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RPA「WinActor」導入による業務効率化を解説!TOMAのコンサル事例⑤〜インターネットFAXの自動送信とAI-OCRを使ったアプリへの自動登録〜

記事作成日2024/09/18

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今回のRPA導入事例は「インターネットFAXの自動送信とAI-OCRを使ったアプリへの自動登録」です。

一時期はビジネスの必須ツールだったFAXも、近年は利用する企業は減少傾向にありましたが、インターネットを介して安価かつ簡単に送受信できるようになったため再注目されています。

今回はRPAを用いたインターネットFAXの自動送信、そして、AI-OCRを用いた送信結果の自動保存の事例をご紹介します。

年間約5000件にも上るFAXを手作業で…

今回のお客様は飲食業界大手の子会社で、社員数は100名ほど、海外から原材料や製品の輸入を行っている会社です。

自社でデジタル化やペーパーレス化といった業務改善に積極的に取り組んでいました。そんな中、電子帳簿保存法の改正への対応や、新型コロナウイルス感染症の蔓延によるテレワークの実現に向けた環境を整えたいという要望がTOMAに届いたのがきっかけです。

このお客様の会社では、親会社から届く注文書に受領印を押し、FAXを送信していました。送信を行った担当者がエクセルに注文内容の詳細を記載するまでが一連の業務であり、1作業10分程度の時間がかかっていました。当時、月に約400件のFAX送信業務があり、月に70時間という膨大な時間を割かねばなりませんでした。

また、送信漏れやエクセルへの登録漏れなど、ヒューマンエラーも頻発していたそうです。この業務は会社でしかできない作業のため、テレワーク実現への足枷となっていました。

導入前の状況解説

RPA「WinActor」とAI-OCRの連携

上記の問題に対処するために今回は、RPAが指定フォルダに格納されている注文書のPDFをAI-OCRに読み込ませることにしました。

AI-OCRとは、画像データに記載された文字や数字の情報を読み取り、文字データに置き換えるシステムで、一般的なフォントで入力された文字であればほぼ100%の精度で認識することが可能です。

この機能を活用し、まず注文書に記載された「発行日」「納品先」「注文の品名」「納期」「数量」の情報を読み取り、インターネットFAX用のPDFを作成します。そして、読み取ったデータをクラウド上にある業務アプリへインポートし送信履歴として自動保存される仕組みにしました。

結果、担当者は注文書を指定のサーバーに格納するだけで良くなりました。

自動化の流れ

RPA、AI-OCR導入の注意点

では、導入が全てスムーズに行われたかというと、そんなことはありません。今回のRPA、AI-OCR導入では、以下の課題が発生しました。

どうしても読み込めない文字がある

AI-OCRの識字率は上がってはいるものの、まだ100%ではありません。今回の導入においても、特殊なフォントを使った商品名を読み込めないという事例が発生しました。

例えば、ローマ字のUをVと判読してしまうという感じです。こういったケースでは、商品名を読み込むのではなく商品コードを読み込ませます。商品コードと商品名をリンクさせたマスタを作成し、転記させることで問題をクリアしました。

識字に対する対応策の解説

システムのアップデートに弱い

RPA、AI-OCRは決まった環境で同じ作業を行うことは人間よりも優れていますが、人間のように機転を働かせることはできません。

例えば、使っているスマホやアプリがアップデートされて、画面のデザインが変わったり、アプリのロゴが変更されたりすることがありますがRPA、AI-OCRはこのような微細な変化でもエラーを起こすことがあります。その度に改修(=命令の書き換え)をしなければなりません。

対費用効果の見極めが必要

AI-OCRは比較的安価なシステムであっても、6000箇所の読み取りで月額5万円程度かかります。

1枚の注文書から3箇所の読み取りを行ったとしても、月に2000枚ほど読み込まないと5万円になりません。導入をする際には、毎月発生する読み込み書類が何枚あって、何ヶ所読み込む必要があるのかを確認することが大切です。

導入の注意点の画像

RPAの可能性を広げるAI-OCRの存在

単純作業の自動化に大きく役立つRPAですが、紙やPDFなどの画像データの文字情報を読み取ることができるAI-OCRと組み合わせることで、自動化できる業務の幅が格段に上がります。

今回は注文書の読み取りでしたが、経理の現場においては、請求書や出荷指示書、納品書に入金伝票などさまざまな文書に応用ができます。

今回の事例でも、最初はインターネットFAXの自動送信でしたが、RPAの有効性に気付いたことで、他の業務にも発展できないかというアイデアが各所から出るようになり、加速度的に業務が効率化していきました。

年間840時間の工数が削減し、リモートワークが実現!

今回の業務改善にかかった期間は、ヒアリングに1週間、システムの構築に7週間と約2ヶ月での導入となりました。RPAの導入により、以下のような結果が得られました。

840時間/年間の工数削減

1ヶ月70時間、年に840時間かけていた、FAX送信業務がなくなりました。FAX送信→送信履歴の登録という生産性の低い単純作業からの解放は、業務効率の改善に大きく寄与しました。

ヒューマンエラーの撲滅

RPAが自動で作業してくれるので、これまでに発生していたFAXの送信漏れや入力ミスがなくなりました。送信ミスがなくなったことで、親会社からの問い合わせに対応する時間が削減されました。RPAを導入したことで、ヒューマンエラーがなくなりクレームが激減したという企業は多いです。

クレームがなくなると、従業員のストレスがなくなり会社に対する満足度の向上にもつながります。

在宅勤務の実現

人間の作業は注文書を指定のサーバーに格納するだけなので、会社にいなくても可能になり、当初の目標であった在宅勤務が実現しました。

お客様曰く、一般的に困難といわれている経理部の在宅勤務が実現したことで、他社の経理部の方から羨ましいといわれることも多いそうです。コロナ禍が明けた現在も、お客様の会社では週の半分以上が在宅勤務となっています。

業務効率化の進展

導入から数年経った現在では、注文書の確認方法がFAX以外の方法に代替されるなど、今回の導入を発端に業務改善が進んでいます。もしRPAを導入していなかったら、今も年840時間をかけてFAXを人間が送信し、週5日会社に出社する業務体制が続いていたかもしれません。

自動化の波が他部署にも波及

このお客様の会社では現在、経理部の自動化をきっかけに、他の部署でもRPAとAI-OCRの導入が進みました。RPAを実際に導入すると「これも自動化できるのではないか」「あの業務にも応用できるのではないか」とさまざまなアイデアが社内で出るようになりました。

結果に関する解説画像

担当者様からは、「リモートワークの実現だけでなく業務そのものがなくなったことでかなり楽になった」という感想をいただきました。

RPAやAI-OCRは自社で作成できるのか?

最後にRPAやAI-OCRを会社の社員だけで内製することはできるのか考えてみます。市場に登場してから10年弱、デジタル化も進みIT人材が社内にいるのが当たり前になりつつありますが、結論から言うと答えは「難しい」でしょう。理由としてはRPAやAI-OCRのシナリオ構築はかなり複雑で専門的な知識や経験が必要だからです。

保守作業は可能でも、他の業務との兼任しながらシナリオをゼロから構築するのは時間もかかり、効率的ではありません。TOMAにも社内でペーパーレス化やデジタル化を推し進めているITリテラシーの高い会社からRPAのシナリオ作成だけはどうしてもできなかったので、プロに任せたい、という依頼が多く寄せられます。

※RPAのシナリオとは、RPAの動作を設定することです。

プロに任せた方がスムーズに導入ができるほか、お客様の企業に最適なシステムの選定も可能です。今回の事例のように、AI-OCRとの連携でより複雑な自動化をしたい場合はさらに難易度が上がります。ただし、自動化をした恩恵は大きいのも事実で、導入したお客様からは

・もうRPAのない業務は考えられない
・RPAの導入によって、生産性が向上した
・RPAをきっかけに、業務の効率化が加速した

という声をいただきました。

RPAの導入はプロにお任せ

今回紹介したRPA導入支援に関するコンサルティングサービスの詳細は以下に掲載しています。ぜひご覧ください。

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