第5回目の経理効率化サポート事例は「グループ会社の会計ソフト統合支援」です。こちらのお客様は従業員100名ほどの運送業を営んでいる企業です。 M&Aにより事業規模を拡大し、11社のグループ企業が一つとなったのですが、事業が拡大する一方で、各社で使用している会計ソフトや、経理の運用ルールがバラバラという課題を抱えていました。
近年、このような相談が増加傾向にあります。理由としては、M&A市場は近年非常に活況に満ちており、レコフ社の調査によると2022年の日本企業のM&A件数は4,300件を超え過去最多となるほどです。また、今後も経営者の高齢化によりM&Aなどは加速度的に進むと考えられており、そこで頻繁に課題となるのが、経理業務の統一化です。今回はM&Aによるグループ会社の会計ソフト統合、運用ルールの決定支援をご紹介します。
なお、経理効率化の事例に関しては以下のブログでもご紹介しています。こちらも併せてご覧ください。
・コンサル事例 ①会計ソフト選定支援
・コンサル事例 ②仕入・経費 発生仕訳自動化支援
・コンサル事例 ③会計ソフトコンバート支援
・コンサル事例 ④システム連携に伴う経理実務指導支援
目次
M&Aによる経理統合を後回しにした結果、課題は山積に…
M&Aとは、これまで全く異なる歴史を歩んできた2つの会社が一つになるわけですから、メリットだけでなく、さまざまな場面で課題が発生します。 M&Aでは、目的である売上向上や営業力の強化にどうしても目が行きがちです。 そのため、経理業務をはじめとするバックオフィス業務は後回しになりやすく、混沌とした状況での業務遂行が日常になることも少なくありません。
会計ソフトや経理の運用ルールが整っていないと
・決算月がバラバラ
・勘定科目が不統一
・同じ用途でも異なる科目がある
・異なる用途でも同じ科目を使用している…etc
さまざまな問題が発生します。
さらにお客様から詳しい話を聞くと、この企業の経理には以下の課題がありました。
課題1:連結決算を組むのに多大な時間がかかっている
この企業では、これまで決算を組む際には11社分のデータを1つずつ見ながらExcelで時間をかけて作成していたそうです。その業務時間は途方もなく、決算から申告までの期間は毎日終電近くまで残業し、土日も出勤するのが当たり前だったとのことです。
課題2:正しい経営分析ができない
経理の運用ルールがグループ会社でバラバラだと、「何に」「いくら使った」が正確に把握できません。 そのため、経営判断に支障をきたす可能性があります。
課題3:統一ルールを策定するリーダーがいない
この企業には統一ルールを作成するための管理者がいたのですが、他のグループ会社の社員と反りが合わず、プロジェクトをうまく推進できない状況に陥っていました。
課題4: 各社で使用している会計ソフトがバラバラ
11のグループ会社がそれぞれ、M&Aをする前に使っていた会計ソフトをそのまま利用していたため、科目体系や科目の用途が明確になっていませんでした。 運送業にとって必須のガソリン代も車両費で計上しているグループ会社もあれば、旅費交通費の会社もあったそうです。
経理の運用ルールの不統合は『M&Aあるある』
通常のM&Aでは、親会社の会計データに合わせて、子会社の情報を整備するのが一般的です。おおまかな計画はM&Aを実施する前に立て、細かなルールはM&A後のPMI(経営統合作業)で決めていきます。このお客様の会社はかなり複雑な状況に陥ってしまっていましたが、実は今回のようなケースは少なくありません。
同じ業種が統合する場合はまだ良いのですが、買収した企業が全く異なる事業の場合、親会社の経理がどう統合すれば良いのかわからずに、買収前のルールで運用してしまうといった事例もよく耳にします。せっかくM&Aを実施したのに経営に活かせないのは大変もったいないことです。経営層は、M&A実施の際には経理部門への配慮を怠らないことが大切です。
山積する課題を一つずつ、着実にTOMAが船頭となり効率化を実施
では、実際にどのように会計ソフトの統合支援を行ったのかを解説します。
効率化1:グループ全社で統一の勘定科目表・経理ルールを策定
まずは、グループ全社での統一勘定科目表と経理ルールを策定しました。中でも特に留意したのは以下の2点です。
・「原則」同じ用途については同じ科目を使う
・「売上原価」「一般管理費」「営業外損益」を用途に応じて明確にする
例えば、ダンボールの購入は運送業では一般管理費(経費)ですが、梱包業では売上原価になります。頻繁に購入する経費については一つひとつ科目を明確にしていきました。
しかしながら、グループ会社が11社もあるため、一筋縄ではいきません。全ての会社で一斉に変更すれば、通常業務に影響が出るほどの負荷になってしまいます。 そのため、段階的にコンバートを進める必要がありました。
一方で、時間的に余裕があるわけではありません。期中からコンバートをするということは、過去仕訳にも影響が出ます。そのため、過去仕訳に影響が出る会社は当期仕訳のコンバートも同時並行で行わなければならず、徹底したスケジュール管理が必要でした。スケジュール管理は我々TOMAが一手に担い、都度担当者へ指示を行いました。
効率化2:会計システムを統一
現行システムと移行後のシステムを徹底的に比較検討し、会計システムの統一を行いました。会計システムを選定する際には以下の点に留意しました。
① 多店舗展開している会社もあるため、複数拠点で同時ログインが可能な事
② 在宅や遠隔地でも同じデータで統合できるクラウド型ソフトを選定する事
③ 現在まで各経理担当が使用していたソフトの使用感を損なわないソフトを選定する事
①、②、③の条件を全てクリアし機能要件を満たした上で、最も安価なソフトを選定しました。
効率化3:決算月を統一
ヒアリングの際に、担当者からは「各会社の決算月がバラバラなので、毎月決算を組んでいるような感覚で経理担当者は疲弊している」という相談を受けていました。 そのため各会社の決算月を揃えることにも取り組みました。
効率化4:プロジェクト全体の進捗管理をTOMAが実施
グループ全体責任者、各社担当を決め「いつまでに」「誰が」「何をやるのか」を明確にしました。しかし、進捗管理は全員のスケジュール調整が難しく、持ち越しになる課題も少なくありませんでした。そのような状況が続くとプロジェクトが滞ってしまうため、TOMAが全体の進捗を管理することで着実にプロジェクトを前に進めました。
決算は月1回になり、経理業務の効率化に成功
今回の会計ソフト統合支援によって、これまで多大な時間をかけて行っていたグループ決算の時間が大幅に短縮することができました。科目体系が統一化されたことで、これまで11社分の会計ソフトと睨めっこをすることなく領域を指定するだけで合計数値を出すことができるようになりました。また、毎月のように行っていた決算業務が年1回になったため、工数は1/12に激減しました。
今回の経理効率化事例にかかった期間は
・ヒアリングに2ヶ月
・科目体系の調査に2ヶ月
・科目体系の統一調整に4ヶ月
・各社のコンバート順番決め等のスケジュール調整と実行支援に4ヶ月 ※上記を行いながら進捗管理は年間並行して実行
・コンバート後のアフターフォローに6ヶ月
約1年半をかけてのプロジェクトとなりましたが、お客様からは
・何に、どのくらいの費用がかかっているのかがようやくわかるようになった
・各社の月次決算を固めるまでのスケジュールが組めるようになり、経営計画が立てられるようになった
・グループ全社の会計ソフトが統一されたことで、経理担当者間の異動が可能になり、属人化が解消された
とのお言葉をいただきました。
今回のような効率化支援では、会計システムに関する深い知識と、多様な業種業態の経理に精通した対応力、そしてプロジェクトの指揮を取る指導力が求められます。 例えば、
税理士や会計士は、科目体系統一化は出来てもコンバートの支援はできません。また、SIer(システムインテグレーター)は、コンバートはできても、科目体系構築のアドバイスは不可能です。さらに、税理士や会計士とSIerが協働しても、不慣れな連携ではプロジェクトの進行管理は難しいでしょう。
TOMAはこれまでに数多くの業務改善コンサルを行ってきたからこそのサービスが可能です。
今回紹介した経理の効率化に関するサービスの詳細はこちらになります。 また、TOMAでは定期的にIT・業務改善に関するメールマガジンを定期的に配信しております。こちらもぜひご登録ください。