第7回目の経理効率化サポート事例は「仕訳入力の自動化事例」です。今回のお客様は従業員200名を抱える食料品スーパーです。この企業では預金仕訳・POSレジなど、日々の売上を全て会計ソフトへ手入力で行っていました。
月の仕訳数は4,000件に上り、約50時間もの時間を投入していました。そのため、会計ソフトへの入力をどうにかして減らしたいが、何から手をつければ良いかわからないというご相談を頂きました。
今回はインターネットバンキングと会計ソフトの連携や、エクセルの関数構築などを駆使し、可能な限り仕訳の手入力を削除し効率化を図った事例をご紹介します。
なお、経理効率化の事例に関しては以下のブログでもご紹介しています。こちらも併せてご覧ください。
・コンサル事例 ①会計ソフト選定支援
・コンサル事例 ②仕入・経費 発生仕訳自動化支援
・コンサル事例 ③会計ソフトコンバート支援
・コンサル事例 ④システム連携に伴う経理実務指導支援
・コンサル事例 ⑤グループ会社の会計ソフト統合支援
・コンサル事例 ⑥顧問税理士の協力による経理改善支援事例
目次
ベテランが孤軍奮闘する経理現場は課題が山積
今回のお客様は、地方で複数のスーパーマーケットを展開している中小企業です。業務では、弥生会計を使用していましたが、連携などは一切行わず、複数の店舗の記帳を全て手入力で行っていました。記帳だけで1日1時間、それもベテランの経理が一人で全ての業務を行っており、その人以外は記帳方法を理解できていないという状態でした。
経理業務の属人化を解消することが急務であると感じた経営者から、相談を受けたのが今回の効率化支援のきっかけです。早速、話を伺うと以下の課題が浮き彫りになりました。
課題1:売掛金や買掛金、すべての会計情報が手入力
1ヶ月に約4,000行ほど発生する仕訳の入力を、すべて一人のベテラン社員が手入力で行っていました。かかる工数は月に50時間と多大で、入力を任せられるのがこのベテラン社員一人という状況でした。
入力後にはベテラン社員が一人でダブルチェックを行い、ヒューマンエラーの防止に努めていましたが、チェックできるのは預金等のズレがないことの確認まで。 仕訳自体の正誤に関しては保証できない状態での運用でした。
課題2:複雑な計算作業によって業務が属人化
勤続年数10年を超えるベテラン社員が、買掛金支払一覧を手計算で行い仕訳業務を行っていました。通常の入力作業であれば別の担当者に入力を引き継ぐことができるのですが、会計ソフトへ手入力する際に支払先毎に発生する消費税差額を実績に合わせるため、一部買掛金額を調整しなければなりませんでした。
例えば、ある仕入先からは明細ごとに消費税計算が行われた請求書が届くのですが、買掛金一覧表上では請求合計額に対して消費税計算が行われていたため、消費税に差額が発生してしまいます。この差額を請求書に記載された正しい金額に修正して入力するという作業が毎回発生していたのですが、これを行えるのがベテラン社員だけでした。
新しい経理を採用してもこの計算が複雑で仕事についていけず、すぐに辞めてしまう状態が続いており、属人化が一向に解消されませんでした。
課題3:会計ソフト(弥生会計)を使いこなせていない
この企業では会計ソフトに弥生会計を使用していたのですが、インターネットバンクとの連動といった便利機能を使用していませんでした。
課題4:「店舗別」、「コーナー別」の売上仕訳も手作業
毎日、店舗ごとの売上や売り場コーナーごとの売上仕訳作業を、すべて手作業でまとめていました。
仕訳の自動化により手入力が激減
今回の事例では、いかにして仕訳手入力をゼロにするかに重点を置いて、改善に取り組みました。各社のシステムの内容を熟知した上で、
「何をどう連携させれば全体最適となるか」
「どの項目をどのシステムに入れ込めば部分最適となるか」
これらの視点から改善策を導き出すことにしました。
改善1:預金通帳(インターネットバンキング)と会計ソフトを連動
まずは、弥生会計の機能を駆使することから始めました。預金入出金の仕訳を自動入力する仕組みを構築し手入力をなくしました。この改善により全体の手入力の約15パーセントがなくなり、年間198時間の工数削減につながりました。
改善2:複雑な計算の自動化により属人化を解消
これまで、ベテラン社員しか行うことができなかった消費税計算ですが、関数を組み込むことで自動化しました。取引先毎の発生額を買掛金一覧表に入力すれば、残高管理・インポート用仕訳までを自動で作成できる仕組みを構築、年間68時間の工数削減に成功しました。
この改善の成果は工数削減だけではありません。最も重要なのは属人化の解消です。これまでにベテラン社員しか対応できなかった業務も、金額を打ち込むだけで自動計算されるので、誰でも作業が可能になりました。
改善3:出力情報を自動計算する関数の構築により年間132時間の工数削減
毎日ベテラン社員が手作業で行っていた「店舗別」、「コーナー別」の売り上げ合計額も、自動計算する関数を構築しました。店舗とコーナーを複合させて「A店舗の惣菜コーナー」、「B店舗のタバココーナー」、「C店舗の惣菜コーナー」など、約50部門近くに分割して売上仕訳を自動計算できるようにしました。これにより年間132時間の工数削減に成功しただけでなく、売上状況がすぐにわかるようになったため、経営戦略も立てやすくなりました。
最終的に年間588時間の仕訳入力時間削減に成功
今回の経理効率化事例では、最終的に月間49時間、年間に直すと588時間の工数を削減することに成功しました。毎日の入力作業が無くなったベテラン社員の方は、現在では各種補助金の調査や経営資料作成などの業務に従事されています。今後は採用活動をすすめ、記帳のチェック業務を引き継いでいく予定とのことです。
今回の経理業務効率化にかかった期間は、ヒアリングに4ヶ月、買掛金一覧表の関数組み換えと運用方法レクチャーに2ヶ月、売り上げの金種別合計額を自動計算する関数作成と運用方法のレクチャーに2ヶ月、インターネットバンキング連動設定と運用方法レクチャーに2ヶ月、計10ヶ月のサポートとなりました。
さまざまなお客様の支援をしていると、今回のようにベテラン社員が孤軍奮闘し、会社の経理を支えている企業は少なくありません。支払一覧表・入金一覧表はクライアント毎にフォーマットがバラバラですが、大半の企業がExcelで管理をしており、関数による効率化が図れます。
Excelに自動計算の関数を組んでいても、そのデータを会計ソフトへの取り込みまで考えているケースはほとんどありません。結局、エクセルのデータを会計ソフトへ手入力しているのです。しかし、ほんのちょっとの工夫やシステムの変更で、手入力をゼロにしたり、属人化を解消することができます。
システムに高いお金を掛ければいいものが出来るのは当然ですが、TOMAでは“今ある資源でどこまで有効活用できるか”を追求し、最も費用対効果の高い仕組みの構築を目指します。
もちろん、時代の変化に合わせたシステムの導入は行うべきですが、TOMAは「既存の仕組み」と「新しい仕組み」をどうハイブリッドさせていくかに注力します。 今回のような属人化に悩む企業は、ぜひ一度後相談ください。
今回紹介した経理の効率化に関するサービスの詳細はこちらになります。また、TOMAでは定期的にIT・業務改善に関するメールマガジンを定期的に配信しております。こちらもぜひご登録ください。