業務改善コンサルティングの中で、最も多くのご依頼をいただくのが経理業務の効率化です。「経理の無駄な作業を無くせないか…」と考えている経理責任者の方や「ウチの経理業務はうまく機能していないなぁ…」と悩む経営者の方は多いのではないでしょうか。
課題を解決すべく、RPAなどを用いて効率化を図ろうと思っても「何から手をつけたら良いかわからない…」と改革に躊躇してしまうケースも少なくありません。そこで、今回から全10回にわたり、TOMAがサポートした経理の効率化事例をご紹介していきたいと思います。
目次
会計ソフトは自社業務に最適なシステムを!
今回ご紹介するのは「会計ソフト選定支援」です。経理業務において会計ソフトは必須アイテムの一つです。また、会計ソフトは税務・会計に必要なだけにとどまらず、経営戦略を立てる上でも重要なツールです。そのため自社の業務にフィットしたものを選択することが何より大切ですが、実際には非効率なソフトを選択してしまっているケースがあります。
例えば、会計ソフト選定においては以下のような相談が多くあります。
・月次決算を作成するために、会計ソフトの情報をエクセルへ転記しなければならない。
・スタンドアロンな会計ソフトを使用しており、経理と営業が同時に操作できない。
・新規事業やサービスに着手したが、現行の会計ソフトに必要な機能が備わっていない
・大企業向けの充実したソフトを導入しているが、ほとんどの機能を使っていないため、コスパが悪い
今回は、ある公益財団法人様(職員数約100名)の事例を紹介したいと思います。
この法人様では以下の課題がありました。
課題①:紙を前提とした管理をやめ、ペーパーレス化を図りたいが、自社の現状を把握できていない。
課題②:経理業務もテレワークを導入したいが、会計ソフトがオンプレミス型で出社しなければ仕事にならない。
課題③:伝票を全て印刷し、証憑と共に回覧するため紙資料が多い。
担当者の方も「やりたいことはイメージできているけど、何から手をつければ良いかわからない」といった様子でした。
会計ソフトの選定はまず課題の『見える化』から!
では、具体的にどのような効率化の提案を行ったのかを解説したいと思います。
効率化①:経理業務フロー図、経理システム俯瞰図を作成し、現在の業務課題を可視化
自社業務の課題がわからない状態とのことだったので、ヒアリングを徹底し、課題の抽出から着手しました。課題はそれぞれ優先順位をつけてリスト化。重要な課題をクリアできない会計ソフトは初期の段階で候補から除外しました。
効率化②:現行システムの機能一覧表を作成し、移行対象のシステムと比較
今回の事例では、「10年先のビジネスシーンを見据え、柔軟に対応できるシステムを採用したい」という考えがお客様の根底にありました。現行使用している会計ソフトには、お客様の業務に合わせてシステムがカスタマイズされていたため、新しいシステムへデータをスムーズに移行できるかどうかが重要でした。
そこで現行の会計ソフトで使用している機能をピックアップし、候補となる会計ソフトのベンダと打ち合わせを実施。必要な機能がそろっているかを確認しました。また、これからの働き方の選択肢としてテレワークの導入を想定されていたので、在宅環境でも利用できることが必須条件でした。当然ですが、電子帳簿保存法をはじめとする法律への対応が万全であることにも留意しました。
効率化③:経費精算システムを導入し、証憑の確認や伝票の承認をデジタル化
会計ソフトに加え、経費精算システムを採用することで、これまで紙で出力していた資料がなくなり大幅なペーパーレス化に成功しました。お客様からは『新しいシステムに対応できるよう社員を育成し、業務標準化を図りたい。ただ、現状ある業務に支障が出ては困る』という要望があったため、現在進行形の業務に支障が出ないような業務フローの構築を心がけました。
会計ソフトの選定はプロに任せるのが◎
このブログを読んでいる方の中には「会計ソフトの選定くらいなら、自社でもできるのではないか」と考える方もいるかもしれません。もちろん無理ではありませんが、会計ソフトの選定をプロに任せるメリットはたくさんあります。
メリット①:スピーディな導入が可能
正確な経理業務フロー図、経理システム俯瞰図を作成し課題をピックアップすることは業務改善のはじめの一歩です。しかし、慣れていなければ多大な時間を要します。また、数ある会計ソフトから自社業務に最適なものを選択するのも大変です。専門家に任せれば、最短距離で無駄なく最善のシステムにたどり着くことができます。
メリット②:豊富な情報量
私たちは常にさまざまなベンダ(システム販売者)から最新の情報を仕入れています。幅広い選択肢の中からより良いシステムを選択することが可能です。自社でシステムの選定をする場合には、新しいシステムにはどんな機能があるかを調べることからはじめなければなりません。
メリット③:部署の垣根を超えた視点からの検討ができる
・会計ソフトを経理と営業が共有している。
・月次決算など経営層へのアウトプットが必要。
・グループ会社とのシステム連携が発生する。
このように会計ソフトを使うのが経理部署だけではない場合、経理責任者が他部署の状況を鑑みて、会計ソフトを選定することは簡単ではありません。部署の垣根を超えた改革をスムーズに行いたいときは専門家に相談するのが良いでしょう。
メリット④:他社の事例を参考にできる
Aという会計ソフトを導入した企業の成功事例
Bという会計ソフトを導入していた企業の失敗事例
など、各会計ソフトの長所・短所を把握し、多種多様な企業の事例を経験値として備えているのも専門家ならではのメリットです。過去の事例を参考に、お客様の事業に合う会計ソフトの提案が可能です。
会計ソフトの選定に迷ったら、TOMAにご相談ください!
今回の会計ソフト選定支援は、ヒアリングに3〜4ヶ月、システム選定に2ヶ月、導入に2ヶ月とコンサルの開始から約8ヶ月で運用まで辿り着くことができました。この法人様の会計ソフトは、経理だけでなく企画やシステムといった複数の部署が関わっているため、それぞれの部署の立場や考えを勘案し、1つの部署に寄りすぎないよう配慮しました。
最終的に、現場の担当者からも「経理が抱えていた課題が解決できた!」と喜びの声をいただいています。
今回紹介した経理の効率化に関するサービスの詳細はこちらになります。また、TOMAでは定期的にIT・業務改善に関するメールマガジンも配信しております。こちらもぜひご登録ください。登録はこちらから。
【今回の事例で作成した成果物一覧】
その①【業務一覧表・業務フロー図】
現行の会計システムで行っている業務を中心に、約70フローを作成。
→収益、支出、その他(給与、決算など)に分類して業務一覧表を可視化。
→手作業や紙で行っている業務などを視覚化し、主に課題の抽出に活用。
その②【会計システム機能一覧表】
現行の会計システムに搭載されているメニューを列挙し、利用しているもの、していないものを整理。
→会計システム移行候補のベンダに展開し、機能の充足状況を確認。
その③【会計システム比較表】
会計システムベンダに共通の質問を行い、結果を一覧として整理。
→項目ごとに重みづけし、必須となる機能が搭載されているかどうかを確認。
その④【システム俯瞰図】
システム移行後のシステム間の連携状況を視覚化。
→転記や紙を削減できる箇所を確認。
その⑤【課題一覧表】
上記の作成等を進める中で抽出した課題を整理。
次回、効率化事例その2は仕入・経費 発生し訳自動化支援についてご紹介しています。以下よりご覧ください。