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事業承継対策の必要性とは?引き継ぎの基本の流れとポイントについて紹介

記事作成日2017/02/24 最終更新日2023/09/26

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中小企業を経営するオーナーにとって、後継者を誰にするのかということは、重要な経営課題に位置づけられるでしょう。後継者に事業を円滑に引き継がなければ、せっかく築いた企業が継続困難になることもあり得るからです。

事業承継を行なう場合、あらかじめ「何を引き継ぐべきか」「何を準備すべきか」といった点を把握したうえで、入念な対策を講じる必要があります。事業承継の対策が不足していると、経営や人間関係にまつわるトラブルが発生しかねません。

この記事では、事業承継の概要を踏まえつつ、事業承継対策の必要性や基本の流れ、押さえるべきポイントについて解説します。事業承継を考えている方や事前対策について知りたい方は、ぜひご一読ください。

そもそも事業承継とは?

「事業承継」とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。事業承継では、後継者を決定し、経営ノウハウ、経営者としてのマインドを教育することはもちろん、自社株式や設備・不動産、事業を運転するための資金などを円滑に引き継ぎ、贈与税や相続税の対策をする必要があります。

さらに、企業が保有する資産には、目に見えないものも多く存在します。企業の根幹となる経営理念をはじめ、取引先の情報や人脈、製造業であれば技術やノウハウなども承継する必要があります。

事業承継のための事前対策の必要性

事業承継で引き継ぐものは、人・モノ・金・知的財産など多岐にわたります。企業活動を継続していくためにも、早めの対策が重要です。特に以下のような状況の会社は、早急に適切な事前対策を行なう必要があります。

・後継者が決まっていない会社
・複数の相続人がいる会社
・経営者の影響力が大きいワンマン経営の会社

日本を取り巻く経済環境は日々めまぐるしい勢いで変化を遂げています。事業を継続していくためには、その時代に合った経営の舵取りが必要になるのは言うまでもありません。

高齢化社会における日本では、年齢に関係なく元気に活躍しているオーナーが多くいます。しかし、取引先のお客様、従業員がいるからこそ、ビジネスが成り立っている部分も大いにあることを理解し、早めの対策をしましょう。

適切な事業承継対策をしないとどうなる?

 事業承継対策をしなかった場合、事業の継続自体が困難になるケースも考えられます。例えば、オーナーがご子息に経営権を譲ることで事業承継をしたとしましょう。しかし、経営の最終判断を行なうのがオーナーのままで、オーナーとご子息の経営方針が異なる場合などにはトラブルに発展しやすく、事業が回らなくなるリスクもあります。

さらに、経営が安定しないということは、資金繰りの要といえるメインバンクの信用を損なうことにつながります。事業の不安定化は、取引先の信頼関係にも影響をおよぼしますし、働いている従業員の不安をあおってしまうことでしょう。

また、年齢を重ねることによってオーナーの健康上のリスクが高くなることは避けられません。事業承継対策を何も行なわずに、オーナーに万が一のことがあった場合、適切な後継者をすぐに見つけ出すことは難しく、このケースも事業の継続自体が困難になることが考えられます。

事業承継の対策をきちんと行なっておくことで、上記のデメリットを回避できます。さらに、新しい経営者を迎えることで組織の若返りを図ることができ、事業発展のきっかけにもなり得るでしょう。

オーナーの築いてこられた事業を、後継者がいないという理由で途絶えさせてしまうのは、大変残念なことです。事業承継はまだ早いとお考えになるオーナーも多いですが、将来を見据えて、早めの対策を検討することが大切です。

事業承継対策の基本の流れ【3ステップ】

事業承継対策に取り組む場合、まずは基本の流れを押さえておくことが大切です。

  1. 会社の現状を適切に把握する
  2. 後継者を決定する
  3. 事業承継計画書を作成する

本章では、各ステップの概要について解説します。

【ステップ1】会社の現状を適切に把握する

事業承継に際して起こりうる課題を洗い出し、最も適任な後継者を選ぶためには、会社の現状をきちんと把握することが大切です。そのためには、以下のような項目について確認する必要があります。

・会社の資産と負債の総額
・キャッシュフロー
・後継者候補の有無
・自社株式の評価額
・現在の経営状況と今後のビジョン
・業界内における会社の競争力
・主だった取引先とその関係性
・法定相続人
・相続時に懸念される問題点
・経営者個人の資産状況と試算した相続税額

このような項目を押さえることにより、会社が置かれている状況はもちろん、事業承継前に解決すべき問題も見えてくるので、具体的な対策を講じやすくなります。例えば、大きな負債を抱えていたり、赤字経営が続いていたりする場合、後継者候補から承継を拒まれる可能性が高いため、事前に経営状況を改善することが求められるでしょう。

【ステップ2】後継者を決定する

後継者の選定方法としては、おもに以下の3パターンがあります。

親族内承継
オーナーの親族(子供・兄弟姉妹・配偶者・甥姪など)から後継者を選ぶ方法

親族外承継
親族以外の従業員・役員などから後継者を選ぶ方法

第三者への承継(M&Aなど)
自社に興味を持っている第三者に会社の株式を売却し、会社・事業を引き継いでもらう方法

どの選定方法も一長一短があり、自分や会社を取り巻く状況次第で最適解は変わってきます。3パターンのメリット・デメリットを表形式でまとめたので、こちらも併せてご確認ください。

後継者の選定方法

メリット

デメリット

親族内承継

・関係者の理解を得やすい
・後継者を決めておくことで育成に時間を費やせる
・株式を売買せずに承継できる

・親族間の関係性が悪化する可能性がある
・後継者の資質や能力が足りない場合、経営に悪影響が生じる

親族外承継

・事業内容や経営方針への理解度が高く、円滑に承継しやすい
・経営の一体性を保ちやすい

・経営者が債務を抱えている場合、承継を拒否されやすい
・後継者の買取資金・納税資金の負担が大きい

第三者への承継(M&Aなど)

・優秀な後継者候補を外部から幅広く探せる
・経営者は売却益を得られる

・魅力的な会社でないと、買い手が見つからない
・希望額で売却できないこともある

【ステップ3】事業承継計画書を作成する

自社の現状の把握および後継者の選定が終わったら、次は事業承継計画を作成します。これは長期的な経営計画をベースに、事業承継の具体的なスケジュールや対策を追加したものです。

事業承継には多大な時間と労力がかかるので、長期的な視点で取り組む必要があります。その過程でやるべき対策を漏れなく実行するためにも、綿密な事業承継計画を立てたいところです。事業承継計画書で承継の一連の流れを「見える化」すれば、後継者を含む関係者と時間軸を共有しながら、事業承継を進めることができます。

事業承継対策のポイント

日本の中小企業においては、経営者自らが自社株式の大半を保有していたり、自らの資産を事業の用に供していたりがよく見られます。このような経営者の事業承継対策を考える場合、「経営そのものの承継」と「自社株式・事業用資産の承継」に十分配慮することが大切です。

事業承継対策のポイント(1)経営そのものの承継

・経営ノウハウの承継

後継者は、経営者になるための知識や経験、人脈、リーダーシップなどのノウハウを習得することが必要です。具体的には、会社内部での教育として各部門の業務を経験させたり、他社での勤務を経験させたりします。また、役員等の責任ある地位に就けて権限を移譲し、重要な意思決定やリーダーシップを発揮する機会を与え、現経営者の経営ノウハウを承継していきます。

・経営理念の承継

事業承継の本質は、経営者の経営に対する想いや価値観といった経営理念の承継にあります。したがって、経営者が自社の経営理念を明確化し、「何のために経営をするのか」を繰り返し伝えることが重要です。

・内外の関係者への周知

会社のトップが急に交代すると、現場や取引先で大きな混乱が起こる可能性があります。離職者の増加や業績悪化といった大問題にもつながりかねないため、後継者が決まったら、速やかに企業内外の関係者へその旨を周知することが大切です。これにより、経営者の人脈や会社の強みをきちんと引き継げるだけではなく、人間関係のトラブルも未然に防げるでしょう。

なお、社外の関係者に対して事業承継を知らせる際には、後継者や承継日時について記載した挨拶状などを送付するようにしてください。

事業承継対策のポイント(2)自社株式・事業用資産の承継

・遺留分への配慮

経営者に子が複数いて、そのうちの一人を後継者とする場合などには、後継者でない子の遺留分を侵害することがないよう、自社株式や事業用資産以外の財産を、後継者でない子に相続させるなどの対策も必須です。

関連記事:事業承継で問題となる「遺留分」とは?遺留分に関する民法の特例の詳細や具体例も解説

・資金の確保

後継者でない子の遺留分に配慮すると、自社株式や事業用資産を後継者に集中的に承継できない場合があります。この場合、後継者あるいは会社が他の相続人から自社株式や事業用資産を買い取らなければならなくなります。また、経営者の保有する自社株式や事業用資産を後継者が1人で相続できたとしても、後継者には多額の相続税が課される可能性があるため、事業承継を円滑に進めるためには、十分な資金を確保しておくことが重要です。

まとめ

 事業承継は、単に経営者が交代するだけではなく、資産やノウハウも含めた会社そのものを引き継ぐ行為です。今後も安定した経営を実現するためには、円滑に引き継ぎを進めることはもちろん、事前対策に注力することも重要です。事業承継対策は大きく分けると「現状把握」「後継者選定」「事業承継計画作成」の3ステップですが、後継者選定はさらに方法が細分化されるため、自社に合った方法を見極めたいところです。

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