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RPA「WinActor」導入による業務効率化を解説!TOMAのコンサル事例④〜AI-OCRを使った概況書の自動登録〜

記事作成日2024/02/05

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今回のRPA導入事例で紹介する内容は概況書登録の自動化です。

「概況書」とは、俗に言う法人事業概況説明書のことで、法人名、納税地、事業内容などが記載された書類で、確定申告の際に税務署に提出するものです。今回の依頼者の課題としては、この概況書の内容を概況書アプリに1件登録するのに30分もの時間を要していた点が挙げられます。RPAの導入により工程の90%を「RPA」と「AI-OCR」という光学文字認識機能を駆使して自動化を図りました。

この記事では年間700件にも及ぶ概況書アプリへの登録業務をどのようにして自動化したのかを解説したいと思います。

深刻化する人材不足に対し、中小企業が取り組むべき一手は?

コロナ禍が一旦の終息を迎えつつある一方で、ビジネスシーンではアフターコロナの新しい局面を迎えています。
例えば、訪日外国人の入国規制緩和による宿泊、小売、サービス業をはじめ、医療・福祉、教育、飲食、メーカーなど、幅広い業種において経済活動が本格化しています。その中で顕在化しているのが人材不足です。

2023(令和5)年4月に公表された「中小企業白書・小規模企業白書」においても、人材不足は大きなテーマとなっています。東京商工リサーチが2023年4月に公表した調査では、大企業の7割が人手不足を訴えているというデータもあります。比較的人が集まりやすい大企業ですら人材不足に苦しんでいるので、中小企業にとっては人手不足は大企業以上に深刻化していると言えるでしょう。

そんな中、人材不足への対応策として、採用以外に業務プロセスの見直しによる業務効率化やI T設備投資による生産性向上に注力する企業が増えています。その一つがRPAによる業務の自動化です。社員には、人間にしかできない生産性の高い業務を担ってもらい、単純作業などはRPAに任せることに本格的に乗り出す企業が増えています。

年間工数350時間にも及ぶ単純作業

生産性の少ない単純作業をRPAを用いて効率化を図る事例として今回ご紹介するのは、法人事業概況説明書登録の自動化です。この部署では決算情報を管理しているデータベースから必要な情報を取り出し、概況書アプリに登録する作業を手作業で行っていました。

概況書アプリへの登録にかかる時間は1件30分、クライアント数が700件あったため、年間の工数は約350時間に上っていました。早速ヒアリングを行うと、以下の課題が浮き彫りになりました。

会計ソフトから書き込み可能なファイルが出力できない

そもそも、なぜ1件の作業をこなすのに30分もかかっていたのかというと、会計ソフトから書込み可能なファイル形式の出力ができなかったからです。そのため、会計ソフトからPDFファイルを出力し、概況書アプリに手動で登録する必要がありました。

決算管理アプリから対象の決算月のクライアントを検索し、法人事業概況説明書の情報160項目を概況書アプリに1つ1つ転記する際に、ヒューマンエラーが発生していました。

登録したデータは社外に出すことはなく、社内で共有する情報として利用していたため、ミスが発生していてもダブルチェックなどはせずに、そのまま運用していたそうです。しかし、正確な情報ではないかもしれないという懸念が常について回る状態でした。

膨大な転記数に作業が追いつかない状態

1件の法人事業概況説明書を概況書アプリに登録する際、転記する項目は160もあるため、概況書アプリに登録する担当者にとって多大な負担となっていました。また、業務過多の担当者は概況書の作成が後回しになってしまい登録が追いついていないケースもあったそうです。

光学文字認識機能「AI-OCR」との併用で自動化が実現

今回の事例で最も課題だった点は会計ソフトから一旦PDFファイルを書き出し、その内容を手打ちで別のアプリへ記入しなければならない点でした。

RPAを用いて、会計システムから概況書のPDFデータを出力することはできますが、そのデータを自動でアプリに転記することはできません。しかし、AI-OCRを使用することでRPAにはできない自動化が可能になります。

AI-OCRとは

そもそもOCRとはOptical Character Recognitionの略で、PDFや JPEGといった画像データから文字を認識してデジタル化するシステムのことです。

近年のスマートフォンでは、撮影した写真に写っている文字情報をコピー&ペーストできるようにもなっているので、一般にも馴染みが出てきているかもしれません。AI-OCRはOCRの機能に人工知能=AIの学習能力をプラスして、文字の認識力を数段向上させたシステムのことで、最大の特徴は認識できる文字の幅の広さです。

印字された文字のフォントに際限がないのはもちろん、手書きの文字でも認識が可能です。
「ツ」や「シ」、「れ」と「わ」など、人によって癖が出やすい文字に対しても高い識字力を持っています。
AIの学習機能により、識字の精度は数をこなすほどに上がっていくのも特徴です。

今回の事例はPDFで出力されたデータの認識ですが、手書きの請求書や注文書なども自動転記させることができます。
例えば、注文書を毎日10数件処理するという企業は少なくないと思います。一つひとつ注文書を確認しながらシステムに手入力する作業をAI-OCRで読込んだあと、CSV出力し、RPAを用いてシステムに転記することも可能です。

RPA「WinActor」、AI-OCR導入により年間315時間の工数削減!

今回の事例はヒアリングに1週間、導入に3ヶ月かかりましたが、自動化の流れは以下になります。
(1)R P Aを起動、決算管理アプリから決算管理情報を抽出しCSVファイル①を作成。
(2)会計システムを起動し、CSVファイルのクライアントコードから会計システムの情報を抽出して法人事業概況説明書のPDFファイルを保存。
(3)PDFファイル情報を読み込みAI-OCRで識字、そのデータからCSVファイル②を作成し保存。
(4)概況書アプリにCSVファイル②の情報を自動取込。

結果、従来の作業の90%を自動化することに成功、年間315時間の工数を削減することができました。

また、運用を開始してから数ヶ月、AI-OCRの識字、RPAの転記ミスがないかのチェックを行っていますが、転記ミスはゼロという結果を出しています。さらに、2021年には700件だったクライアント数が、1年で800件まで増加、件数が増えても人的負担は大きくならないため、クライアント数が増えれば増えるほどRPA、AI-OCRの導入効果は増大します。

今回の事例を通し、RPAとAI-OCRを組み合わせることで、多種多様な業務の自動化が可能であること、それにより生まれる通常業務への好循環を再認識することができました。

・この業務は自動化ができるのだろうか
・自社で自動化できる業務はないだろうか

とお考えの方はぜひ一度TOMAにご相談ください。

今回紹介したRPAによる効率化に関するサービスの詳細はこちらになります。また、TOMAではIT・業務改善に関するメールマガジンを定期的に配信しております。こちらもぜひご登録ください。

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