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税務調査とは?実施時期や流れ、必要書類や注意点について全解説

記事作成日2023/07/12 最終更新日2023/07/13

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税務調査という言葉を聞いたことはあっても、具体的になにをするのかはよくわからない、という方が多いのではないでしょうか。税務調査とは、申告・納税が正しく行なわれているかを調べるものです。

税務調査の対象となった際に慌てないよう、税務調査の流れや対応方法を事前に知っておきましょう。

この記事では、税務調査の概要と実施時期、調査の流れ、必要な書類や調査を受けるにあたっての注意点を解説します。

税務調査とは?

税務調査は、納税者から提出された申告内容にミスや不正がないか、詳細に確認することを目的に行なわれる調査です。調査は国税庁が管轄する税務署などが主体となって行なわれ、対象は法人だけでなく個人も含まれます。

税務調査の結果、事実と異なる申告が見つかれば、正しい税額を計算のうえ、納税額が不足している場合には追徴課税されることになります。

税務調査は国税通則法に基づいて行なわれ、調査官には納税者に質問をしたり、帳簿書類などを検査したり、帳簿書類の提示・提出を求める権限が与えられます。税務調査の対象になった場合は、調査官に協力して調査を適切に行なえるよう努めてください。

税務調査の種類

税務調査には、「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。それぞれの内容を見ていきましょう。

任意調査

任意調査とは、その名のとおり任意で行なわれる税務調査です。一般的に「税務調査」といえばこの任意調査のことを指します。

任意調査は事前に告知があったうえで実施されます。告知のあった日時に管轄の税務署の調査官が店舗や事務所などを訪問し、調査対象者に質問したり、書類を確認したりして不正や誤りがないかを調べます。

調査に応じるかは任意ですが、税務署には税法に基づく調査権限があり、正当な事由なく調査を拒否すると罰則の対象になるため注意が必要です。

一企業に対する任意調査は、通常4~5年に1度ほどの頻度で実施されます。不正を疑った調査ではないため、調査対象になったとしても心配する必要はありません。調査官の求める書類を提出し、質問に的確に答えていれば滞りなく終わるでしょう。

強制調査

強制調査は、税務署の上部組織である国税局の査察部が担当する調査です。強制調査は「査察調査」とも呼ばれており、裁判所の令状を得たうえで査察部(通称マルサ)が、事前連絡なしで実施します。

強制調査は脱税額が1億円を超え、悪質な隠蔽工作がなされた疑いがある場合に行なわれるもので、拒否することはできません。強制調査により脱税行為が確認された場合、検察庁に告発され、刑事事件として処理されます。

なお、令和3年度は36件の強制調査が行なわれ、そのうち21件が検察庁に告発されました。同年度の脱税総額(告発分)は24億円にのぼり、強制調査の対象となる事案の規模の大きさがうかがえます。

税務調査の内容|「準備調査」と「実地調査」について

税務調査は、「準備調査」と「実地調査」の2段階に分かれています。準備調査では、調査官が独自に収集した情報を申告内容と照らし合わせ、実地調査では、準備調査で得られた情報をもとに、さらに調査を実施します。

また、実地調査は調査の内容ごとに「一般調査」「現況調査」「特別調査」「反面調査」の4つに分かれています。それぞれの調査の内容は以下のとおりです。

一般調査

一般調査では、帳簿などから申告内容が正しいかを確認します。必要に応じて、倉庫や工場、店舗などの現場確認を行なう場合もあります。

現況調査

現況調査は、事前連絡なしの抜き打ち調査です。飲食業やサービス業といった現金商売の法人に、現況調査が入りやすいといわれています。ただし、現況調査は強制捜査ではないため、後日あらためて税理士立ち会いのもとで調査を実施するなど、日程の調整は可能です。

特別調査

特別調査は一般調査よりも、さらに詳しく長期間にわたって行なわれる調査です。大企業やグループ企業といった、事業規模の大きな法人が対象になりやすく、多額の不正所得が疑われる法人にも特別調査が入ります。

反面調査

反面調査は、調査対象の法人と付き合いのある銀行や取引先に対して行なわれる調査です。現況調査同様、事前の通知がないのが特徴で、調査対象に脱税の疑いがあれば、従業員の家族や退職者にまで調査範囲がおよぶこともあります。

税務調査はいつ実施される?

税務調査の時期や頻度に明確な決まりはありません。そのため、いつ調査が実施されてもおかしくありません。

ただし、「税務調査は秋に行なわれることが多い」と言われています。これは、3月決算の法人の調査を行なう場合、7月~年末に税務調査が実施される確率が高いためです。また、税務署の事務スケジュールを考慮すると、年度初めと確定申告シーズンに調査を実施するのは難しい、という事情もあるようです。

いずれにせよ、税務調査が秋に行なわれやすいというのはあくまで目安と考え、いつ調査が来ても問題ないようにしておいたほうがよいでしょう。

また、税務調査は実施時期だけでなく、実施頻度についても予想しづらいものです。毎年のように税務調査が入る法人がある一方で、何十年も税務調査が入らない法人もあり、頻度に差がある理由も明確にはわかりません。

近年、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、対面での税務調査の機会が減っています。ただし、感染症の流行が落ち着きつつあるなかで、税務調査の時期や頻度が大きく変化する可能性もあります。税務調査はいつ来るかわからない、ということを前提に心構えをしておくとよいでしょう。

税務調査のおもな流れ

税務調査(任意調査)のおもな流れは、以下のとおりです。

【ステップ1】税務署から事前通知を受ける

原則として税務調査前に、税務署から電話により口頭で連絡があります。調査の開始日時や開始場所、調査対象税目、調査対象期間などが伝えられるため、しっかりと確認しておきましょう。ただし、事前通知は義務ではないため、事前連絡がないケースもあります。

【ステップ2】調査実施日を決定する

調査実施日は、ある程度法人側の都合に合わせられます。立ち合いを依頼する顧問税理士がいれば、顧問税理士との日程調整も忘れずに行なうようにしましょう。

【ステップ3】必要書類をそろえる

税務調査前に、事前に税理士と打ち合わせのうえ、書類の不備や漏れがないか確認しておきましょう。また、調査当日に聞かれる質問を想定し、返答を準備しておけると理想的です。

【ステップ4】調査を受ける

税務調査官が店舗や事務所を訪問します。調査担当者の質問に正確に回答し、求められれば帳簿書類などを提示または提出しましょう。書類を提出した際には、預かり証を必ず受け取り、保管しておいてください。なお、税務調査は2日間にわたって実施されるのが一般的です。

【ステップ5】税務署の指摘があれば対処を検討する

税務調査にあたっては、指摘や質問をされたり、追加資料の提出を求められたりすることもあるため、税理士と相談して適切に対処します。

【ステップ6】調査結果の連絡を受ける

税務調査の結果は、「申告是認」「修正申告」「更正」の3パターンに分かれます。「申告是認」、つまり申告内容に誤りがないと判断されれば税務調査はそのまま終了となります。しかし、何らかの指摘が入った場合には、指摘を認めて「修正申告」するか、税務署側の「更正」に異議を申し立ててください(再調査の請求もしくは審査請求)。

税務調査に必要な書類

税務調査では税務に関する幅広い書類が調査対象となります。税務調査の実施が決まったら、速やかに必要書類を準備しておきましょう。税務署の指示に応じて、直近3年~5年の資料を準備してください。

調査に必要なおもな書類としては、以下のようなものが挙げられます。パソコンの会計ソフトなどで管理している書類は、印刷しておくとよいでしょう。

帳簿
仕訳帳
総勘定元帳
現金出納帳
売掛帳
買掛帳 など

帳簿作成に用いた書類
□ 納品書
□ 請求書
□ 領収書
□ 小切手控え
□ 預金通帳
□ 借用書 など

決算に関連する書類
□ 損益計算書
□ 貸借対照表
□ 棚卸表 など

人件費に関する書類
□ 源泉徴収簿
□ 社会保険関連の書類 など

そのほかの書類
□ 契約書
□ 見積書
□ 稟議書
□ 議事録 など

税務調査が入りやすい法人

税務調査の対象となる法人は、闇雲に選定されているわけではありません。税務調査は申告や納税に誤りがないかを確認するものであるため、「申告等に誤りがありそうかどうか」という観点で、調査対象が選ばれることになります。

一般的に、以下のような法人は税務調査が入りやすいとされています。

□ 過去に追徴課税を支払ったことがある法人
□ 売上が急激に伸びた法人
□ 売上の変動が大きい法人
□ 売上の伸び率の割に利益が少ない法人
□ 同業他社と比較して利益率が極端に低い法人
□ 少額の赤字または黒字が続いている法人
□ そのほか申告内容に不審な点がある法人

ただし、上記の項目に当てはまらない法人も、税務調査対象となる可能性はあります。常に正しい税務処理を心がけ、いつ調査が入っても良いようにしておきましょう。

税務調査の際に押さえておきたい注意点

誰しもが対象となり得る税務調査ですが、実際に税務調査の対象となった場合には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。そこで最後に、税務調査の際に注意すべきポイント6選を紹介します。

過度に恐れる必要はないことを知っておく

税務調査に対して、「怖い」「不安」といったネガティブなイメージを持っている方も多いかもしれませんが、不正を行なっていない限り、税務調査を過度に恐れる必要はありません。万が一申告に誤りがあっても、悪質でなければ罰せられることはなく、基本的には修正申告のみで調査は終了します。

したがって、日々の税務事務を適切に行なうことに注力しましょう。

顧問税理士と事前にしっかり打ち合わせをする

税務調査の実施が決まったら、必要書類や税務調査の流れ、指摘が入った場合の対処方法などを事前に顧問税理士に聞いておくと安心です。

調査当日も、専門的な質問については税理士に回答を任せて構いません。税務のプロである税理士を交えてリハーサルを実施できれば、対策は充分だといえるでしょう。

顧問税理士がおらず、税務調査が不安な場合には、税理士法人が提供する税務調査立会サービスなどを利用するのも一つの方法です。税理士、公認会計士などを多数擁する、TOMAコンサルタンツグループ株式会社のTOMA税理士法人では、税務調査立会サービスを提供しています。

経験豊富な税理士と、数名の国税局OB税理士が連携してサポートするため、調査前・調査当日はもちろん、調査後も安心です。また、模擬税務調査を行ない、会社の税務リスクの洗い出し、改善策を提示するため、未然に税務リスクを回避することが可能です。

TOMAの税務調査立会サービスについて詳しくは、下記ページに掲載していますのでぜひご覧ください。

適切な応接対応をする

税務調査官は仕事で訪れているため、食事の席を設けるなどの接待は不要です。過度な接待はかえって疑いをもたれる要因の一つになり得ます。

しかし、税務調査官に敵意をむき出しにし、調査に非協力的な態度をとるのも良くありません。税務調査をスムーズに、問題なく終わらせるためにも、丁寧で誠実な対応を心がけることが大切です。

質問には正直に答え、曖昧な返答やごまかしはしない

税務調査で受けた質問には、正直に答えることが重要です。その場でわからない場合には素直に「わからない」と回答し、調べてから後日回答する旨を伝えれば問題ありません。

曖昧な返答をしたり、事実をごまかすような返答をしたりすると、税務調査官に不要な不信感を与えかねません。質問には正確かつ誠実に回答するようにしましょう。

質問されたことにのみ簡潔に答える

税務調査では、質問されたことにのみ簡潔に答えることが大切です。余計な話をしたり、聞かれてもいないことを長々と語ったりすると、何らかの疑いをかけられる恐れがあります。

なにを聞かれているのかを正確に把握して、的確に答えるようにしてください。

留置きに備えて、業務に必要な書類はコピーしておく

調査官が納税者の承諾を得て税務調査に必要な書類を預かることを「留置き(とめおき)」と呼びます。

調査の際に留置きを求められれば、基本的に応じなければなりませんが、書類のなかには手元に置いておきたいものもあるでしょう。一時的であっても、手元からなくなると困る書類については、事前にコピーをとっておきましょう。

まとめ

税務調査は適切な申告・納税を推進するうえで欠かせないものです。税務調査の対象になったら、調査官に協力して適切に調査を行なえるよう努めましょう。

税務調査の際には、顧問税理士と事前に打ち合わせをしておくのがおすすめです。必要書類を確認したり想定される質問への回答を決めたりしておけば、調査当日も安心して対応できるでしょう。

担当の税理士がいない場合や、実績が豊富な税理士に立ち会いをしてほしい場合は、TOMA税理士法人の「税務調査立会サービス」がおすすめです。税務調査立会サービスを利用すれば、税務調査の準備から調査後の対応まで実績豊富な税理士から全面的なサポートを受けられます。

また、TOMA税理士法人では、自社の税務リスクを知りたい方向けに「オンライン税務リスク無料診断」も実施しています。質問に回答するだけで手軽に税務リスクを確認できるので、ぜひご利用ください。
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