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経理が劇的に変わる!プロが教える業務改善お悩み相談室
第2回「RPAを使った自動化は簡単に出来るの?」
業務改善の専門家が、企業の悩みに全力で答える相談室『RPA編』。前回は「RPAでできること」について解説をしました。今回、第2回目のテーマは「RPAを自社で導入する難易度」です。
お客様からは「専門知識がないと無理なんでしょ」、「プログラミングに精通している人材がいないから諦めている」と言った声をよく耳にします。”RPAの導入=ハードルが高い”という先入観を持っている経営層が多いようですが、果たしてそれは本当なのでしょうか?今回はRPAの自動化の難易度について解説したいと思います。
RPAは簡単という謳い文句はウソ!?
みなさん、こんにちは。TOMA ITコンサル部、副部長の田中です。この記事では業務改善、RPA導入サポートについてお客様からよく聞かれる質問にお答えします。
前回はホワイトカラーの業務に特化した自動化ツールであるRPAでどんなことができるのかについて解説しました。PCで行う単純作業の多くを代行できるRPAは、人手不足に悩む中小企業の救世主となる存在だということがお分かりいただけたと思います。前回の記事はこちら。
第2回目となる今回のテーマは導入の難易度、つまり「RPAを使った自動化は誰でもできるのか?」です。せっかく導入するシステムも使いこなせなければ意味がありません。この質問は、お客さまの相談に乗り、RPAの利便性について理解が深まってくると必ず聞かれます。
RPAと一口に言っても、NTT研究所が展開している純国産RPA「WinActor」をはじめ、世界的に広く導入される「UiPath」など、たくさんのRPAツールが販売されています。また、各企業が展開しているRPAにはそれぞれ特徴があります。初めてRPAを導入する企業にとっては、どのシステムにするかを選ぶだけでも一苦労といえるでしょう。
例えば、「プログラミング知識不要」という謳い文句のRPAを選択しても、日本語に対応していないというケースは少なくありません。「生兵法は大怪我の基」ということわざがあるように、中途半端な知識でRPAツールを選択することは避けるべきです。RPAの選択は慎重かつ、的確に行わなければなりません。
前段が長くなってしまいましたが、今回のテーマ「RPAを使った自動化は誰でもできるのか?」と聞かれたら、私は「できない」と答えます。なぜなら、RPAの選択だけをとっても扱ったことが無い方には困難であり、RPAに仕事を覚えさせることも、「簡単ではない」からです!私は、RPAの導入は必ず専門家のサポートを受けるべきだと考えています。
RPAと人間では仕事の覚え方が全く違う!
では、どんな点が難しいのかをもう少し具体的に解説したいと思います。まず、どれだけ「簡単」と謳っているシステムであっても、やはり利用するツールの知識がある程度必要である場合がほとんどです。そのため、社内にシステムに精通した人材がいない場合、単独でのRPA導入は難しいといえます。
次に、RPAの中には『ノンプログラミングでも自動化できる』というツールもありますが、プログラミングの知識は必要なくても、PCの操作を熟知していることが必須です。
「どのくらい熟知している必要があるか?」ですが、一つの基準を示したいと思います。
RPAで自動化したい事務作業を、“マウスを使用せずにキーボードだけ”で全て行える人材がいるかを、社内で探してみてください。
例えば、文章の一部をコピーして貼り付ける作業をマウスなしで行えるかどうか。Windowsの場合、コピーする文章の選択はshift+矢印、コピーはCtrl+C、貼り付けはCtrl+Vです。
経理をはじめ、日々繰り返す作業で使用するファイルの起動から、保存までをマウスを使用せずに行える人材が社内にいるならRPAのシステムを独自で組めるかもしれません。最低でも、ショートカットキーを15個程度知っていて、使いこなしているかが私の中で「この人なら作れるかも」と思える一つの基準です。
なぜ、これが基準になるかというと、RPAに作業を覚えさせるには一つひとつの業務をPCが理解できる言語で教えなければならないからです。
【人が人に教える場合】
・この文章コピーしてこっちに貼り付けて
・この範囲選択してコピーして
・そこの画面にあの数字入力して
※「あれ」「これ」「それ」といった曖昧な表現でも画面を目で見ていれば理解できる
【人がRPAに覚えさせる場合】
・〇文字目から〇文字目までを「Shift+→」を押下して選択
・「〇〇メニュー 〇〇タブ」の画面をコピーして、〇〇の項目を「Alt+PRTSC」でコピー
・〇〇画面で「TAB」を〇回押下して〇〇項目を選択
※〇の中には文字列か数字が入る
記載したように、人が人に教えるときは「あれ・これ・それ」といった定性的表現で伝わるのに対し、RPAに覚えさせる時は明確な文字か数字の入力など、定量的表現で教える必要があります。
RPAで業務を自動化させるためには、RPAが理解できる言語で仕事を教えることが大切です。経理をはじめとするさまざまな現場では、すでに関数が組み込まれたアプリケーションに、決まった数字や文言を正確に打つことに長けた人材は多いですが、自分で関数を作成できる人やシステムの構築に精通している人は少ないのではないでしょうか。
これが、私がお客様から「RPAで簡単に自動化できるか?」と聞かれたら「簡単ではありません」と答える理由の一つです。
曖昧なままRPAの導入を進めた結果、失敗する例も
RPAに関する問い合わせ中には、すでに導入した企業からの相談もあります。「導入してみたけど上手くいっていない」という企業の場合、RPAを勢いで導入してしまったケースがほとんどです。ここでは、RPAの導入が失敗してしまった事例とその要因をご紹介します。
失敗事例(1) 無理な自動化で業務効率が低下
・事例
この会社では、月次の社内報告資料を自動作成するシナリオの作成を試みました。RPAを用いてエクセルをデータ編集し、さらにそこからデータを抽出、パワーポイントに転記してプレゼン資料までを作ろうとしたようです。
・結果
自動化のシナリオが複雑になりエラーが頻発。エラーを取り除くと別の場所でエラーが発生するという悪循環に陥ってしまいました。
失敗要因①:費用対効果を検討できていない
開発にどのくらいの時間がかかるか、自動化によって何時間削減できるかを天秤にかけ、開発に時間がかかりそうな場合はあえて自動化しないという決断も必要です。どれだけ人的ミスが発生しやすい単純作業であっても月に1度しか発生しない業務や、毎日発生しても10分程度で終わる業務はRPAを導入してもあまり効果を得られません。
カットできたコストと、RPAのコストを比較し、導入費用を何ヶ月で回収できるのか。
導入前に費用対効果を十分に検討しないと失敗につながります。
失敗要因②:一度に全てを自動化するのはNG
自動化シナリオは複雑になる程、不安定になります。一度に全てを自動化するのではなく、費用対効果を鑑みて業務を細分化し、自動化する業務の優先順位をつけることが大切です。
失敗事例(2)コスト重視でとにかく安いRPAツールを導入した
事例
RPAツールの中には月額1万円以下で利用できるものもあります。この会社ではとにかく価格重視で安いRPAを導入したそうです。
結果
ブラウザやOfficeソフトでしか使えないという制限があり、自動化できる業務がないという状況に陥ってしまいました。また、一定ランクのRPAツールは一度開発したシナリオを活用して、新しいシナリオを作ることができます。しかし、購入した安いRPAツールは再利用できないシステムだったようで、似たようなシナリオを何度も作ることになってしまったそうです。
失敗要因③:導入の目的が不明瞭
「DX施策の一つとして何か始めなきゃ」
「知り合いの会社が上手くいってるらしい」
「導入はしたいけどコストはかけたくない」など、
以上のような明確な目的を設定せずに導入に踏み切るのは絶対に避けるべきです。
・自社のどの業務を自動化したいのか
・それによってどれだけの効率化を望むのか
・自動化によって浮いた人件費をどう活用するのか
まずはこれらを明確に設定する事が大切です。とくに、経理業務への導入を考えている場合は、自社で利用している経理システムで作動するかといった確認は必須です。
失敗要因④:RPAに関する知識の不足
設定した目的を達成するためにはどんなRPAを導入すればいいのか。そもそもどんな作業の自動化が可能なのかを理解する必要があります。RPAが得意とする業務について知りたい方は当ブログの第1回をご覧ください。不測の事態に陥ったときにどんなサポートがあるのかを抑えていくことも大切です。どれだけカスタマイズができるシステムなのかも調べておくと良いでしょう。
しかし、数あるRPAの中から自社に合うシステムの選定、自動化の手段を知る方法は個人で調べることは簡単ではありませんし、とにかく時間がかかります。ITに詳しくない、速やかな導入を望んでいる場合には、専門家に相談するのが得策です。
失敗事例(3)現状の業務をそのまま自動化してしまった
事例
この企業では、RPAを使い、勤怠データから給与計算システムへの自動入力を試みたそうです。現状の勤怠データをそのまま活用すれば、スムーズに自動化できると考えていたようです。
結果
システム構築後にエラーが多発。RPAのシナリオ改修が毎日のように発生してしまいました。エラーの原因は従業員ごとに勤怠データのレイアウトが異なっていたからでした。いくら改修をしても新しい社員が入るたびにエラーが発生し、RPA担当の社員はその都度出勤して改修しなければならなかったそうです。ちなみに、RPA担当は在宅勤務でしたが、エラーが発生する度に出社することになり、通常業務にも影響が出ていたようです。
失敗要因⑤:RPAに合わせて業務フローの見直しを怠った
現状をそのまま自動化してしまったり、勢いで導入してしまった企業に起こりやすいケースです。RPAを導入する際には、RPAがスムーズに起動できるよう、これまでの業務フローやデータを整理する必要があります。
例えば、4月は30日まで5月は31日まであります。人間ならその違いは理解できますが、RPAはなぜ月によって日数が違うのか理解できません(エラー発生!)。そのため、 RPA用のエクセルシートは全ての月に、31日まで行を作る必要があります。
この他にも、一部の部署のことだけを考えてRPAを導入した場合も失敗することが多いです。
RPAの導入で、他部署との連携が困難になったり、親会社の基幹システムとは連携できず、結局手作業でNO入力が発生したり、いまいち効率化ができていないという相談も受けます。運用前に業務フローを徹底的に精査し、RPAを最大限活用することが大切です。
失敗要因⑥:メンテナンス・保守費用に関する準備不足
RPAは運用中にエラーが発生する可能性があります。今回の事例のように、明らかな失敗要因がない場合でも発生することがあるため、月に数時間の保守費用(時間)を計上しておくことが必要です。
例えば、社内の業務フロー全体が変更になった場合は、それに合わせてRPAの改修も必要になります。最後に、メンテナンスができる人材が社内に1人しかいないという場合も注意が必要です。その人材が休職や退職をした場合、誰も対応できなくなってしまうからです。そのため、RPAを導入する際には複数のメンバーでフォローできる体制を整えておきましょう。
RPAはシステム構築がゴールではありません。導入後にどんな会社になって欲しいかといった理想像を明確に描けるか、そのための準備にどれだけ時間をかけられるかが成功の秘訣です。
RPAの効果的な導入は、業務改善からサポートするTOMAにお任せください!
以上、RPAの構築は簡単ではなく、綿密な計画のもとで導入しなければならないことがお分かりいただけたと思います。
内容をまとめると
・RPAのシステム構築(自動化)は簡単ではない
・数あるRPAシステムの中から自社に合うものを選ぶだけでも大変
・自社で独自にRPAを導入するには高度なPCスキルを持つ人材が必須
・導入は費用対効果を検証した上での実施が大切
これらは社長のトップダウンや、担当者(個人)レベルでなんとかしようと思ってもなかなか上手くいきません。また、RPAの導入は会社全体の業務フローの見直しが必要となるケースが多いため、その道のプロに相談した方が導入はスムーズです。
・現場にPC操作に精通している人材がいない
・まずは何から手をつけたら良いかわからない
こんな悩みを持つ経営者様や経理ご担当者様は、ぜひ私、田中宛にご相談ください。私はこれまで100社以上、さまざまな業種・企業のシステム導入を手掛けてまいりました。
TOMAのRPA支援サポートが他社と異なるのは、システムの構築サービスだけでなく、業務改善という観点からRPAの導入を提案することです。
RPAを導入する際に、いろいろな業務を自動化したい、まずは小さな業務から自動化して様子を見たい、など様々なお考えがあると思いますが、実は自動化したい業務と自動化した方が良い業務は異なります(この点については第4回で詳しく解説する予定です)。
TOMAのサポートはどんな業務を自動化したほうがあなたの会社にとって最善か、費用対効果がどうかといった観点から提案致します。そのため、初めてRPAを導入しようと考えている企業にはピッタリです。また、すでにRPAを導入しているけど何かうまく機能していないように感じるので一度診断して欲しいといった相談でもかまいません。
ぜひ一度、私田中までご連絡ください!あなたの会社のお力になれるよう、親身に全力で対応させていただきます。初回相談は無料です。
次回の記事「【比較表有り】RPAの費用相場、費用対効果は?業務改善のプロがRPAの導入コストから運用費までわかりやすく解説!」ではRPAにかかる費用についてお伝えいたします。