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新型コロナウイルス感染症の影響による役員報酬の期中減額

記事作成日2020/05/28 最終更新日2021/04/23

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新型コロナウイルス感染症の影響により、外食業界を中心に役員報酬を減額する動きが相次いで見られます。

今回は、税務調査で指摘される項目の代表例とも言われる役員報酬に関して、期中に減額する際に注意すべき要件とその手続きに関してご紹介します。

期中に金額を変更する際の要件~期中の改定が認められる“特別の事情”~

役員報酬の金額を変更することを改定と言い、定時株主総会以後の期中に改定を行うには、以下2つの事由のうち少なくともいずれかに該当するやむを得ない事情が認識できることが条件です。昨今の新型コロナウイルス感染症の影響下においても同様の取り扱いとされています。

①業績悪化改定事由

“経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する事由”と定義されます。
実際に売上などの数値的指標が悪化していることはもちろん、今後の経営状況の
悪化が不可避であると客観的に判断できる場合も含まれます。

②臨時改定事由

“役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに
類するやむを得ない事情”と定義されます。
例として、期中における役員の就任・退任等や役員の入院等が挙げられます。

役員報酬の改定方法~原則と期中の改定~

本章では、役員報酬の代表例である定期同額給与と事前確定届出給与の2つに関して、原則的な改定方法と期中に改定を行う際の要件をご紹介します。

定期同額給与(役員報酬)

会計期間を通して毎月概ね同額を支給するものを指します。

原則として、「会計期間開始の日から3か月を経過する日」までに株主総会を通じてその年度の金額を改定する必要があります。

上述の“特別の事情”のうち少なくともいずれかに該当し、金額の変更を行わなければならないやむを得ない事情がある場合は、定時株主総会以後の期中に改定を行うことができます。

いずれの事由にせよ、内部手続きとして改めて株主総会を開催し(会社法第361条,第309条)、その議事録を作成する必要があります(会社法第318条)。

事前確定届出給与(役員賞与)

定期同額給与のほかに、「事前確定届出給与に関する届出書」をもって届け出た金額を、所定の日付に支給するものを指します。

原則として、株主総会で改定の決議をし、「株主総会の開催日から1か月を経過する日」または「その会計期間開始の日から4ヵ月を経過する日」のいずれか早い日までに届出書を提出する必要があります。

上述の“特別の事情”により金額の変更を行わなければならないやむを得ない事情がある場合には、既に届出をした内容を期中に改定することができます。

その際にも内部手続きとして、株主総会を開催し(会社法第361条,第309条)、その議事録を作成する必要があります(会社法第318条)。

それに加え、以下の期限までに「事前確定届出給与に関する変更届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。

・臨時改定事由;その事由が生じた日から1か月を経過する日
・業績悪化改定事由;減額に限り、直前に届け出た内容の変更に関する株主総会等
の決議をした日から1か月を経過する日
(直前の届出で定めた給与の支給日が1か月を経過する日前にある場合には、その支給日の前日)

新型コロナウイルス感染症の影響による減額の例

本章では、定期同額給与と事前確定届出給与に共通する例を、事由ごとにご紹介します。

業績悪化改定事由による例

5/15更新の国税庁FAQでは、「業績が悪化した場合」と「業績の悪化が見込まれる場合」の2つについて例示されています。

例1)「業績が悪化した場合」

イベント等のキャンセル等や休業要請等により、予定していた収入がなくなり、給与をはじめとした経費の支払いが困難な状況で、取引銀行や株主との関係からやむを得ず役員給与を減額しなければならない場合は、業績悪化改定事由に該当します。

経営状況が著しく悪化したことなど、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情が認められるためです。

例2)「業績の悪化が見込まれる場合」

例1)に比べ、売上などの数値的指標が著しく悪化していないにせよ、新型コロナウイルス感染症の影響で売上回復の見込みが立たないか、あるいは売上のさらなる減少が見込まれる場合も、業績悪化改定事由に該当します。

客観的に見て、役員給与の減額等の経営改善策を講じなければ財務状況が悪化する可能性が高く、経営状況の著しい悪化が不可避であると判断できるためです。

臨時改定事由による例

FAQでは取り上げられていませんが、「役員給与に関するQ&A」内で紹介されている臨時改定事由の例をご紹介します。

例3)「役員の入院等により職務の執行ができない場合」

役員に対して入院等の治療が必要となり、当初より予定されていた職務の執行が一部あるいは全部できないことも考えられます。このような場合は、役員の職務内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情があると認められるため、臨時改定事由による改定と認められます。

必須の内部手続き

予め決議していた役員報酬の金額を期中に減額する場合には、定期同額給与と事前確定届出給与のどちらにも共通して、
株主総会での決議(会社法第361条,第309条)
その議事録の作成(会社法第318条)
の2つの内部手続きが必須です。

その際に、役員報酬の額を減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できるようにしておく必要があります。

また、株主総会で役員報酬の総額のみを決議している場合は、取締役会の決議により役員報酬の減額を行うという事も可能になっています。

事前確定届出給与を期中に改定した場合は、上記に加えて変更届出を行う必要がある点にも注意しましょう。

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コロナ対策・役員報酬の改定を専門家に相談

今回は、期中に役員報酬を改定する際の要件と方法について簡単にご紹介しました。実際に
は業績悪化改定事由に該当するのか、あるいは臨時改定事由に該当するのかの判断や、法令
に則った体制づくりに悩まれる方も多いかと思われます。

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