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AIはすでにDX推進のマストツール?〜機械学習と深層学習の最前線を解説〜

記事作成日2024/09/18

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前回まではクラウドやデータドリブン経営など、DXのための基本となるシステムや手法について解説しました。第4回目となる今回はAI(人工知能)です。

AIというワードを聞くと、少し手の届かない憧れのツールと感じるかもしれません。しかし、すでにAIは私たちの生活に身近に存在しています。今後、中小企業のDX推進においても大きな役割を果たすことになるAIについて解説します。

なお、前回までのブログは以下になります。本ブログと併せてお読みください。

・【2024年版】今、DXを推進する意味とは何か?〜デジタルトランスフォーメーション入門〜
・DXを加速させるデータドリブン経営とは?〜導入のメリット、活用事例をわかりやすく解説〜
・DXの基本技術クラウドコンピューティングとは?〜メリット・デメリット、活用事例をわかりやすく解説〜

AI(人工知能)とは

近年、ChatGPTをはじめとする生成AIが登場したことにより、急速にAIの認知・活用が進んでいますが、実はAI(人工知能)は日進月歩で開発が進んでいるため、これがAIと一言で定義することができません。

さらに研究者によっても定義が異なります。そのためAIについては難しく考えず、現時点では言葉の理解や絵を描くなど、人間と同じようなふるまいをすることができるシステムといった理解ができていれば問題ないでしょう

現在は第3次AIブーム

ざっくりとした理解でも問題ありませんが、AIの進化の歴史について少し触れておきます。AIの誕生は今から約70年前、1950年代にアメリカの科学者ジョン・マッカーシーが知的な機械を人工知能と命名しました。そして1960年代に自然言語処理プログラム「イライザ」が登場した頃、第1次AIブームを迎えます。

その後、AIブームは一旦下火になりますが、1980年代、「エキスパートシステム」が開発されたことで第2次AIブームが到来しました。「エキスパートシステム」とは、専門知識を持たない人も専門家と同レベルの問題解決が可能になるAIです。

なお、2000年代~現在に至るまで、機械学習の技術が飛躍的に進化した現在は第3次AIブームといわれています。

ちなみに、機械学習とは、コンピューターに大量のデータを学習させ、分析をさせる技術です。近年では、深層学習(ディープラーニング)という機械学習の技術の一つにも注目されています。コンピューター自身が膨大なデータを読み解き、特徴を発見する技術です。

例えば、猫をコンピューターが見分けられるようにすることを考えてみましょう。「二つのとがった耳がある」「ひげがある」などの特徴をコンピューターに覚えさせていったとしても、他の動物との違いを明確に分けることは難しいと思います。

また、種類や個体によっても同じ特徴が当てはまるとは限らないでしょう。しかし、ディープラーニングを活用することで、様々な猫の画像からコンピューター自身が猫の特徴を抽出し、猫かどうかを判別することが可能となります。

特に、近年は技術の向上が目覚ましく、より複雑な処理が可能となってきています。これまではシステムが学習した内容に対してしか答えを出すことができませんでしたが、あいまいな問いにも答えられるようになってきているのが特徴です。

シンギュラリティは目前に迫っている

シンギュラリティとは、AIが人間の知能を超える技術的特異点のことを指します。ビジネスシーンにおいて、シンギュラリティの到来は雇用のあり方に影響します。経営層は社員にどう働いてもらうかを検討しなければなりません。

なお「シンギュラリティが起こってから対応しよう」と思う人もいるかもしれませんが、それはお勧めできません。なぜなら、シンギュラリティが実現する前段階には、「プレ・シンギュラリティ」という社会的変革が起こり、貨幣や労働がなくなるとも言われているからです。

神戸大学名誉教授の松田卓也氏は、主宰しているシンギュラリティを語る会の設立趣旨にてプレ・シンギュラリティが2030年頃に起こるのではないかと語っています。現在のAIがどの程度の進化なのかを常に観測しながら、AIが自社の業務に対してどのように活用できるか、活用できないのかを把握していかなければなりません。

うまく活用できれば、業務効率化や顧客体験の向上を実現でき、DX推進の大きな武器となるはずです。

AIでできること

では、AIが得意とする業務にはどんなものがあるのでしょうか。現在、AIはさまざまな分野で活用されていますが、その一部をご紹介します。

自然言語処理

自然言語処理とは、人間が日常的に使っている言葉をコンピューターで処理する技術のことです。言語は地域によって差異があったり、口語表現が時代によって変わったりするため、まだ人間と同等レベルにまでは達していません。

例えば、若者の間ではLINEで「了解」のことを「り」だけで表現したりしますが、人間はLINEに「り」と返信があれば了解のことだと理解できます。しかしながら、AIは理解できません。「私はあなたの言うことが理解できました」と、主語述語がしっかりとした文章にする必要があります。

ただし、事前に予測可能な質問など限定的な内容であれば、チャットボットでの対応が可能となっています。また、上記の内容をクリアすることが出来れば、語学に精通した社員がいなくても海外とのやりとりが期待できたり、顧客からの問い合わせ、予約などの省人化を図ることが可能です。

画像認識

AIによる画像認識はかなり高精度で人間を凌駕するレベルとも言われています。例えば、製造業における不良品の確認や、来店したお客の属性分析などに利用されています。防犯カメラの低画質な画像を高解像度の画像に修正し、犯人の特定を行うといったことも可能です。近年では、空港の出入国管理における、顔認証システムの導入も進んでいます。

音声認識

AIの音声認識も人間を超える性能を持っています。人間が発した言葉を即座にテキストデータ化し、その内容を要約することが可能です。そこで、近年では会議の議事録にAIを導入する企業が増えています。また、コールセンターの初期対応にもAIは有効です。

通話者が選択肢に沿って回答することで問い合わせ内容を切り分けることにも使用されています。

以上のように、これまで人間が行なっていた業務が少しずつAIで代替できるようになってきています。人間を超える性能を持ち、疲れを知らず24時間働けるAIをビジネスに応用することで、省力化、高度化、新規事業の立案といったDXに活用することが可能です。

人間がどんな働き方をするのかを、真剣に考える時期に差し掛かっているといえるでしょう。

A Iができること

AIが苦手なこと・できないこと

では、AIが現状苦手とされていること、できないことはあるのでしょうか。

学習データを超えた対応

AIは学習したデータからアウトプットを行うため、学習データを超えた対応には不向きです。

チャットボットではイレギュラーな質問には答えられないため、そのような場合は有人オペレーターによる対応も必要となります。また、生成AIに学習データを超えた質問をした時に、実は間違った回答だったとしても正確であるかのように回答する場合があるため注意が必要です。

クリエイティブな作業

音楽や芸術といったクリエイティブな作業もAIはまだ人間には至っていません。
AIには「何かをしたい」という欲求がないため、真っ白なキャンパスや原稿用紙をゼロから埋めることができないのです。しかし、「晴れた日に、サバンナの荒野で、ライオンがシマウマを狩る場面」といった一定の情報を与えた上でイラストを生成することは可能になっています。

感情の理解

AIは人の感情を正確に把握することができません。人間は相手の感情を言葉の内容だけでなく、表情や声の調子によって判断しています。AIはまだそこまで高度な感情の機微を読み取ることができないのです。

ビジネスにおいて、取引相手を思いやる気持ちや、寄り添う姿勢を見せることは重要です。そのため、ホスピタリティの必要な業務はまだまだ人間の領域といえるでしょう。

A Iができないこと

以上の業務はAIには難しいとされています。しかし、これはあくまで『現状では』という条件がつきます。いつAIが人の感情を理解し、人を超えるクリエイティブ性を備えるかはわかりません。

AIを活用したDX推進

では、次に実際にどのようなシーンでAIが使われているのか、いくつかDX推進に活用された事例をご紹介します。

画像解析技術を活用した異常検知

自動車部品の製造業を営んでいる会社では、これまで電気回路用の端子板の欠陥をベテラン社員が目視で行なっていました。数ミリ程度で発生する細かな欠損を何箇所もチェックしなければならないため、かなりの熟練度を要する業務です。
ベテラン社員が病気などで欠勤すれば、生産ラインがストップするリスクもありますし、退職すれば新しい社員の育成が必要になります。

その現状を変えるため、AIにより画像を解析し、異常を検知するソフトウェアを導入しました。AIの画像認識能力は人間を凌駕するレベルのため、正確なチェック可能です。導入後、チェック時間が3分の1に削減されました。将来的には、ベテランの社員が不在でも部品の欠陥チェックをすることができるようになるでしょう。

A I事例

需要予測やシフト管理

全国に展開するスーパーマーケットチェーンでは、客数予測を行い、人時計画を自動で生成するAI「ワークスケジュール自動作成機能」を実装しました。導入によって社員の時間が8分の1に短縮されただけでなく、弁当や惣菜の製造時間を限定することで、人材や食材のロスを減らすことも可能です。

人間が計画を編集できる余地を残すことで、地域イベントなどイレギュラーな状況にも対応可能なので、計画精度をさらに高められます。今後は店舗の人時計画だけでなく、生産者から店舗へとつながるサプライチェーンの最適化にも役立てることができるかもしれません。

顧客調査や新商品のアイデア創出

最後は生成AI「ChatGPT」を使用した事例です。企業のDX支援や自動車のサブスクリプションサービスを展開する企業では、消費者の行動をテーマとした調査リリースを発信しています。

調査リリースで時間がかかるのが、ターゲットが変えている課題や調査テーマの立案、アンケートの質問項目といった調査設計でした。これまで2時間ほどかけていた調査設計を「ChatGPT」を活用することにより20~30分まで短縮することに成功しました。

これにより、月に10本というハイペースでの調査リリースを実現しています。

あるクラフトビール専門店では、新しいフレーバーのアイデアを「ChatGPT」から得て新商品を開発しました。その道を極めた職人は技術が高まる一方で、柔軟な発想力が乏しくなりがちになります。既成概念にとらわれない遊び心のあるアイデアがいくつも出るのは、生成AIの特長といえるかもしれません。

TOMAによるAI活用支援

以上、AIができることや活用例などをご紹介しました。

革新的な技術が目の前にあるならば、それをうまく経営やDXに活用したいと思うのは必然であり、TOMAでは、AI利用を促進するためのマニュアルやガイドラインの作成を行っています。

お客様の会社にある業務を可視化し、AIを活用できるポイントを提案いたしますので、自社のどのような業務でAIが使えるか知りたいときは、ぜひTOMAにご相談ください。