事業承継には様々な方法がありますが、その中でも親族以外に事業承継する場合に有効なのが「IPO(株式公開)」です。とはいえ、IPO(株式公開)がどういうものか、そもそも親族以外への事業承継はどういったものか、よく知ってから選びたいですよね。
今回は親族以外への事業承継やIPO(株式公開)について、詳しくご紹介していきます。
■事業承継には2種類ある
事業承継には、親族へ承継する「親族内承継」と、自社の役員や社員、外部の第三者へ承継する「親族外承継」の2種類があります。
ここではそれぞれの特徴についてご紹介します。
◇親族内承継
息子や配偶者、兄弟などの親族へ事業を承継する場合が「親族内承継」です。
かつては日本の中小企業のほとんどがこの親族内承継を行っていましたが、近年では親族に後継ぎがおらず、親族以外への承継を行う場合が増えています。
◇親族外承継(IPO/M&A)
自社の役員や社員、または外部の第三者へ事業を承継する場合が「親族外承継」です。
近年ではこの親族外承継を行う中小企業が増えてきています。
親族外承継には様々な方法がありますが、代表的なものとしては自社の売却・合併を行う「M&A」、株式を公開し自社株を売り出す(上場する)「IPO」などがあります。
いずれにせよ、会社の状況に合わせて方法を慎重に選んでいく必要があります。
■IPO(株式公開)とは株式を流通させ、上場すること
IPO(株式公開)とは「Initial Public Offering」の略で、自社株を市場に公開し、自由に売買ができる状態にする(上場する)ことです。
事業承継を行う際、非上場企業で自社株の評価額が高いと、評価は高いのに上場していないため自社株を売ることができず、評価額を下げての節税対策や後継者の資金繰りに苦労する場合があります。
そんな時に有効な方法がIPO(株式公開)なのです。
■IPO(株式公開)のメリットとデメリット
では、実際にIPO(株式公開)を行った場合のメリット・デメリットはどういったものなのでしょうか。
以下でご紹介していきます。
◇メリット
株式公開することにより自社株を市場で売買できるようになるため、自社株を売却して納税資金にあてることができます。売却した資金を役員退職金にあてるなど一時的に自社株の評価額を下げ、節税対策につなげることも可能です。
また、自社株をすべて保有したまま承継するより、株式公開による売却を利用して一部を扱いやすい現金の形にしてから承継を行う方が、納税や上場後にかかる経費の支払にもすぐ対応でき、スムーズな承継になるといえるでしょう。
他にも、株式公開をして上場企業となることで、知名度も上がり優秀な人材が集まるようになるため、より多くの優秀な候補者の中から後継者を選ぶことが可能になります。また、信頼性が高まるのでビジネスチャンスが増え事業も拡大しやすくなり、銀行からの融資なども受けやすくなります。
◇デメリット
株式公開(上場)を実現するには、証券取引所が定める様々な条件を満たす必要があります。そのためには相応の準備が必要であり、内部統制構築やIFRSにかかる作業、専門家への報酬など、その準備自体に各種経費が必要です。
また、株式公開後は有価証券報告書や決算書の提示・発表が必要となるため、当該部門のシステム構築や経費の用意も必要となります。
なお、株式公開するということは自社株の一部を複数の株主と共有することになるため、経営権が創業関係者以外にも分散されることとなります。中には株の買い占めによる「経営権の乗っ取り」をたくらむ株主も存在するため、後継者がそのようなケースに巻き込まれないよう対策が必要です。
■まとめ
IPO(株式公開)は、非上場企業で自社株の評価額が高い場合に有効な承継方法です。しかし、その準備は数年単位で行われ、内部統制構築やIFRSにかかる作業等、周到な準備と経費が必要となります。そのため、IPO(株式公開)による事業承継をお考えの場合は、税理士、会計士、弁護士等の専門家に早めに相談することが必要です。