きちんとした理由があって調査先を選定しているのです。

こちらでは、税務調査の対象になりやすい会社の選定方法から選ばれやすい理由までご説明します。

また、一体どの業種が選ばれやすいのか、赤字経営の会社でも選ばれてしまうのか、さまざまな観点からもみていきましょう。

■調査対象の会社はどうやって決めるのか

調査先の選定には、国税総合管理(KSK)システムが活用されています。

KSKシステムに法人データを入力すると、金融機関の情報や法務局の登記情報などが表示されて、そこから分析を行えます。

また、各会社から提出された申告書の異常値を見つけることで、調査先候補のピックアップが可能です。

たとえば、売上や利益に大きな変動のある会社、多額の特別利益・特別損失が発生した会社、同業他社と比べて経費が多い会社などが、異常値として扱われます。

KSKシステムだけに頼らず、人員を割いているのも特徴です。

税務署の調査官は日々アンテナを張り巡らせており、儲かっている業界、流行の業界、不況の業界などを把握しています。

調査すべき分野を絞りつつ、KSKシステムも活用することで、効率よく税務調査の対象となる会社を判断します。

■どういう法人が調査対象となりやすいのか、またその理由

ここでは、どういう法人が調査対象となりやすいのかを理由付きで詳しくみていきましょう。

◇事業の規模が大きい法人

事業の規模が大きくなれば、法人税以外にも消費税や源泉所得税といった調査事項も多くなります。

例として、以下のような法人が調査対象に選ばれやすいでしょう。

●売上や仕入れ、外注などが多い会社

●大幅な黒字になり、納税額が増えた会社

●海外取引の多い企業

●固定資産などの売却があり、売却損益が多額に計上されている企業

◇目立つ動きがあった法人

これから売上や事業規模に大きな変化がありそうな法人も、税務調査の選定先の候補となります。

●テレビで紹介された飲食店

●派手な宣伝をしている会社

●FXやアフィリエイト、仮想通貨などの流行商材を会社規模で運営している企業

◇申告内容が本当に正しいのか気になる法人

納税額が明らかに減ったり、仕入れや外注が急に少なくなったりしたときも、税務署からのチェックが入りやすいでしょう。

●何らかの理由により、納税額が減少した企業

●同業他社に比較して、多額の経費がある会社

●在庫が極端に減った販売店

●売上が急に落ちた会社

●原価率に変動が大きい法人

◇その他

特別な理由のほかに、よくありがちな調査理由も存在します。

●過去の税務調査で不正があった会社

●不正があった会社と取引をしていた企業

●新設の法人が2~3年で消えることなく、4期以降の事業を継続している

●長期的に未接触である法人

他の会社と比べて動きがあるからといって、必ずしも調査対象に選ばれるわけではありません。

とはいえ、良い意味でも悪い意味でも目立つ法人には、優先的に税務調査が入るのが現状です。

■調査対象になりやすい業種はあるのか

 平成29年11月に国税庁が発表した「法人税等の調査事績の概要」によると、法人税の不正発見割合の高い10業種は以下のとおりです。

●バー、クラブ

●外国料理

●大衆酒場、小料理

●廃棄物処理

●自動車修理

●土木工事・パチンコ・貨物自動車運送

●職別土木建築工事

●管工事

また、平成29年11月に発表された「不正1件あたりの不正所得金額の大きな業種」は、以下の10の業種となっております。

●水運

●民生用電気機械器具電球製造

●精密機械器具卸売

●パチンコ

●再生資源卸売

●木材、竹材卸売

●貿易

●その他の飲食料品卸売

●理化学機会器具等製造

●自動車/同付属品製造

現金商売の中でもギャンブルや水商売関係は、個人客に対する現金の売上がとても大きいといわれています。

さらにIT関係や運送業の場合、直接モノを売っているわけではありません。

申告が複雑な業種や、実態が把握しにくい業種ほど、高額な申告漏れに結びつきやすいのでしょう。

■赤字でも調査対象なのか

 赤字経営の会社でも、税務調査が入ります。

赤字といっても、経営不振によるものなのか、申告上で赤字となっているだけなのかが分かりません。

業績が悪化していて明らかに赤字である場合には、税務調査が入りにくいでしょう。

一方で、黒字経営なのに赤字のように見せかけている会社は、税務調査が入りやすいとされています。

また、たとえ決算書が赤字であっても、法人には消費税の納税義務が発生します。

つまり、消費税の税務調査に限って言えば、税務署は黒字と赤字の区別を行いません。

消費税以外にも、役員もしくは会社間の取引、源泉所得税の徴収、消費税の計算などは、赤字でも調査対象に含まれる項目です。

ほかにも、申告時に赤字であったが、その後の業績回復により税務調査が入るケースもあるので覚えておきましょう。

まとめ

平成29年3月に国税庁が発表した「税務行政の現状と課題」によると、法人を対象とした税務調査の実地調査割合は年間で約3.1 %とされています。

1年間で税務調査に入るのは100社のうち3社だけですが、業種によっては毎年のように税務署からのチェックが入っています。

しかし「自社はまず調査の対象にならないだろう」と安易に考えていると、ふとした時期に通知が入るかもしれません。

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