RPAの導入を積極的に考える企業が年々増加傾向にあります。経済産業省の調査報告書によると、中小企業がDXとして導入したいツール類は、という質問において、RPA 等を用いた業務自動化は30.9パーセントという結果が出ており、約3分の1の企業がRPAを導入することに前向きです。
RPAの導入に前向きになる企業がある一方、導入に踏み出せない理由はよくわからないからではないでしょうか。そのため、このブログでは、RPA導入における良かった話、うまく行った話だけではなく、導入までにはどんな課題があり、それをどう乗り越えたのか、などRPAを導入、安定的な運用に至るまでの過程をご紹介します。ご覧頂き”よくわからない”部分が一つでも解消されれば幸いです。
月次更新の自動化による実行漏れの防止
今回は、月次更新の自動化による実行漏れの防止とクライアントへの提出書類の自動化の2つの事例をご紹介します。どちらの事例も同じ会社様からの依頼です。RPAの導入により業務を効率化させる目的の中でも、今回重視されたのはヒューマンエラーの撲滅です。では、一つひとつの事例を見ていきたいと思います。
まずは月次更新の自動化による実行漏れの防止です。依頼元の会社様では毎月26日の朝に月次更新処理を行っていました。通常は担当者がクラウドシステムを起動し、月次更新処理を行います。作業時間がかかるものではありませんが、実行漏れが度々発生していたそうです。
26日が土曜日や日曜日、祝日と休日であったり、当日に担当者が休暇を取っていたりと漏れが発生する要因の多くは担当者が不在の時に発生していました。
月次更新処理が実行されないと、先月分のデータが確定にならず業務に支障をきたします。そこで、月次更新処理を自動化できないかとご相談頂きました。
今回の業務効率化に使用したRPAはNTTデータの「WinActor」です。WinActorはEdgeやOffice製品(Excel、Word、Outlook等)をはじめ、Windows端末から操作可能なあらゆるソフトに対応しているRPAであるため、クラウド上のシステムを自動化することもできます。
具体的には毎月26日の午前4時にRPAが自動で起動し、クラウドシステムにアクセス、月次更新処理を実行してくれます。そのため、人間が出勤する時間にはすでに月次更新が完了している状態になりました。
RPAの導入により、毎月30分ほどかけて人間が行なっていた作業がゼロになり、年間で6時間の工数削減につながりました。ただ、今回のRPAの恩恵は、実は業務時間よりも更新漏れの撲滅にあり、タスクスケジューラを使用することで26日が土日でも、あるいは担当者が仮に有給を取っていても確実に月次更新を遂行できるようになりました。
今回の導入にかかった期間はヒアリングに1週間、導入に1週間と、わずか2週間です。この時間で運用が可能です。工数がかかる単純作業でなくとも絶対に忘れてはいけない業務、対応漏れが大きな支障をもたらす業務に関してRPAは大変頼りになる存在です。
クライアントへの提出書類の自動化
もうひとつのRPA導入事例はクライアントへの提出書類の自動化です。クライアントから依頼があった際にはクラウド上のシステムから社員の情報を抽出しWordに転記・納品するサービスを行なっていました。
システムから抽出する情報には氏名や生年月日などの個人情報に加え、起算日から何日後、何ヶ月後などの日付計算情報も含まれます。この計算作業でミスが発生することがありました。
ミスが起きることは決して多くはないのですが、クライアントに納品するもののため、絶対にミスはできません。作成したWordファイルを第3者がチェックし、転記ミスがあれば修正後にもう一度チェックするという作業を行なっていました。お客様の「生産性の低い業務は極力減らし、生産性の高い業務に時間を割きたい」という要望から今回の導入となりました。
RPAの導入で作業の8割が自動化
では、通常人間が作業をする場合はどのような作業工程なのかを説明します。
内容としてはシステムの起動後、システムから必要な情報をコピーし、ワードファイルへペーストするだけなので作業自体は複雑ではありません。1件の作業にかかる時間は30分程度です。また、この業務は毎月行われるものではなく、クライアントから依頼があれば提出するというものでした。
この作業を賄うため、まずクライアントの社員番号を入力する画面を表示させ、続けて社員番号を入力するとクラウドシステムからクライアントへの提出書類を自動で作成してくれるRPAを作成しました。
RPAの導入後、人間の作業はRPAの起動と社員番号の入力、この2点のみになり作業工程の約8割を自動化することに成功しました。ヒューマンエラーの元となっていた日付計算もWordの設定内容など考慮しながら、自動計算後に転記されるようにしました。
RPAは以上の例のように、誰がやっても同じ成果が出せる業務に向いています。人間の経験値や勘を要する業務でなければ、ほぼ全ての業務が自動化可能です。一般的に人間の経験値や勘を要する感覚型と呼ばれる仕事は、全業務の2〜3割程度と言われています。そのため、企業内における7割程度の業務をRPAで代替できるとお考えください。
今回のRPA導入により、転記ミスなくクライアントにWordファイルを納品できるだけでなく、従業員の作業コストを削減することに成功しました。導入までにかかった期間は、ヒアリングに1ヶ月、RPAのシナリオ作成・導入までに1ヶ月と計2ヶ月ほどで運用をスタートさせることができました。
お客様からは「RPAが導入されたことで業務が楽になった」「ミスが減って安心した」と言った声をいただきました。今回の事例以外にも複数の画面、システム、ファイルから必要な情報だけをピックアップし、資料を作成するといった複雑な工程も自動化可能です。
TOMAのRPAコンサルティングサービスが他社より優れている点は業務効率化という観点から総合的なサポートが可能な点です。RPAは1社1社の環境や状況に合わせて細かく調整することが不可欠ですが、世の中には「RPAのシステム構築には優れていても業務改善は提案できない」「業務改善の提案はできてもシステムには弱い」というサービスも多いので注意が必要です。
今回紹介したRPAによる効率化に関するサービスの詳細はこちらになります。ご興味がありましたらぜひご覧ください。また、TOMAではIT・業務改善に関するメールマガジンを定期的に配信しております。こちらもぜひご登録ください。