多くの企業が働き方改革を推進する中、自然な流れとして業務改善の重要性も高まっています。業務改善において、ぜひ検討したいのはITの導入です。
とはいえ、業務改善がなぜ必要であるのか、また、なぜITを導入するとよいのかを理解していない人も多いのではないでしょうか。この記事では、ITを用いた業務改善のメリットや便利なITツール、さらに、業務改善を成功に導くための手順を紹介します。
目次
業務改善とは?業務改革との違い
業務改善とは、現場の一部門や一業務において、生産性の向上や時間短縮などを目的に行われるものです。毎日の業務の中で、時間のかかる業務や無駄な業務をひとつひとつ改善していきます。業務改善と似た言葉に、業務改革があります。
業務改革とは、会社全体が活動をするそもそもの目的、ビジネスの目的そのものを見直し、それにともなって組織の構造を根本から見直すことです。企業が行う改革の中では最も広範囲なもので、企業全体を対象として取り組む必要があります。
業務改革に対し業務改善は、そこまで大掛かりに実施するものではありません。一部署からや一業務からなど、現場にいる人員を中心にして始めることができます。
会社の中で部分的に実施することができるので、業務改革のはじめの一歩ととらえることも可能です。そのため、生産性向上のために、業務改革よりも、まず業務改善に取り組む経営者は多くいます。
業務改善にITを活用するメリット
ITは、業務改善には欠かすことはできません。とはいえ、ITの導入が業務改善のゴールではないのです。問題になっている業務を、ITを活用することで、いかに効率化できるかが重要です。
そのためには、ITを導入するとどのようなことが可能になるのかを理解しておく必要があります。ここでは、業務改善にITを活用するメリットを説明します。
質・量ともに向上を目指せる
業務改善には、業務の質を高めるための改善と量を増やすための改善の、2つの側面があります。この2つは、どちらか一方を改善するためにもう一方を犠牲にするというわけにはいきません。ITを活用すると、質と量の両方において改善を見込むことができます。
人間が業務を行った場合、業務の量を増やすと質が落ちてしまうことがあります。特に単純作業は正確さが求められることの多い業務です。しかし、量を増やそうとすると長時間の作業になるか、高速での作業になってしまいます。すると、集中力が低下し、ミスを起こす可能性が高くなってしまうのです。その結果、業務の質が落ちてしまいます。
逆に、業務の質を上げようとすると、時間あたりの量が減ってしまいます。量を保ったまま質を上げるには、業務時間を増やすしかありません。問題は、人の業務時間は無限に増やすことができないという点です。むしろ、働き方改革の流れの中では、業務時間は減らすべきものでしょう。
そうなると、業務時間を増やすには、人員を増やすしかなくなります。ところが、人員を増やすと熟練度に差が生まれてしまい、結局は業務の質にばらつきが出てしまうのです。
しかし、ITを導入すると業務が効率化されます。業務の質を保ったまま、業務量を増やすことが可能になるのです。さらに、単純作業をITが行うことで、人間はより高度な業務に時間を使えるようになります。結果として、他の業務でも改善を期待できるのです。
働き方改革が実現できる
ITを導入すると結果として、政府が推し進める働き方改革につなげることができるのも、大きなメリットです。ITを活用して業務を効率化すると、無駄な作業を削除できます。これまでかかっていた作業時間を大幅に短縮できる場合もあれば、作業そのものを無くしてしまえる可能性もあるのです。
そこで浮いた時間を他の業務に回すのもよいでしょう。社員の健康やワークライフバランスを考えて、残業時間を削除するという選択肢もあります。残業時間を減らして退社時間を早くすることで、働き方改革の実現に近づけるのです。
ITを導入してネットワークに接続することで、自宅での作業や出先での作業も可能になります。いわゆる、テレワークの実現です。テレワークの実現によって通勤時間を削減することができたり、仕事と子育ての両立ができたりすることが期待できます。これも、働き方改革のひとつです。
社員の満足度アップにつながる
業務改善には、社員の満足度を高める効果もあります。なぜなら、業務改善によって無駄な業務が効率化できれば、働き方改革が実現するからです。社員の満足度が上がると、離職率が下がり、また、入社希望者が増えることで人材が確保できるようになります。
さらに、従業員に「仕事をやらされている」という意識がなくなるので、生産性が向上するでしょう。業務改善によって会社の利益が増えれば、福利厚生を充実させることも可能です。その結果、さらに社員の満足度が上がるという好循環が生まれます。
業務改善にともなうITツールの導入によって、例えば、営業活動の記録を残して活用するといったことも、時間をかけずに行えるようになります。営業の記録を活用して対策を立てるのは、社員にとって大きなスキルアップです。営業成績も上がり、モチベーションの向上も見込めます。
業務改善に役立つ4つのITツール
ここでは、業務改善につながるITツールを4つ紹介します。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というソフトウェアを使用すると、デスクワークで行われる定型業務を自動化することができます。一定のルールに基づいて手順をパターン化することができる業務なら、どのような業務であってもRPAを使って自動化することができるのです。
例えばシステム入力のような、何度も同じ単純作業を繰り返し、しかも作業量の多い業務は、どこの会社でもいくつかはあるのではないでしょうか。RPAは、部署や業務の種類にかかわらず導入することができます。RPAの導入によって、業務の処理量を増やして、同時にミスを減らすことも可能になるのです。
クラウドストレージサービス
クラウドストレージサービスとは、クラウド上に資料や書類を保管できるサービスのことです。契約書や注文書、見積書や議事録など、会社で保管する書類は、毎日増えていきます。
どの書類を保管してどの書類を廃棄するのか判断をするのにも労力を使いますし、ファイリングするのも大変な作業です。さらに、いざ必要になったときに目的の書類をさがし出すのにも時間と労力がかかってしまいます。
書類を紙ではなく、データの状態でパソコンに保管している会社もあるでしょう。そうすれば、書類を検索する作業は楽になります。しかし、容量の限界はいずれ訪れるのです。また、パソコンに保存しているとセキュリティの面でも問題が生じやすくなります。
クラウド上に書類を保管すれば、検索機能で即座に必要な書類が取り出せるだけではなく、データ容量を気にすることなく資料の保管を続けることが可能です。また、セキュリティの面でもパソコンにデータを保管するよりもはるかに安心です。
クラウド型グループウェア
グループウェアとは、スケジュールやタスク、アドレス帳やファイルなどを共有し、メッセージや掲示板などでコミュニケーションを活性化するためのソフトウェアです。グループウェアには、オンプレミス型とクラウド型があります。
自社で環境を構築し、オフラインで使えるようにしたものがオンプレミス型です。オンプレミス型のグループウェアでは、外回りの営業社員やテレワークを行っている社員はアクセスすることができません。そこで、グループウェアの機能をクラウド上で行えるようにしたものがクラウド型グループウェアなのです。
クラウド型グループウェアは、自宅や外出先からもアクセスすることができます。そのため、会社にいない時間が長い社員ともコミュニケーションを容易に取ることができ、手軽に情報を共有することも可能なのです。また、オンプレミス型に比べてコストが少なくて済み、セキュリティの面でも安全性が高いなどのメリットがあります。
ビジネスチャット
ビジネスチャットを使用するメリットは、社内でのコミュニケーションにおける非効率の解消です。例えば、メールでは、本文の前に宛先や件名、時候の挨拶などを入力するのがマナーであると一般的に認識されています。
ところが、チャットでは、いきなり要件から入ってもよいのです。そのため、コミュニケーションにかかる時間を大幅に減らせます。また、手軽に利用できるため、社内でのコミュニケーションが活発になることも期待できます。
さらに、グループチャット機能を使うと、関係者全員に一度で情報を共有でき、無駄な伝言を省くことも可能です。ビジネスチャットのサービスのなかには、タスク管理などの機能が搭載されているものもあります。
サイボウズ社が提供する業務改善システム「kintone」
kintoneとは、自社の業務に合った管理アプリをマウス操作だけで作れるプラットフォームです。管理アプリを作るといっても、難しい作業は必要ありません。最初から用意されているアプリを利用することもできますし、自社の業務に合わせて、簡単に業務アプリを作成することもできるのです。
kintoneを使うと、自社でオリジナルのシステムを開発するよりも費用を抑えることができます。管理システムを導入するのに費用がかけられない場合や、自社の業務に合うシステムがなかなか見つけられないでいる場合におすすめです。
TOMAコンサルタンツグループでも、kintoneを導入しています。kintoneを使用すると、案件管理や日報、勤怠など多種多様な業務を一元管理することが可能です。そのため、業務の見える化や効率化につながります。
業務改善システムとしてkintoneの導入をお考えの方はぜひお気軽にご相談ください。詳細はこちらから。
ITを活用した業務改善を成功に導く5ステップ
ITツールは便利なものですが、ただ導入するだけで業務改善ができるわけではありません。ここでは、業務改善を成功に導く5つの手順を紹介します。
目的・目標の設定
業務改善の最初のステップは、目的と目標を明確にすることです。これがないと、関係者がそれぞれ自分勝手な業務改善に取り組みだす可能性があります。業務改善に関わる全員が、目的と目標について共通認識を持ったうえでプロジェクトを進めていかなくてはなりません。
ポイントは、目的や目標を具体的な数値で定めておくことです。「誰が」「何を」「いつまでに」といったことから、「どの範囲まで」「どのような方法で」「予算はいくらで」などといったことまで定めておきます。
現状把握
業務改善の目的と目標を定めたら、次に、対象の範囲内において現状の業務がどのように行われているのかを把握する必要があります。現状把握のためには、業務プロセス図を作成するのがよいでしょう。現状の業務を視覚化して、関係者間で共有することができます。
なかでも、業務プロセス図の世界標準規格であるBPMN(ビジネスプロセスモデリング表記)などの分析ツールを活用すると、効果的です。ツールを使用しての分析ができたら、実際に現場で業務を行っている社員にヒアリングをし、より正確な現状把握に努めます。
問題点の洗い出し
現状が把握できたら、問題点を洗い出します。把握した問題点を掘り下げ、その問題の原因は何なのか、より根本的な原因を突き止めるようにするのです。このときに、1つの問題に対して「なぜ」を繰り返す「なぜなぜ分析」を行うと効果的に原因を探ることができます。
なぜなぜ分析では、1つの問題に対して5回ほど「なぜ」を繰り返せば問題の原因にたどり着くことができるとされています。問題の原因は、問題が発生している業務そのものではなく、関連する業務にある可能性もあるので注意が必要です。
改善計画立案
問題点とその根本原因を洗い出すことができれば、いよいよ改善計画を立案します。問題点が複数ある場合は、解決の優先度を意識しながら計画を立てるのがポイントです。優先順位として最初に行うとよいのは、無駄な業務の排除や廃止です。これは、止めればよいだけなのですぐに実施することができます。次に、行うのは業務の標準化です。
業務ルールが明確に定義されていない業務に対して、明確に定義します。業務の変換や代替が必要な問題に手を付けるのは、最後です。このような問題の業務改善は大掛かりになりがちだからです。改善案が決まったら、目標を達成するための評価指数(KPI)を定めます。
改善の実施・評価
改善計画とKPIが定まったら、計画を実行に移します。いざ計画を実行に移すと、不測の事態やトラブルが起こって業務改善が進まないこともあります。そういうときこそ、冷静に対処することが大切です。KPIを見ながら細かい評価を行い、必要に応じて計画の改善に取り組む必要があります。
ITでの業務改善は効果的!セミナーへ参加して知識を深めよう
業務改善にITを活用すると、生産性の向上や社員の満足度向上が期待できます。とはいえ、ITツールをただ導入するだけで業務改善が成功するわけではありません。
TOMAコンサルタンツグループでは、ITを活用した業務改善の知識を専門家から学べるセミナーを実施しています。また、業務改善の無料相談も行っているので、気軽に問い合わせましょう。
TOMAでは業務改善のコンサルティングサービスを提供しています。貴社の業務効率化に向けて、業務改善プロジェクトを立ち上げ、TOMAのコンサルタントが第三者の立場から貴社の業務内容・業務フローを客観的に診断して、業務改善策をご提案させていただきます。業務改善コンサルティングサービスはこちらよりご覧ください。